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2010年7月 6日 (火)

リニアとフラット

昨日は東京地方、もの凄い降雨でした。
所用で外出していた私は、この雨の影響を殆どモロに受けてしまいました(日頃の行いが悪いからだとか言うなー)。

▽ 豪雨の中を歩くのは疲れますね。
 帰ってきたところで暫く倒れました。

■ 本日のニュースの一つに、例のはやぶさのカプセル中に微粒子が発見されたというものがありました。これが小惑星由来のものならすばらしい快挙なのですが、川口プロジェクトマネージャーは会見で、
「予断を持たずに…分析したい」
と述べられていましたが、科学者らしい、慎重な態度だなぁと感じました。
 はやぶさについては、宇宙研に関係もふかい、山根一眞氏の単行本がでるようですが、これは「買い」なのか、どうか…。

小惑星探査機 はやぶさの大冒険
山根 一眞
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■ さて、話はまた、same old story になります。
 特願2005-251183(特開2007-068326)は、リニアモーターに関する発明ですが、リニアモーターと一口にいっても、いくつかの種類があるわけです。この発明では「ロッドタイプ」と言っていますが、軸型とも言われるタイプと同じかと思います。ロッドというかシャフト中に、複数の磁石をN,Sの配置方向を交互に変えて配列しておきます。このシャフトを取り巻くコイルを用い、コイルに流れる電流の向きにより生じる磁場とシャフト中の磁石との相互作用でシャフトを駆動するというわけです。
 一方、複数の磁石をN,Sの配置方向を交互に変えて配列したシャフトと、それに隣接して置いたコイルとを相対移動させる方式もあります。こちらはフラットタイプというのかな。

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■先の、特願2005-251183に係る発明は、ロッド2同士の間に磁気シールド板5を配し、ロッド2に内蔵された磁石(本件のマグネット7)により生じる磁界が隣接ロッド2内の磁石の磁界と相互作用しないようにしたもので、これによりロッド2同士の運動の独立性を担保して、各ロッド2の推力向上を図ろうというものでした。
 こんな課題、ロッド2をよっぽど近づけて配さない限り、気がつきもしないのがふつうですので、発明を聞いた後で「なぁんだそんなことなら思いつきそうだぜ」というのは、それこそ hindsight(後知恵)というものです。

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■ さて審決では、磁気シールドを備えたフラットタイプのリニアモーターが引用されたようです。前置審査の報告からみて、特開平7-107728号公報と、特開平11-43852号公報とかな、と思うのですが、あまり時間もないので、前者だけみてみます。
 特開平7-107728号公報開示の発明はXYテーブル装置に係るもので、X,Yの両軸方向へテーブルを移動させるためのフラット型のリニアモーターが採用されています。そして、これらのリニアモーターの間に、各リニアモーターから漏れ出る磁束を相互作用させないよう、磁気シールド板40が貼り付けられている、というわけです。

■ 審決の認定では、

フラットタイプリニアモータでは、マグネットとコイルが対向するように配置され、磁気シールド板はそれらと平行に且つ両者に跨るよう配置されるため、磁気シールド板は磁束の分路として作用することになるから、磁気シールド板は推力向上に寄与し得ない。

とされてはいたようです。しかし、その上で

ロッドタイプリニアモータのハウジング間に磁気シールド板を介在させると必然的に推力を向上させる構造となるから、引用発明のリニアモータを上記周知技術のロッドタイプリニアモータとすることに付随して、引用発明の磁気シールド板はリニアモータの推力を向上させることになるといえる。以上のことから、引用発明において上記周知技術を採用することにより…(中略)…本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

として、拒絶審決となりました。

■ しかし、この引例が示しているのは、

単に、フラットタイプリニアモータにおいては、磁気シールド板は、推力向上に寄与しないことを示しているにすぎない。

と裁判所は述べます。まさにその通りなのですが、審決はそこからありもしない「推力向上に寄与する」発明をひねりだしたわけです。裁判所は言います。

(引例には)推進力向上に寄与しないフラットタイプリニアモータに、ロッドタイプリニアモータを適用することの動機付けが示されているわけではなく、また、磁気シールド板が推力向上の効果が生じることを予測できることが示されているわけではない。のみならず、引用例1のフラットタイプリニアモータに周知技術であるロッドタイプリニアモータを適用すると、フラットタイプリニアモータにおいては磁束の分路として機能することから推力を減少させる方向で作用していた磁気シールド板が、逆に推力を向上させる方向で作用することを当業者において予測できたことを認めるに足りる記載又は示唆はない。

■ このほか、特許庁は裁判に入ってから、いろいろと言っていますが、裁判所はそれらを退けています。例えば、引例のリニアモーターに本件のようなロッドタイプのリニアモーターを適用したなら、奏される作用効果も同等だろうから、結局推力向上の効果は大したことがないはずだ、といいます。
 発明者としては「言いがかり」ではないかと思いたくなったのではないかとお察し致しますが、とにかく裁判所は、

本件における論証の対象とされる命題は、引用発明(甲1)において、フラットタイプリニアモータにロッドタイプリニアモータを適用することによって、磁気シールド板がリニアモータの推力を向上させることが、当業者にとって容易に想到し得たか否かという点である。この論証命題に対して、「引用発明にロッドタイプリニアモータを適用した場合の作用効果は、本願発明における作用効果と同等である」ことを理由として「容易に想到できた」との結論を導くことは、結論を所与の前提に含んだ論理であって、到底採用できるものではない。

としてこんな特許庁の主張を退けたわけです。

■ 特許庁側が構成する論理にもときとして誤りがあるのは、ある意味当然で(その割に代理人側にその種の誤りがあるときには徹底的に糾弾されるのはバランスが悪くないか、とは思いますが)、拒絶対応のときには、引用例の妥当性や引用例の組み合わせ妥当性などを考えることに加えて、特許庁側の構成した論理が妥当かどうかも検討しなければならない、ということでした。
 発明を見るときには謙虚な姿勢で、というのが基本ではあるのですが、ときとしてそれを忘れて拒絶することが使命と思ってるんじゃないのか、と思われる場合もあるので、強引な論理づけに引っ張り込まれないよう、用心することが必要かと思います。

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