機会のはなし
イギリスのコメディグループ、モンティ・パイソンには、「ライフ・オブ・ブライアン」という、問題作がある。まあ、その内容はともかくとして、この映画の最後で歌われる曲がなかなかの名曲である。タイトルを、
Always look on the bright side of life
という。
▼ 要するに、いつも物事の明るい面を見よう、というわけである。
■ 特許出願をして、審査を請求すると、まあ十中八九は「拒絶理由」という通知を受けることになる。このままでは特許にできません、という意味の通知である。
これはこれで
実に不愉快
と思われるわけであるが(そりゃそうだ。それなりのお金を出して出願してるのに、ダメ出しされてるわけだから)、明るい面がないわけでもない。
■ というのも、拒絶理由の通知がないまま、特許査定がされてしまうと、内容を補充訂正(略して補正という)する機会が得られない(実際には分割出願という手がないではないが、その場合、新規出願のようなコストがかかる―少なくとも特許庁の費用については---)。拒絶理由通知があれば、内容を見直して補正する機会が得られるというわけだ。
■ この拒絶理由通知は、何回も出されるというものでもなくて、「最初の」拒絶理由通知が来たあとに補正すると、補正のために必要になった次の拒絶理由通知が「最後の拒絶理由通知」というものになる。「最後の」と言っても、本当に最後なのではなく(ややこしい話だが)、例えば最初に通知しておくべきだったのに うっかりしてた、とかいう場合には、もう一度「最初の」拒絶理由通知が出されたりする。
詳しくは、審査基準を参照。
■ ちょっと前まで、この「最後の拒絶理由」は、比較的柔軟に運用されていたように思う。
例えば、請求項1は特許できるが請求項2は特許できない、という場合、請求項2についての拒絶理由通知とともに、「請求項1には拒絶の理由がない」という明示がされている(最近は)。このとき、ふつうの対応としては請求項2について補正を行って請求項2も特許できるものになったはずだと反論するわけである。
ここで、請求項2は補正されてもやっぱり特許できないな、と審査官が判断したとき、いままでは最後の拒絶理由が通知されて、「請求項2はやっぱり特許できない」という話になっていた。つまり、もう一度補正の機会が貰えるというわけで、そこで請求項2をあきらめる補正をするならば(請求項2を削除するならば)請求項1だけで特許査定がされていたわけである。
■ ところが、ここ数月の運用では、どうもこういう場合には拒絶査定をしてしまう、という形になってきているように思われる。この場合、請求項1は特許できるという状態で拒絶査定されてしまうので、補正の機会がない。請求項1を救うために請求項2を削除する補正を行うには、その補正の機会を得るために審判請求をしなければならない。
しかし審判の請求にはコストがかかるのである。
■ どういうことで、最後の拒絶理由をうまく使う運用をやめてしまったのか(あるいはそういう運用をしているのは一部の審査部だけかも知れないけれども)。
査定までの期間を短くしたいのだ、権利が欲しいなら審判請求くらいするだろう、などと思っているんだとすると、それは間違いで、審判の請求というのはそれなりにハードルが高いものなのである。なにより出願人に徒に負担をかけることになる。
ただでさえ、特許出願に対する意識はどんどん低下しているというのに、拍車をかけるようなことをしているわけで、私としては到底納得いかない。法律を改正してでも、一部請求項に拒絶理由がないという場合には、それを出願人ができるだけコストをかけずに権利化できるようにする制度に変えたほうがいいのではないだろうか。例えば特許可能な請求項だけ先に分割して登録するオプションを作るとか。そのくらいの制度は、現状から考えればあってもいい、と思うのだが。どうであろう。
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