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2010年8月27日 (金)

条文を読んでみるはなし(32)

とある新規合格者の祝賀会でのこと、お祝いの挨拶をするお偉い先生が、どういう話の持って行き間違いか、

「だいたい既に公知になってしまったら、もう特許は取れませんとかいうのはダメです」
「…1年以内ならアメリカへ出すという手もあります」

などと話し始めた。

▽ それはいいけどさ。国内の特許権がほしーときに米国でって言うんですか先生。それはちょっと…。しかも日本の弁理士の合格祝賀の挨拶ではないような…

■ 特許法第30条はいわゆるグレースピリオド(Grace Period)の規定です。
 「新規性喪失の例外」と、カタイ題名がついてます。

□ 第30条 特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。

2 特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 特許を受ける権利を有する者が政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官が指定するものに、パリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、第1項と同様とする。

4 第1項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明が第1項又は前項に規定する発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

全部で4項。第1項は、どういう場合に例外が適用され得るかを書いたもの。2項はもう一つの例。3項はさらに別の例。4項は例外適用を受けるために必要な手続を規定したものです。

■ 論点は結構山盛りで、例えば1項の「試験」にはどんな試験が入るのか、とか、「文書をもって」とはどういう意味か、とか…。
 基本的には経済性の試験は入らない(販売してみて売れるかを試した、とかはダメ)で、発明完成のために必要な試験とかで、実施すればどうしても公知になってしまうようなものなんかはこの試験に含まれて---とかいう話。
 「学術団体開催研究集会」については限定があって、特許庁長官の指定が必要。この指定はときどき特許庁ウェブサイトで改訂されました、という広告がでるので、ご存知の方も多いかと。
 手続的に---つまりは実務的に---問題があるのは、「特許を受ける権利を有する者が」のところで、発表者と発明者とが微妙に違うケース。例えば発表者がA,B2名なのに発明者はAのみとか、そういうケース。あんまり試験には関係ないですが、特許庁公開の「手引き」(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/reigai/30jo_tebiki.pdf)が参考になります。
 この「手引き」では、関係し得る者を、

(1)公開された発明の発明者
(2)公開された発明の公開時における特許を受ける権利を有する者
(3)特許出願人
(4)実際に公開を行った者

と列挙しています。一番簡単なのは(1)から(4)の全部が同一人Aである場合ですが、一般的に多いのは(1)、(2)、(4)あたりが同一人で、(3)は大学なり企業だったりするケース。まぁ、これもそれほど難しいことはありません。
 さっき書いた微妙なケース、というのは、(1)に含まれない者Bが(4)に含まれているケースで、この場合、

『Bは、当該公開された発明については特許を受ける権利を有する者ではなく、単に実験補助者の立場で公開者の中に名を連ねただけである。』

的なことを、4項に従って提出する証明書の「特許を受ける権利を有する者と公開者との関係について」という欄で書くことになります。

おっと、条文に戻って… とはいえ…

■ あとの部分は、3項までは、例えば3項あたりが長いだけで---こういう長いのは適当に略して読めばいいのは既に書いた通り。例えば、
特許を受ける権利を有する者が、

  • (1)政府等開設博覧会
  • (2)政府等以外開設博覧会*長官指定
  • (3)パリ同盟国/WTO加盟国領域内でその政府等or許可を受けた者開設、「国際的」博覧会
  • (4)パリ同盟国/WTO加盟国以外の国領域内でその政府等orその許可を受けた者開設、「国際的」な博覧会*長官指定

 に出品することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、第1項と同様とする。
という話で、書き下せば、

  • B*長官指定
  • C*国際的
  • D*国際的*長官指定

みたいに整理できるので、図式化すると案外簡単---後は読めば分かる的なところです。また、4項の手続もそれほど難しいことはありませんから、暗記事項。
 30条については That's all。

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