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2010年2月24日 (水)

バラバラ ばなし

特許庁へ入ろうとして、弁理士のバッジを見せようと思ったら…

10022401

ぎょぎょ。バラバラ…

▽ ここんとこずっと箱ごと鞄に入れっぱなしだったからなぁ。いつの間にかネジが緩んだか。
 事務所へ帰ってから修理(…ってほどでもないですけれども)。

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…もとどおり。

■ モノクローナル抗体はバイオ産業の花形なんじゃないかと、私のような外野の人間は思うわけなんですが、いまではCHO(Chinese Hamster Ovary、かな?)細胞とかいうものを使っているようですね。ただ現代的な方法では、当初発明された方法(USP 4,350,683)なんかとは違って、ハイブリドーマは作らず、ファージディスプレイ法という方法で抗体遺伝子を得て、これをCHO細胞で合成させてモノクローナル抗体を得ているということのようです。
 なんかこう、わくわくするようなハイテク感ですが、それはさておき…。

[CHO細胞についてはこの本に詳細があるようです。ちょいとオモシロそうなので、今度読んでみたいかと]

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■ 某バイオ関連企業Xの従業員A,Bが、大阪大学の関係者C,Dとの間で、悪性リンパ腫に関する抗CD20モノクローナル抗体の開発研究というのをしていました。この従業員Aは、ハイブリドーマをつくり、スクリーニング(必要なものを取り出す作業)などの作業をしていたそうです。
 ところがA,Bらは、共同研究の成果についての特許出願イを、企業Xのみを出願人として行いました。これで困惑したのが大阪大学側です。大阪大学側ではこれは冒認出願(真の発明者やその承継人によらない出願)ではないか、と考え、対抗策としてC,Dを発明者とし、出願人を大阪大学とした特許出願ロを行いました。
 この特許出願ロについて、こんどは企業X側が

冒認出願だ!

と、言い出したというのが本件(平成21年(ワ)1652号事件)です。

■ このハナシ、かなり錯綜しています。「真の発明者」の認定も争点なので、まだ救いがあるといえばあるのですが、仮にイ、ロの出願が、当該共同研究においてA,B,C,Dの四人がいずれも「真の発明者」である発明に係るものであるとすると、

冒認出願 対 冒認出願

というドロヌマなものだからです。

■ 被告である大阪大学の主張の一つは、被告出願ロは、冒認出願イに対する対抗であり、従って違法性が除却されるというものです。本筋の主張として不法行為でないというのがありますから、違法性除却事由がある、という主張は形式的には仮定主張かと思います。
 しかしながら仮にAが発明者の一人であるならば、出願ロだって冒認出願に変わりないですからねぇ。

■ さて裁判所は「発明者」について、まず特許法70条1項(!)等を引いて、

 「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項)、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(同法70条1項)。
 したがって、発明者とは、特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想について、その創作行為に現実に加担した者ということになる。

と述べます。そのうえでAが行った発明完成までの作業に、

特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想の創作行為部分が含まれているか…

を考えよう、と言います。
 それで裁判所は、基本的にはCによる発明があったとはいえ、Aの意見も取り入れて発明が完成されたという事実を各種証拠から認定しています。ようするにAも発明者、ということです。あぁ、やっぱり「泥沼」でした。

■ つまり、この裁判所の認定によれば、そもそもの原告側出願イだって冒認なわけです。がんらいCの発明が含まれているわけですから。
 それで裁判所としては、

 たしかに、冒認出願をされた場合、特許を受ける真の権利者は、自己の権利を保全するために、自ら出願することが考えられる。もっとも、前記1(1) ないし(3)によると、被告P3(本記事著者注・本記事でのC)を発明者として記載せずにした原告出願は共同出願違反(特許法38条)にあたるというべきであるが、原告P1(本記事著者注・本記事でのA)を共同発明者であるとする以上、被告P3から特許を受ける権利を承継した被告大学が、原告出願と同内容の発明について、原告P1を発明者とせずに、原告P1から特許を受ける権利の承継もなく(この承継を認めるに足りる証拠はない。)、特許出願することもまた、同じく共同出願違反になり許されないと解すべきであり、違法性阻却事由となるとする被告らの主張は採用できない。

としています。私は、全面的にこの判旨を支持しますね。

■ もっとも裁判所は、事実関係を整理したうえで、

本件作業(本記事著者注・発明完成に至る作業)は、本件共同研究の中で、その目的達成に向けて、これに携わるメンバーが分担して行った作業のひとつであるところ、通常、共同研究においては、各人の担当した作業に係る個々の研究成果は、原則として、共同研究チーム全体の研究成果であり、共有になると考えるのが相当である。そして、本件において、本件作業の結果を、例外的に原告会社や原告P1個人に単独で帰属する研究成果とすることが相当であるような事情は窺われない。

と述べ、被告側の出願について、

本件共同研究に係る特許出願に関し、本件作業の結果を利用すること自体を、盗用であって不法行為としての違法性を有する行為であるとはいえない。

としています。

■ 結局、原告側の損害もあまり認定されず、10万円ほどの支払いを命じる判決となっているんですが(請求は合計100万円)、なんつーか、折角のいい発明が台無しになるような泥沼はあまり見たくなかった、というか、なんというか。
 とにかく、上記認定を受けてしまった以上は、原告出願イも共同出願違反を解消しなければなりません。一旦はバラバラになってしまった原告・被告ですが、雨降って地固まるというか、われても末に…というか、以降は友好関係を取り戻して、今後も良いものをつくってほしいものでありますが、どうなんでしょう。判決までいっちゃった、というのは。

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