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2011年3月18日 (金)

復帰

地震からまる一週間。世間の関心は地震復興とともに、原発事故に対しても(いやむしろこちらにより強く)向いているように思います。

私としても、もちろんそれらへの関心はあるのですが、ニュースばかり見ているのではなく、自分のできることで前へ進まないと、復興支援にはならないのであります。ということで、本日から blog も復帰。

■ 大学から大学院へと、いちおうは物理学を修め、一時は核物理学のクラスでアシスタントまでやった身としては、見るに堪えない「専門家」の言が数多くあるのでガッカリなのですが(どうしてああなるんでしょう)、いちいち反論するのも大変なので、いままで抑えておりました。
 しかしながら、某大手新聞社の雑誌に載ったとおぼしき「専門家」の言を見て、ついに頭にきました!

■ どこに
載った記事、とは書きませんが、その「専門家」によると、放射線には、光のように放射されるもの(20-30km飛ぶという)と、ガス状ないし霧状のもの(200-300km飛ぶという)とがあるそうです。

たぶん、この「専門家」氏の解説は、第一に放射線と放射性物質との区別がついていないのです。

 そして第二に、与えられた題である放射線とは何かすら理解していないのだと思います。
 このオソマツな解説が、果たしてこの「専門家」氏が本当に言ったことなのか(そうとすれば、この「専門家」は完全に失格どころの話じゃぁ済まない)、それとも雑誌記者が適当に聞いておいて誤ったものか、それは知りませんが、

これは酷い。

■ おおよそ目にしたマスコミ記事のほとんどがこんな調子なので、徒に不安感を煽っている反面、本当に重大な結果になり得る要素については軽視しているといった具合ではないかと思いました。

■ 放射線と健康被害との関係についても、ほんとうに詳しく分かっているというわけではないはずですが、放射線医学研究所の資料を見ますと、だいたい1シーベルト(累積値)を越えるか否かというころから健康被害が出てくる人があるようです。
 そこで、私としてはこれをおおざっぱに1メートルの定規になぞらえたらどうだろう、と思うんです。
 例えば先日、物凄い計測値だ、と話題になった300ミリシーベルト/時ですが、これは一時間その強さの放射線がある場に立ち尽くしていれば、累積で300ミリシーベルトだけ被曝したことになる、という値です。これで300ミリシーベルト、つまり1メートル定規の30センチずつ、毎時伸びていくゲージのようなものを想像していただければと。この同じ強さの放射線をずーっと3時間浴び続けると90センチのところまでゲージは伸び、このあたりから徐々に健康被害の可能性が出始める、と。
 しかしながら、今回問題になっているケースでは、目の前にそれだけの放射性物質があるところで立ち尽くしているというのではなくて、放射性物質が開放空間で飛散しているというわけで(原子炉建屋の上空を除く)、最大300ミリシーベルト毎時という記録は、ほんの瞬時の記録というわけです。そうとすると、累積の被曝量は1時間経っても300ミリはいかない。

■ さらに東京都内ともなると、先日からの各所のモニタの値(早野先生のtwitterのポストより、http://plixi.com/p/84635077)を見てみましたが、ある時点で0.3マイクロシーベルト毎時に達するかどうか、というレベル。そうするとその線量のままであるとして(さらに被爆は主に外出時であるとすれば)10時間外出していても、3マイクロシーベルト、つまり0.003ミリメートルだけゲージが伸びたという状態に過ぎないわけです。
 ですから、この値だけを取り出して、普段より何倍云々と宣伝するのはどうか、と思います。

■ 一方で、この放射線の由来が問題ではあるわけです。仮に福島の第1原発からすべてが(そんなことはないのですが)来ているとして、現状、原子炉は停止していますから、原子炉内の放射性物質が漏れているとすると、主な放射性物質は核分裂生成物であるヨウ素131とセシウム137等かと思います(この辺は分量を含め原子力の専門家の意見が聞きたいところですけど)。で、これらの核分裂生成物は、体内に取り込まれるので、体内で放射線を放出するところが嫌なわけです(いわゆる内部被曝)。
 まず、ヨウ素131の半減期は8日というので、これは結構強い放射線源になるんだろうと思います(半減期が短いということは、それだけ多くのヨウ素131が、短時間に壊れて放射線を放出することを意味するので、物質の量のわりに放射線の放出量は多くなる)。一方のセシウム137は、外部環境では30年ほどの半減期をもっているようですが、生物学的半減期(生体機能により排出されることで半分になるまでの期間)は数十日程度と結構長いので、内部被曝の線源としては嫌な感じです。もっとも水にとてもよく溶けるらしく、そうであれば、雨でも降れば流れていってしまうことでしょう。

■ そして、もうお気づきでしょうが、原子炉が停止して既に8日はすぐそこです。もう、ヨウ素131の量は当初の半分ほどになっているのです(指数関数カーブで減るので、7日目でもうほとんど半分のはず)。ですからヨウ素の飛散量はどんどん減っているはずだと思うのです(違いますかねぇ>原子力の専門の方)。

■ それともう一つ。なんだか被曝量はどんどん蓄積される一方という考えの方もいらっしゃるようですが、内部被曝がある程度抑えられていれば、放射線で一時的に破壊された細胞があっても回復する(というか新陳代謝等によって廃棄、置換される)のが生物というものではないでしょうか。つまり、1メートルの定規に沿って伸ばされているゲージはまた、生物のもっている回復能力によって徐々に短くされてもいるのだと思います(こちらは医療関係の方に本当のところを確認したい)。

■ というわけで、まずは内部被曝を防ぐことなんじゃないかなぁと私は思うわけです。そのためにも外出して帰ってきたら、体は洗う。服は水拭きするなり、洗濯するなりする。内部に入ったものについては早めに排出させるため、適度に水分を摂取してちゃんと排泄する。というようなことなのではないかと思うのです。
 それから、デマはいけません。デマは。中には真に受けたらそれこそ死ぬ、というのがありましたよ

■ え?なんですって?

 あぁ、それはですね。いまのところはヨウ素131とセシウム137とは一緒に飛んでくるんじゃないかと仮定してですね、ヨウ素131の崩壊による放射線量で、飛散地域が推定できるわけですが、これがヨウ素131の崩壊が進んでしまうと、ヨウ素131が飛散地域のマーカーにならなくなるわけで、セシウム137は、一々検出をしなければいけなくなると思うんです。そうすると…(以下略

 あぁ、そうそう。「セシウム137が検出されました!」っていう報道があったとしてもですね、いまの検知器はすごい性能なので、原子数個でも検出しちゃうみたいだから、ぜんぜん驚くにあたらない(イマドキ、セシウム137は結構どこにでもあると思う)。

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コメント

私も専門家ではありませんが、自称専門家や局アナ等には、ひどい低レベルな者が居てイライラしました。

さて、専門家では無いので、下記にも誤りは含まれるかと思いますが、気付いた点を幾つか述べます。

マスコミで報道されたのを見たことは無いのですが、現在、公的機関により、都内における大気中の核反応生成物別の検出量が測定され公開されています。

都内における大気浮遊塵中の核反応生成物の測定結果について
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement.html

15日の午前中には、ヨウ素に関して、200ベクレルを越える結果が出ており(おそらく、前日の3号機水素爆発に起因するものと推測)、これは通常の原子力発電所における大気中への排気の「排気口」近傍(つまり、大気拡散前)における上限値を遥かに超えるものであり、少々、問題のあるレベルかと思われます。

セシウム137についても、結構な量が検出されています。

ちなみに、セシウム137について、大気中にどこにでもあるというのは明らかな誤認と思います。医療用放射源等で利用される物質ではありますが、通常、その放射源等から微粒子の形態で飛散することは考え難いと思います。

実際、上記測定結果でも、13、14日時点では、まったく検出されていないません。自然界には通常存在しないセシウム137が大気中に存在するのは異常事態でしょう。

投稿: とおる | 2011年3月18日 (金) 21時00分

なお、臨界状態でなくても、ウラン、プルトニウムの核分裂はゼロになる訳ではないですし、再臨界の際には、強烈に核分裂が進みますから、原子炉が停止したからと言って、ヨウ素が単純にゼロに向けて減り続けるというものでもないと思います。

最後に、少々脱線しますが、上記3号機は、MOX燃料を使っていたそうで、プルトニウムが飛散した可能性、これから飛散する可能性があるのが気になります。

投稿: とおる | 2011年3月18日 (金) 21時05分

とおる様

コメントありがとうございます。
また、有用なリンクをありがとうございました。

こういうデータを測っているのは産総研ばかりではなかったとは。参考になります。
セシウムについては、あちこちで核実験だのがされているので、あってもおかしくないだろうなぁ、程度に思っておりました。そうでもないのですね。

投稿: ntakei | 2011年3月18日 (金) 22時22分

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