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2015年11月30日 (月)

グローバルドシエのはなし

「いやあ法改正とかいろいろあるのに、お互いにとれる時間も少ないことですし、勉強会でもやりませんか一緒に」

などと言われ、その勉強会は一度は確かに開催されるものの、二度目からはだんだんぐだぐだになって行く…。という経験が何度かあって、勉強会というものにはあまり信用を置いていないんだけれども、冒頭に書いたような、勉強会の動機じたいは合理的だと思っている。

▼ それで、ここのところ徐々に(海外では)ウェブサービスが始まっているグローバルドシエについて誰か説明してくれないものかと思っていたのだけど、僕のところには寡聞にして聞えてこないので、村八分にされているのかも知れないという不安を若干感じつつ、試したところを書いてみようかなあと。

■ ドシエとは、出願・審査情報のことで、出願時テキスト(詳細な説明やクレイム、要約、特許願)、拒絶理由のテキスト、補正書・意見書のテキスト、図面などを含んだ文書のセットである。で、グローバルドシエ構想というのは、日本、米国、欧州、中国、韓国の各特許庁(グローバルといいつつ、いまのところこの五庁だけ)におけるドシエを共有しましょう、という構想を指す。
 近ごろ、このグローバルドシエで交換されている情報が、ウェブ経由で公開されることとなったわけだ。
※なお、ここでは構想に係るタスクフォースに関係する問題については触れない。

■ この記事
を書いている現在、日本以外の4庁がグローバルドシエに関するウェブサービスを展開している(なにやってんだ日本 orz)。欧州・中国・韓国の各国のシステムの利用法については特許庁のサイト(https://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/godai_patent_user.htm)に詳しいので、ここでは概ねのところを省くが、いくつか注意点を。

■ ヨーロッパ特許庁では、European Patent Register(以下、Registerと呼びます。詳しくない方は、ヨーロッパ特許庁版のj-platpatみたいなもの、とでもご理解ください)と、espacenet とでそれぞれサービスが行われているが、ここに注意点が一つ。

[注意点1-EP]
 Register で閲覧できるドシエは、ファミリー内にEP出願がある包袋に限られる。

 つまり、対応EP出願がなければ、日本の出願はRegisterでは閲覧できない。espacenetには、この制限が ない。この意味では、espacenet の方が使い勝手がよい。
 もっとも、espacenetを使うにしても注意点が一つ。日本の特許庁の記事にはちょっと誤り(?)があって、

[注意点2-EP]
 出願番号における Espacenetの入力番号形式は、JP+[西暦4桁]+[番号7桁]

のようだ。桁数の足りないところには「0」を、番号の前に埋める。つまり、特願2015-001234であれば、JP20150001234にする、ということ。公開公報のほうは6桁で正しい。

■ 米国のグローバルドシエサイトは、ここにある。
http://globaldossier.uspto.gov/
このサイトは比較的使いやすいが、ときどき、情報へのアクセスに失敗することがある。たいていはリロード(refresh)してどうにかなるが、想定していたアクセス数よりも実際のアクセス数が多すぎるのかも知れない(これは憶測だけれども)。

[注意点3-US]
 ファイルが取得できなかった場合、refreshすることで取得できる場合が多い。

20151130ct

△ 米国サイトでのドシエの表示画面(一部)

 なお、ダウンタイムも案外多い(全体のダウンタイムだけでなく、ある国でサーバメンテナンスが行われている間は、その国のデータへのアクセスができなくなる)ので、時間を気にして使う必要がありそうだ。

■ で、そのグローバルドシエで何が取得できるのか。

 実はグローバルドシエには、各テキストそのものだけでなく、それらの機械翻訳文が入っている(PDF化されている)。例えば中国語の拒絶理由通知について、機械翻訳とはいえ、英文が入手できるというわけで、これはなかなか強力な情報源と言えるのではなかろうか。なお、機械翻訳は、その場で(ユーザの要求時に)行われるっぽいので、よく言えばよりアップデートされたソフトを使った(改善された?)翻訳が手に入る可能性があるということであり、悪く言えば提供されるまでに多少待たされる仕様である、ということにもなっている。

20151130pgn

△拒絶理由の翻訳文を表示させたところ(画面の一部)。左側がドキュメントの一覧

■ 一部ではこの機械翻訳が IDS にそのまま使えないかと検討しているところもあるようだ。IDS では翻訳料が莫迦にならないので、この種の検討は(相当昔から)行われていたが、今回のシステム導入で、やや現実味を帯びてきたというところか。もっともいくつかを拾い読みした限りでは、「機械翻訳らしさ」が、まだあって、そのまま使えるかというと厳しい気もしなくはない。ただし、IDSについては、出願人の意図的操作が含まれないことを重視する観点もあり得るわけで、いっそ「全件このシステムのものを出します」という方針を採用するというなら、それはそれで検討できる話なのかもしれない。いまのところ、個人的にお勧めするつもりはないけど。

■ また、引用データが含まれているのもグローバルドシエのいいところだ。日本のデータでは拒絶理由通知を見るか、商用データベース経由で取得するかしか引用情報を取り出せないが、グローバルドシエ経由でようやく、引用情報(文献リストが決められたフォーマットで記載されたもの)が手に入ることになった(これまた日本の特許庁はなにやってんだか、という感じではあるが)。

20151130cc

△引用情報の表示例(画面の一部)

■ さらに固定リンクの観点からは… あ。いや。これは想定された使い方でない可能性もあるので省略するけれども、いちおうリンクを張ろうと思えば張れそうですよ?とだけ書き加えておこう。
 そんなわけで、情報取得元としては期待のもてそうな(そして日本の特許庁に対しては、一体何をやってるんだと言いたくなるような)グローバルドシエである。

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