« くくり ばなし | トップページ | さくらんぼ ばなし »

2010年9月10日 (金)

条文を読んでみるはなし(34)

ある数が「3」の倍数かどうかを確認する方法はとても簡単で、各桁の数を総和して、それが3の倍数であれば、もとの数も3の倍数になるわけです。これは9や99など、10n-1が3の倍数であることに由来するものですが、もうちょっと簡単に言えば、任意の数Aは、1の位、10の位、…の各桁の数をa0,a1,a2…とすれば、

A=a0×1+a1×10+a2×100+…

つまりΣai×10iなどと書けるわけですが、この総和に係ってる各項ai×10iを取り出して、ai×(1+(10i-1))を作ってみると、このai+ai×(10i-1)のうち、ai×(10i-1)がさっきも書いたように3の倍数なので、これは3で割り切れるわけです。ですから、残りのaiの総和、Σaiが3で割り切れれば、元の数Aもまた、3で割り切れる(つまり3の倍数)ということになるわけです。

▽ 一方、ある数が11の倍数かどうかを確認する方法も比較的簡単です。これは奇数桁目の数の総和と、偶数桁目の数の総和をそれぞれ演算し、偶数桁目の数から奇数桁目の数を引き算して出てきた結果を見ます。これが11で割り切れれば、もとの数は11で割り切れる=つまり11の倍数である、というわけです。
 例えば 5,112,448 という数についてこれをやると、奇数桁目の数の総和が、

8+4+1+5=18

偶数桁目の数の総和が、

4+2+1=7

で、これらの差が

18−7=11

なので、11で割り切れることになります。実際、5,112,448=11×464,768です。
 こちらも、Σ奇数桁の数−Σ偶数桁の数だけ残して、他の部分が11の倍数になるように数式を変形できるからですが、今回の話は、これらの話とはほんのわずかにしか関係していません。

■ さぁ、これら3,11という素数を乗じて、33という数を作ります。
 今回は33条の話です。
 まずは条文を見ましょう。

□ 第33条 特許を受ける権利は、移転することができる。
2 特許を受ける権利は、質権の目的とすることができない。
3 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。
4 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、仮専用実施権を設定し、又は他人に仮通常実施権を許諾することができない。

■ 「権利」という言葉が出てきましたので、セオリー通りに主体、客体…と調べてもいいんですが、そんなことはどこにも書いてあるので…。しかしながら、性質だけはちょっと考えておきましょうか。
 この「特許を受ける権利」というのは、どんな権利なのでしょうか。
 既に29条の柱書きで見ましたように、産業上利用可能な発明をした者は、特許を受けることが(原則としては)できるわけです。つまり、発明者は発明完成とともにこの「特許を受ける権利」を原始的に取得することになります。この権利は発明者に固有の権利とすべきでしょうか。
 このあたりは、国の経済施策の問題と関連するかも知れません。一身専属的、とすることを是とすることも考えられなくはないからです。しかしながら我が国の特許法では「特許を受ける権利」は財産権であり、移転可能であるとしました。
 財産権であるとすれば、移転可能は当然とも思えるのですが、なぜ33条1項が規定されているのか。
 その答えは青本に書いてあります。いわく、特許を受ける権利は、国家に対して特許の付与を請求できる請求権であり公権であると解釈することもでき、もしかして移転できないのではないかという解釈が生じるのを避けるため、というわけです。

■ いまではこの「特許を受ける権利」は、特許権の付与を請求する請求権であるとともに、財産権でもある、というように多重の性質を有する権利として説明するのが一般的かと思います。

■ 2項は質権の話です。あまり大したことないので、詳しい話は省略。あ。ただし、譲渡担保の目的にはできる、というのが一般的です(規定がないから、というわけです)。
 3項は、共有になっていたら、その持分の譲渡は、他の共有者の同意が必要だよ、というだけの話です。仮にあなたが知人のAさんとともに自動車に関するある発明に係る特許を受ける権利の共有者になっているとします。ここで仮に一緒に事業をやろうと思っていた、そのAさんが、某巨大自動車メーカーに対し、持ち分の売り込みに成功し、かつ、特許権が成立してしまうと、あなたの考えていた実施程度の細々した業務なんか吹き飛んでしまうことでしょう。
 このように、共有者間の資力の差というのは、各共有者にとっては大きな関心事なのです。それというのも(あとから見ますけれども)、各共有者はそれぞれ特許発明の実施ができるので(これには無体財産であって、一方が実施していても他者が実施できないとはならないという事情もあります)、各者の実施にかけられる資本力というのが他の共有者の持ち分の経済的価値に大きな影響を与えてしまうからです。

■ このように共有については、共有者間での権利関係を考えての規定や、結果の合一確定の要請がある場合の規定など、さまざまな制限がつくので、いろいろな場面で共有の場合はどうか、と考えるのも一つの勉強です。かといって「共有マニア」になってもいけませんが。

■ 4項は仮実施権の問題で、仮実施権の設定についても同意がいる、というものです。この理由も3項の理由と略同じ。この規定を含め、仮実施権の話はまた、仮実施権が出てくるところで書きましょう。

■ ところで、今回の記事を書くにあたり、ふと思って wikipedia の「共有に係る特許権」という項目を眺めたのですが、この wikipedia の記載で、「他の共有者の同意が必要な行為」にこの33条3項が入っているのですね。これはちょっとした問題かも知れません。
 だって、標題が「共有に係る特許権」なので、特許権が設定登録された後の話をしているはずなのに、特許権が発生する前の段階に係る行為まで書いてあるなんて。
 ま、これは答案じゃぁないし、別にいいですけど。

|

« くくり ばなし | トップページ | さくらんぼ ばなし »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165428/49432153

この記事へのトラックバック一覧です: 条文を読んでみるはなし(34):

« くくり ばなし | トップページ | さくらんぼ ばなし »