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2010年11月 8日 (月)

IDS を巡る ささいな?問題

先日の医療処置後の診察を午前中に受け、いつぞや読んだ(読まされた?)「化物語」のアララギくんほどではないにしろ、年齢の割に比較的早い回復で医師を驚かせた後、午後、事務所へ戻ってみると、事務の人が難しい顔で電話に向かっていた。

▽ その電話の内容とは…

■ 後から聞いた話になる。
 それはこういうことだったみたい。
 ある出願人さんが日本へ出願をし、審査を請求した。その後、当該出願を基礎に米国へパリルートで出願をした。その後、日本での審査が行われ、引用文献として

非特許文献(英文)

が引用された拒絶理由がやってきた。
 さて、この非特許文献、米国向けに IDS をしなければならぬ。

■ 日本の審査で引用される文献は大別して、

  • 特許文献 と、
  • 非特許文献、

とに分けられている。
 特許文献というのは、文字通り、特許出願だったり、実用新案登録出願だったりに係る文献である。このうちには外国の特許出願等に係る文献も含まれる。
 ところで引用文献(つまり出願前の技術を記載した文献)のうちには、例えば技術論文のようなものもあり得る。また分野によっては、一般書店で販売されているような定期刊行物も引用文献となり得る。

■ 特許文献ならば、まだいい。
 それこそ IPDL(特許庁の電子図書館)があるので、そこからダウンロードできることが多い。ところが非特許文献だと、そうはいかない。
 例えば技術誌所収の論文などだと、なかなか入手できないことも多い。発明協会というところへ頼む手もあるにはあるが、必ずしも入手できるとは限らない。
 そこで審査した特許庁には、原本があるはずなのだから、それをコピーしてくれればいいじゃん、という話が出た(ちょいと前のことである)。ところが、よく考えてみると、引用文献だからといいつつ、文献をコピーして出願人や代理人に送ったら、それは元の文献の著作権の侵害(複製権侵害)に該当するのではないか。
 んでもって、著作権法を改正し、

□第四十二条 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 次に掲げる手続のために必要と認められる場合についても、前項と同様とする。
 一 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(昭和五十三年法律第三十号)第二条に規定する国際出願をいう。)に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
 二 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事(医療機器(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する医療機器をいう。)に関する事項を含む。以下この号において同じ。)に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続

というように(2項1号)し、必要と認められる限度で複製可能とした。

■ そういうわけで、今は拒絶理由に引用非特許文献がある場合、当該非特許文献のコピーが拒絶理由通知とともに特許庁から送られてくるようになっている。以前に比べると格段に便利になったわけだ。

■ ところで特許庁がコピーして送ってきた、というのはいい。
 それはいいとして、では IDS をする場合、弊所で複製をして USPTO(米国特許商標庁)に提出をするわけだが、これは? 著作権の侵害になっていないの?
 というのが件の事務員が調べていたことである。
 電話の相手先は「著作権テレホンガイド」(CRICがやってるやつ;http://www.cric.or.jp/office/soudan.html)だったらしい。

■ 弊所事務員

「…というわけなんですが。」

と事情を説明したら、相手方は、

「…それは国内法の問題ではなく、米国法の問題ですねー」

などと答えたそうだ。

■ まぁこの応答の正否はともかくも、米国の問題だというなら、17 U.S.C. の 107条(Fair use)該当性の問題になるんではないかと思うんだけれど(なお、Fair useに該当するか否かの判断はそれほど単純ではないと思う)、その(1)を見れば、利用の目的及び特性を考え---のように規定されているし、政府による利用に供することだし、公共の利益に資するものだから、米国での著作権侵害もないのではないかなぁ…などと思った。

■ 当該 「IDS 提出要」の案件担当のパートナーは、なんだかその後もいろいろ調べていたようだったが、結局、

問題なし

と判断したみたいだった(当のパートナーはその後すぐに出かけてしまったので、判断の道筋を私は聞かなかったが)。

■ 聞こうと思ったらいなかったので、個人的には
「これこれこういう理由で…」
と、一点の疑いもなく説明できるようになった気分がない。
 言われてみれば曖昧な箇所もあるような気がしている。明日は確認してみようと思うが…。
 それと、そのうち付き合いのある米国代理人や、他の弁理士や弁護士の見解も聞いてみようかなァ。

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コメント

非特許文献に著作権が発生してくることは想像できますが、特許文献を米国にIDSとして提出して良いのか、いまいち理解できる根拠が見当たりません。上記の続きとして、何か新たな情報がありましたらご連絡頂けませんか。現在特許事務所に勤務しており、この問題を検討している者です。

特許文献については、公開を承知で著作権者は出願している訳で、特許法の目的上公開の代償として権利を求める構成となっています。また、そもそも、公報とは第三者に使用(複製や譲渡)を求め、広く知らしめるもので、仮に米国のIDSについてもこれを制限するのは何だかおかしい気がします。

ご連絡頂ければ幸いです。

投稿: 小菅理一郎 | 2019年3月30日 (土) 17時39分

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