« [技術ばなし](番外編) Integral by parts | トップページ | 記事遅れ »

2010年11月30日 (火)

無料の本たち

ミレニアム(直近の2000年のこと)前後って、何をしていたんだったかな、と思い返してみます…

…と、何のことはない。弁理士試験を受けていたのでした。ちょうど合格前後じゃないですか。

■ 高校時代、高橋留美子さん原作の「めぞん一刻」というマンガがあって、つい先日、某所で単行本を見かけて

えらい懐かしいものが…

と思い、手に取ってみたのですが、ははぁなるほど。時代って変わったんですね。いまや公衆電話ってあまり見ないし、そもそも携帯電話があるので、待ち合わせミスということも発生しがたい。
 驚くべき時代になったもんです(ということはああいう「ドラマ」も少なくなったのかねェ)。

 その二十数年前の話に比べると…「ラブひな」という漫画が、「少年マガジン」誌に連載されていたのは、wikipedia によると、98年から01年のことだったそうですから、かれこれ10年ほど前の話ということになるわけです。

■ この「ラブひな」、原作は赤松健さんという方で、アニメ化もされていたそうなので、それなりに稼げた一作だったんじゃないかと思うのですが、既に絶版になっていたようです。
 赤松さんは、そういう絶版の漫画作品を電子化し(あるいは既に電子化されたものに対し)て作者許諾の上で広告を挿入し、電子化作品の利用によって得られる広告収入を作者に還元するという仕組みを考えられたようです(http://www.j-comi.jp/concept/concept.html)。
 手始めとして、といいますか、いわばパイロットとして、ご自身の作品である、「ラブひな」をPDF化し、広告を挿入して、Jコミ(http://www.j-comi.jp/)というサイトで無料配布し始めました。
 このパイロットを通じて、どれくらいの広告収入が見込めるかを判断することにしたい模様です。

■ 広告は、クリック数に応じて収益が得られるタイプのものらしく、利用者自体には(広告された商品を買わないなら)課金はされません。
 本日の時点で、既に第一巻のデータは30万ダウンロードに迫る勢いで、果たして思惑通り、広告収入がそれなりにあったのか、気になるところです(原作者さんはtwitterもやっているそうなので、follow しておけばそのうちツブやいてくれるかもしれません(あるいはもうツブやいてる?))。

■ なかなか面白い企画ですが、将来的に軌道に乗るまでが大変なのかな、とも思います。
 まず、マンガ原稿の電子化について出版社との間で協議をする必要がありそうです。

 いつかも書いたかも知れませんが、出版契約においては、電子的使用は当然には出版社側で自由にならないことになっています(通例)。
 一例として、日本書籍出版協会(通称:書協 http://www.jbpa.or.jp/)の2005年版の契約書ひな形では、電子的利用として、第20条に規定を置いています(http://www.jbpa.or.jp/pdf/publication/publication01.pdf)。引用してみますと、

 第 20 条(電子的使用) 甲は、乙に対し、本著作物の全部または相当の部分を、あらゆる電子媒体により発行し、もしくは公衆へ送信することに関し、乙が優先的に使用することを承諾する。具体的条件については、甲乙協議のうえ決定する。
2.前項の規定にかかわらず、甲が本著作物の全部または相当の部分を公衆へ送信しようとする場合は、あらかじめ乙に通知し、甲乙協議のうえ取扱いを決定する。

というものです。

■ この規定だと、電子化については、もとの出版社に「優先的に使用することを承諾する」というだけで、条件については協議により決するとなっています。そして2項で、取り扱いが当事者双方で納得できれば、原作者が公衆送信しても構わないことを確認しています。
 これならば(協議は必要ですが)、赤松さんの考えに沿ったことが可能そうです。

■ しかし、今年になって、書協は新しく電子出版に対応したひな形を作成しました(http://www.jbpa.or.jp/pdf/publication/denshikeiyaku1.pdf)。
 これによると、

第2条(電子出版の利用許諾および第三者への許諾)
(1)甲は、乙に対し、乙が本著作物を、日本を含むすべての国と地域において、以下の各号に掲げる方法のいずれかまたはすべてにより、本著作物の全部または一部を電子的に利用すること(以下「電子出版」という)を独占的に許諾する。
1 DVD-ROM、メモリーカード等の電子媒体(将来開発されるいかなる技術によるものをも含む)に記録したパッケージ出版物として複製し、頒布すること
2 インターネット等を利用し公衆に送信すること(本著作物のデータをダウンロード配信することおよびホームページ等に掲載し閲覧させることを含む)
3 データベースに格納し検索・閲覧に供すること
なお上記電子出版においては、電子化にあたって必要となる加工、改変等を行うこと、および自動音声読み上げ機能による音声化利用を含むものとする。
(2)甲は、乙による前項の利用に関し、乙が第三者に対し、再許諾することを承諾する。

と、独占契約の形に変わっています。
 この契約では、赤松さんの考えに沿った「電子出版」は難しそうです。

■ もちろん、Jコミの方法が必ずしも利用者に受け入れられるとも限らないのですが、仮に受け入れられた場合、後々問題が生じないように、出版契約についても気を付けていないといけないのかなぁ、などと…。
 まぁ、私は知り合いに漫画家がいるわけでもないので、心配しても仕方ないんですが、勝手に思ったわけでした。

■ なお、当の「ラブひな」ですが、1巻をダウンロードして拝見しましたが、なかなか面白かったです(少年誌にしては表現的にギリギリなものもありそうですが、私はもとよりそういうことに寛容なほうなので気になりませんでしたが、気になる人は気になるかもです、念のため)。
 少し時間ができたら、まとめて読んでみるかな、などと…。

|

« [技術ばなし](番外編) Integral by parts | トップページ | 記事遅れ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 無料の本たち:

« [技術ばなし](番外編) Integral by parts | トップページ | 記事遅れ »