« 乱読日記[166] | トップページ | 特許的、林檎? »

2010年8月 6日 (金)

条文を読んでみるはなし(29)

東京都では気温が25度を下回らない日が続いています。こうなると体の方の調整機能がいっぱいいっぱいなので、種々の考えからなるべく冷房を使わないようにと思っていても、寝入りばなの短い間とか、流石に冷房に頼ってしまうときがあるものです。

▽ テレビでよく聞く夏日とは最高気温が25度以上の日(より厳密には「日最高気温が25度以上の日」)、真夏日が同じく30度以上の日をいいます。そしてさいきんは猛暑日として日最高気温が35度以上の日、というのが定められています。
 夏日、真夏日、猛暑日、というわけですが、なんとなくネーミングに統一性がないのが、ちょいと気になります。もっとも猛夏日というのも今ひとつだとは思いますが。

■ えっと。そうか。さっき、最高気温が25度以上の日、と書いておいて、「より厳密には」、日最高気温が…と言い換えたのですが、この言い換えの間の相違っていうのはですね、こういうことです。
 「最高気温」というからには、一定期間の間でもっとも高い気温、という意味ですよね。ここで一定期間というのは、「日(day)」に限られないで、「週(week)」でもよければ「月(month)」でもいい。そうとすると、単に「最高気温が」というと、例えば「月最高気温」を意味している可能性がある。仮に「月最高気温」を意味しているとすると、例えば7月中、月間でもっとも高かった気温が37度だったとする。他に日最高気温が35度以上ある日があったとしても、とにかく月間の最高気温(月最高気温)37度を記録した日がある、とする。そうすると、その月最高気温37度を記録した日が「猛暑日」で、その日以外の、日最高気温が35以上ある日はどれも「猛暑日」でなくなってしまう、わけです。
 そこで「厳密には」、「日最高気温が」、と書いたわけです。

■ 法律の問題でも(クレイムの問題でも)、

「そんなふうに読むか?」

と思うようなハナシがないではありません。ただ、弁理士試験にでてくる法律の場合、「どういう読み方じゃ」と思うような例は一通り決められています。ですから、条文にある一々の語に突っかかって、「これはどう誤読できるだろうか!」みたいな話は受かってからゆっくり趣味でやって貰えばいいのですが、「一通り決められた」語釈については、配慮を払っておくべきではあります。
 いま読んでいる29条2項の例でいえば、基本的には「特許出願前」、「発明の属する…者(いわゆる当業者)」、などが語釈を要するところです。
 それぞれ、まぁ、もうだいたい見てきてしまいましたね。

■ あと、「前項各号…に基づいて容易に発明…」できた、というくだりは、個々の判断事例をベースに語られるべき部分ではありますが、あえて試験で一般論的なことを書くとすれば、特許庁の審査基準を抜き書きするのがベターでありましょう。審査基準には、こう書いてあります。すなわち:

進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。

「論理づけ」というのが一つのキーワードでして、審査基準には具体例が多数載っていますから、一通り参照してください。
 まァ、審査基準についてアレコレ書き始めると、話が終わらないですからネー。私のバアイ。

■ 29条2項について、あと落ち穂拾いをするわけですが、弁理士試験用に重要なことがスッポリ抜けていたので、それを書いときます。つまり、29条2項立法の趣旨、というやつです。
 つまり(青本的に言えば)

 通常の人が容易に思いつくような発明に対して排他的権利(特許権)を与えることは社会の技術の進歩に役立たないばかりでなく却ってさまたげとなるので、そのような発明を特許付与の対象から排除しようとするものである。

ということです。

■ この文言を少し整理して、論文試験風に味付けするなら、

 特許法は、新規発明公開の代償として独占排他的権利である特許権を付与する。従って、新規な発明であれば、特許権を付与するのが原則である。
 しかしながら、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、新規でない発明に基づいて容易に為しえるような発明に特許権を付与すると、日常的に行われるべき技術開発の活動に影響し、却って産業の発展の妨げとなり、特許法の法目的(1条)に反する結果となる。
 そこで、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、新規でない発明に基づいて容易に為しえるような発明に特許権を付与をしないこととした(29条2項)。

…的な話です。

■ 個人的に思うところを、ちらと述べれば、青本は「通常の人が容易に思いつく」とか言っていて、やや29条2項の本質に合わないような気がするのと、もう一つは、「簡単にできそうな発明に特許権を付与すると、日常的技術開発が妨げられる」とかいうんだけど、これはむしろ逆で、日常的に、自然的に進歩しちゃうな、という技術を、「容易に為しえる」技術ということにして特許権を付与しない、と合目的的に考えた方がよくって、「あー、なんか、かんたんそー」とか勝手に解釈して特許権を付与しないことに決めたのではいろんな意味で的はずれになっちゃうと思うわけなんだけど、こういう個人的見解は弁理士試験では絶対に書いてはいけませんー。

|

« 乱読日記[166] | トップページ | 特許的、林檎? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 条文を読んでみるはなし(29):

« 乱読日記[166] | トップページ | 特許的、林檎? »