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2011年1月 7日 (金)

条文を読んでみるはなし(49)

乾燥する時期になってきました。
静電気でビリビリする体質なので、この時期は辛いのですが、「静電気よけ」をいつも身につけて、「ビリビリ」を逃れています。

ところで「電気」というと「ビリビリ」という言葉がぴったりくるキーワードであるように…

■ 国内優先権の話をしているのでした。
 特許法第41条の優先権のはなしには、「包括的」、「漏れのない権利」という単語がつきものです。
 古きよき時代の「基本書」、吉藤先生の特許法概説には優先権の利用態様としていくつかの例が記載されています。いま私は記憶に従ってこれを書いているので、いまひとつ正確性が保証できないのですが、この吉藤先生のいう「態様」の一つには、元の出願に含まれる発明αについて、後の技術的見地の広がりにより、これを上位概念化した発明Aが完成したような場合、このAをクレイムできるようになる、というような態様があったように思います。
 そもそもの発明αは、技術の一側面しか捉えていなかったのですが、その後の技術発展により、全体像Aが見えてきた、というようなことです。この場合、補正では到底Aを導入することができません。新規事項の追加になりますので。
 しかし優先権主張を伴う出願は新規出願ですから、基礎出願に対して新規事項が含まれようと知ったことではありません。単に、

  • 基礎出願に含まれた事項については基礎出願の日を基準に特許性が判断され、
  • 基礎出願に含まれていない事項については、優先権主張を伴う新規の出願の日を基準に特許性が判断される、

というに過ぎません(あくまで基本的には、ですが)。
 こんなことにより、発明をより「包括的」なものにし、「漏れのない権利」の取得を可能にする、というのが国内優先権の制度の趣旨になってきます。

■ 趣旨といえば---そもそも41条がなくても、パリ条約を利用すれば外国の出願人は日本において、基礎出願(自国出願)を充実させて「包括的で漏れのない権利」の取得ができたわけです。それに比べて日本国内の出願人は不利だ、という歴史的な話がありますが、そこは置いておいて、補正によれば新規事項追加となり、新たな出願を別にすれば、元の出願に含まれた事項についてまで新出願の日を基準に特許性が判断されることになって、包括的で漏れのない権利の取得が困難だった、というようなことから趣旨を述べるのが普通かな、と思います。
 もっとも、この辺の趣旨の話は、受験業界のテキストを見てもらったほうが正確でしょうから、ここではここまでにしておきましょう。

■ さて、この辺でもう一度41条1項を再掲します。

□ 第41条 特許を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その特許出願に係る発明について、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。ただし、先の出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、その特許出願の際に、これらの者の承諾を得ている場合に限る。
1.その特許出願が先の出願の日から1年以内にされたものでない場合
2.先の出願が第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願若しくは第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願又は実用新案法第11条第1項において準用するこの法律第44条第1項の規定による実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願若しくは実用新案法第10条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願である場合
3.先の出願が、その特許出願の際に、放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合
4.先の出願について、その特許出願の際に、査定又は審決が確定している場合
5.先の出願について、その特許出願の際に、実用新案法第14条第2項に規定する設定の登録がされている場合

これは、優先権主張出願をするための要件を列挙したものです。
 列挙されているのですから、単にこれらを頭に放り込めばいいわけです。2.を除けば分かりやすい話ですので、理論的に頭に入ってくるのではないかと思います。

■ 2.の規定は、要するに基礎出願において出願の要件が不備となる虞がどの程度あるか、というのを気にしているわけです。
 分割や変更等では、分割・変更の要件というのがあるわけで、その要件の具備までチェックして初めて優先権の効果を判断できる、というのでは

大変じゃん

というわけです。この要件は分かりにくいために、資格者でないと意外に知らないところでもあり、いわゆる非弁行為で被害が出やすいところでもあります。

■ また、国内優先は基礎出願の取り下げ擬制を伴うため(42条3項)、不利益行為にカウントされています。そのために、仮実施権を有する者の承諾が必要ということになります。また14条にも「優先権の主張」が含まれる結果となるわけです。
 代理人の場合、先の出願を代理していないと、やや複雑なことになります。
 基礎出願が別の代理人さんで、この別の代理人さんの手続が納得いかない、などとして私たちに国内優先権の仕事を持ってきて頂けることもあるのですが、この場合、先の出願について委任状の提出が必要になります。ところが先の出願について(個別委任状のように紙で出す場合)委任状を提出しても、そのデータが反映されるまでに2月程度かかるため、優先権主張を伴う出願について特許庁での方式処理が先行し、委任状の提出がないものとして「優先権主張が無効」だとする補正指令が下ることになります。少し慣れてきましたが、いまでもぎょっとします。
 ちなみに、この場合、「先の出願について委任状を出してありますよ」という趣旨を述べた上申書を提出することになります。
 なお、包括委任状のように電子で手続できる場合は、こういうことはありません。

さて、来週は、2項以降と、42条まで行きたいものです。

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