« 測ってみよう放射線量 | トップページ | 条文を読んでみるはなし(59) »

2011年4月21日 (木)

訂正ばなし

blog を初めて大分経ちますが、

おっとっと、ウカツには書けないことだった…。

と言いつつ、ボツにしたネタも数多くあります。中には、公開してもいいんだけど、あんまりおおっぴらにすると、いろいろ困る人もあろう、と考えて取りやめたネタもあります。

…と、そんなことを先日、あるところで知り合いに話していたら、

「それは是非読みたいから私にだけでもくれ」

という話で。いえいえ。そんな。事務所の人や普通の企業知財の人から見たら当たり前な話だと思うので、と言いますと、

「いや。そういうのこそ、実はネタとしては読みたいヤツなんじゃないか?」

と来ました。いやぁ…と渋る私に、その人は、さらに売れるのではないか、などと甘言を弄してきます。じゃ買います? 例えば一記事500円くらいで、と言ったら、少し考えてから、

「…100円なら」

 それじゃぁ、売らない。

■ 特許査定なり、Notice of allowance なりがやってきて、

「あぁ、一区切り。特許になったなぁ」

なんて感慨も一入…てなことには、事務所にいるとなかなかならない(毎週のように特許査定は出ているので、あれもこれもと感慨に浸る余裕はない)のですが、ともかく特許が登録されると、手続的には一区切りついてしまいます。

■ ところが、実は、登録になった特許権をよく見ると、

「うわ、こんなとこに間違いがある!」

なんて場合があったりして。
 特に、外国へ出した出願で、技術的には審査官も一応合意した内容があったのに、最終クレイムに誤訳があって、請求の範囲に誤りが発生したりしていると悲惨な話で、それが理由で無効になったりしたらたまらないわけです。
 そこで多くの国では、いちおう、登録された特許権について「訂正」をすることができるようになっています。

■ 例えば日本でいえば、言わずと知れた訂正審判の制度があります。
 この訂正審判では、

1.特許請求の範囲の減縮
2.誤記又は誤訳の訂正
3.明瞭でない記載の釈明

が認められるところで(126条1項)、どんな誤りでも訂正できるというわけではありません。
 それでも、トップクレイムに無効理由が見つかったが、従属項にはない、というような場合、トップクレイムを削除する訂正というのは、一定の範囲で特許権を維持できるという意味で、重要な意味があるわけです(そしてこの制度があるために、従属項を立てておくというのにも意味があったりするわけです)。

■ 米国の場合、特許の再発行(Reissue)という制度があります(35 U.S.C. 251)。悪意のない誤りがあって、そのために無効になるおそれがある、というような特許権について、再発行特許出願というのをして、内容を改めた状態で登録を受けることができるようにした、というものです。
 そもそも一つの出願で審査がされる点、登録から2年以内であれば、クレイムを広げることも可能だったりする点などで、日本の訂正審判とは一線を画しているのですが、どのような誤りであれば Reissueの対象になるのか、ということでは近頃一つの争いがありました。

■ In re Yasuhito Tanakaでは、2000年に発行されたUSP 6,093,991(991特許)をめぐり、次のような争いが生じたのでした。判決文と解説が Patently-o で読めますので(http://www.patentlyo.com/patent/2011/04/in-re-yasuhito-tanaka.html)、詳しくはそちらで確認頂ければと思いますが、要は、この出願人、最初はクレイムを広げようとして、その後広げるのはあきらめて、元のクレイムセットと、それらに加え、限定事項を含めたクレイムを入れて再発行特許を求めた(Simply add narrow claims)のでした。
 これについて審査の段階では、

「再発行によって訂正可能な誤りなんかない(there was no error correctable by reissue)」

と言われ、審判の段階でも、

「単に限定したクレイムを加えるだけとかいうのはダメ」

と言われてしまいます(Ex parte Tanaka)。

■ そこでCAFCです。2010-1262事件(In re Yasuhito Tanaka)で、裁判所は、往年のRich判事の判決(In re Handel, 312 F.2d 943, 946 n.2)から、

[t]he narrower appealed claims are simply a hedge against possible invalidity of the original claims should the prior use be proved, which is a proper reason for asking that a reissue be granted.

(この限定されたクレイムは要するに公用の理由から無効にされる可能性のある元のクレイムに対する保険を設けようとしたもので、そうであれば再発行が許可されるのに十分な理由がある)

などと述べている箇所を引用します。
 そして本件でも、従属項を保険のために設けるのさえ許されるというのが裁判例だとして、単に限定したクレイムを加えるのも再発行が許可されるべきものだ、という判断をしています(もっとも反対意見もあったようです)。

■ この判断が、私の注意を惹いたのには、とある理由があるのですが、その話はここでは省略。

|

« 測ってみよう放射線量 | トップページ | 条文を読んでみるはなし(59) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 訂正ばなし:

« 測ってみよう放射線量 | トップページ | 条文を読んでみるはなし(59) »