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2010年10月28日 (木)

[技術ばなし]位置 ばなし

本日は、普段訪れたことのないところへ出かける用事がありました。

▽ 駅を降りて目的地までの地図がなく、住所だけを頼りにしていたのですが、こういうときこそ iPhone の出番です。Google Map のアプリを起動しておき、GPS(Global Positioning System)による位置測定結果を表示させます。これで自分のいる場所がわかるわけです。あとは目的地との位置関係を見つつ移動…、そして目的地を発見…。

■ かくのごとく有用なGPSではありますが、一般に利用可能になってきたのはごく最近のことです。
 そもそも、カーナビゲーションシステムで有名なものかと思いますが、記憶によれば、ホンダが初めて車両に登載した「カーナビ」は、ジャイロセンサを使ったもので、当初の位置を設定する必要があるばかりか、必要に応じて地図を差し替える(地図はアニメのセル画のようなものに描かれていて、このセルがジャイロの検出結果に応じて上下左右に移動して現在位置を表示する仕組み)ものでした。GPSが利用可能になるまでには、いろいろあったのです。
 なお、ジャイロセンサの検出結果では誤差が累積してしまうので、あまり実用的なものとは言えなかったんじゃないかと想像致します。

■ ところで、このGPSというのは、どのようにして位置情報を得ているのか。

衛星からの時刻情報を使ってるんだよ、

というのはよく聞く話ですが、時刻情報をどのように使うと自分の現在位置が分かるのかはちゃんと説明できていません。

時刻情報をどう使っているの?

と聞けば、

少なくとも3つの衛星から受信した時刻情報と、受信機側の時計が持ってる時刻との差を計算するの。
そうすると、各衛星との距離が分かるでしょ(時刻差Δtと、光速cとを使って、c・Δtを計算する)。
各衛星との距離がわかれば、三点測量みたいな原理で位置がわかるでしょ?

という。

■ えー? でも三点測量っていうのは、そもそも相手の位置が分かってて、そこからの距離が分かるから位置測定ができるわけだよねぇ、と、さらに突っ込むと、

あぁもう面倒くさい。衛星の位置は分かってるんだよ!

などと。

■ 実をいえば、衛星の位置は受信機側で既知である必要があるのです。そのために受信機は、衛星の位置を「計算によって」求めています。どうやっているか、というと(いくつか方法はあるのですが)、GPS衛星が送信する情報を利用しているのです。
 実は、GPS衛星は時刻情報だけでなく、「航法メッセージ」というのを送信しています。この航法メッセージには、前衛星の概略衛星軌道情報である「アルマナック」と、送信した衛星自身の軌道情報である「エフェメリス」との二種類あります。これらがだいたいこんな風に送られているわけです(特開2002−243830号公報より)。

10102801

■ 受信機は、アルマナックを参照して信号を受信する衛星の組を決めます。衛星の組が決まると、今度は当該組に含まれる衛星からエフェメリスを受信します。エフェメリスを使うと、現時点での各衛星の位置(どっか(例えば地球の中心)を原点として、X,Y,Z各軸を適当にとったデカルト座標系上のX,Y,Z座標の値)がわかります。
 一方、各衛星が送信する時刻情報は送信時の時刻情報です。受信時の受信機側の時刻と衛星側の送信時の時刻情報との差をとると(受信機の時計と衛星の時計とが一致しているという前提で)、各衛星との距離が---先に書いた要領で---わかるというわけです。
 そうすると、自分の座標をx,y,zとして、各衛星との三次元座標上の位置の差が、この時刻情報に基づいて計算された距離と等しいとおいて、方程式が立ちます。x,y,zが未知数なので、3つの衛星があれば、三次元位置がわかるはず、です。

■ まぁ、概略はこんな感じなんです。が、どういうわけか、「x,y,z」の三次元位置が分かるためには、

4つの衛星からの信号が必要

だというではありませんか。未知数3つに、どうして4つ目の衛星からの信号が必要なのよ?と思ったことはありませんか。
 実は、先ほどの話にはもう一つ、隠れた未知数があるのです。
 それは時計の誤差です。

■ 衛星に積まれている時計は原子時計という正確な時計で、各衛星の間での時刻は一致しているものと考えられる(実はそうでもないので、その修正情報が送られている)のですが、受信機側の時刻情報は一般的な時計なので信用なりません。そこでこの受信機側の時計の誤りΔτを第四の未知数とし、c・Δτだけ位置がずれていると考え、この第四の未知数を含んだ項を連立方程式に入れるのです。
 4つの衛星からの時刻情報の差、そして各衛星の位置情報、これらを既知として、自己の位置x,y,zと、時計の誤差Δτとを未知とし、4つの方程式からなる連立方程式を解きます。これにより、目出度く、自己の位置情報が求まる、というわけなのです。

■ ちなみに日本は先頃、独自の位置測定用衛星群、QZSS(準天頂衛星システム)の初号機、「みちびき」を打ち上げ、現在その試験を行っているところです。このQZSSからの信号が利用できるようになると、日本国内での位置測定精度が飛躍的向上するほか、天頂付近に滞在するため、高層ビルなどの密集するエリアでも位置情報が取れるようになります。
 そのほか、QZSSは諸般の事情からGPSがアレになったときに、それを補うものとしても使えるわけでして、いろいろ意味のある衛星システムなわけです。

■ 参考サイト:
QZSS:http://qzss.jaxa.jp/
GPSの技術的説明:http://www.enri.go.jp/~fks442/K_MUSEN/

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