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2011年3月 3日 (木)

乱読日記[180]

ダニエル・タメット,「天才が語る」

天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界
ダニエル・タメット
講談社
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その昔、「レインマン」という映画を観たときに、
サヴァン症候群の人たちというのは、こういうものか
とも印象づけられた、気がする。

この本の著者もまた、サヴァン症候群の方であるのだけれども、この方自身が語るところによると、いまひとつ私の認識は誤っていたみたいだ。

■ 本書の著者は、言語教育者であるとともに、円周率の暗唱においてヨーロッパ記録を樹立した人である。自身、自閉症サヴァンであることを述べていて、それゆえと思われる認識態様について、本書で詳しく紹介してくれている。
 私は、いまのところ前著(「ぼくには数字が風景に見える」)を読んでいないのであるが、本書にも数字と共感覚の例は紹介されている。どうも、この方の数字の認識には、色や形状が関係しているらしい。従って円周率の数の並びは、一種の風景として記憶されていて、風景を訪ねるようにしながら想起するのだという。サヴァン性のない私には想像するしかない話であるが、描かれているところによると、円周率の並びからなる世界は、なかなか美しい世界らしい。

□ 「ぼくには数字が風景に見える」

ぼくには数字が風景に見える
ダニエル・タメット
講談社
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■ サヴァンに関しては、先に書いたようにレインマンの印象が強くて(というかダスティン・ホフマンの演技が衝撃的で)、その登場人物であるレイモンドをステレオタイプと考えていたのだけれども、本書によると、サヴァンに関する種々の研究や、観察記録等にも議論のしどころがあるらしい。どうも私は認識を改めざるを得ないようだ。
 ご興味があれば、詳しくは本書を読まれることをお勧めする。本書は抜粋をするには、ちょっと惜しい気がするのである。

■ またこの本ではサヴァンに関わりなく、認識に関する一般的な話が紹介されていて、興味深く読んだ。一例として記憶の再構成の話がある。人間はある事柄を「記憶している」のではなくて、それを見た、感じたときの脳内の反応を「再構成」して、それを認識する、という考え方である。
 それゆえ、外部からの刺激によっては、再構成した反応が微妙に変化し、実際には見ていないものを「見た」と認識したりするという。刑事の裁判例ではよくある話かと思うが、目撃証人というのはえてして見てもいないものを見たという主張をしがちだという、そんな話にも関係する。

■ ところで、弁理士の試験というのもまた、記憶力の勝負みたいな側面があって、例えば商標法4条なんかはその一つの例だと思うのだけど、あれの記憶の仕方というのもいろいろあるみたいで、人によっては、各号(同法4条1項は、登録できない商標の例が1号から19号にかけていろいろ書かれているのである)に、それぞれ通勤途中の駅のイメージを関連づけているという。
 例えば、1号は、「国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標(は登録できない)」という話なのだけど、これが「新宿」のイメージで、2号は「パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章…(中略)…であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標」というのだけど、これが「中野」のイメージで…ってことらしい。私にはどうもこの覚え方は難しいみたいだ。
 私の場合、いくつかの「軸」を用意してこれらを記憶している。一つ目の軸は、じゅんすいに「語呂合わせ」で、国旗、パリ、国連…という順で並ぶ各号を「国パ連赤政…」というように。二つ目の軸は「経産大臣指定」の要件が何号にあった、というようなもの、以下、特定の要件が存在するものについて何号、何号という数字を記憶していき、さらに順序として間違えそうなものについて(包括的条項である15,16号がぼくの場合危ない)、その順序を特に思い出すための語呂合わせを使う…というようにしている。

■ まぁ、ことほどさように、私たちの脳というのは、それぞれに認識のしようが違っているので、教育をする人というのは大変だよなァなどと思うのである。

 そういやぁ、明日は某中学・高校で教師をしてるTくんと会う約束があるのだった。たまには労ってあげようかな。

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