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2009年12月24日 (木)

乱読日記[147]

森 毅・安野光雅 「すうがく博物誌」 上・下

すうがく博物誌 (美しい数学2+3)
森 毅
童話屋
売り上げランキング: 188839
おすすめ度の平均: 4.0
4 森毅のただならぬ飄々感を楽しもう!

特許の明細書の究極の読み手が裁判官であり、いっぱんに文化系で理科系の素養をもたない方々であるのは周知のとおり。そうとすると、明細書がそういった方々にも分かりやすくあるためには、少なくともある程度はリクツが通っており、そしてできるならやさしく書かれているほうがいい。

▽ 例外的に、そうでない場合、というのもあるのだけれども。
 いや。それは、こっちの話…

■ おおよそ数学は理科系の学問なのか、それとも文化系の学問なのか、という問いがあったりする。確かに計算に使われるという側面では理科系っぽいのだけれど、基礎的な部分になると哲学的、というか、もはや神がかった、ともいえる領域もあったりして、部分的には「これは神学です」と言われたら納得するところもあるのではないか。

■ まぁ、しかしそういう側面があることを知ってもなお、文化系の方々には数学というのは恐怖の対象であるらしい。
 ホーキングではないが、一般書としては、数式が一つでてくる度に、潜在的な売り上げ数が半減する、というくらいである。まだ読んでないが、売り上げを伸ばした「博士の愛した数式」というのには、数式がでてくるのかどうか、興味深いところだ。もし「愛した数式」が出ていたら、きっと本当の売り上げはその倍はあったことだろうから。

■ この本は、
数学に出てくるいろいろな言葉や考え方、そして興味深い問題をとりあげて、一つのトピックを1ページで完結させるという方法で紹介するものである。各ページには安野画伯の大胆だが、しかし繊細な、独特の雰囲気ある挿絵がついている。従って森先生によるトピックの説明は、実を言えば半ページにも満たない程度の短いものになっている。

■ ただし、数学が知りたいという理由でこの本を読むのは、どうだろう。むしろ、数学を楽しんでみたい、という向きにピッタリなんじゃないだろうか。例えば「三角関数」といえば、多くの人が sin、cos といった関数そのものから、正弦定理、余弦定理、加法定理、あるいは積和の法則というところに考えが行くのではないか。あるいは、オイラーの公式とか、そっち方面へ展開したり、または調和関数という言葉から球面調和関数のような特別な関数を思い出す人もあるかも知れない。
 しかし、この本での森先生の説明は、シャツの袖つけ部分を展開した曲線が三角関数のグラフになっていることを指摘し、シャツの袖つけを家庭科で教えるのに、むかしのように家庭科は女子だけ、としていると、

女子高校生だけが有利なので、家庭科は男女共修がよいという説もある。

といって、すこし茶化した説明をしている。
 だいたいが、こんなふうで、肩の凝らないふうの本になっているのである。

■ しかし、説明される言葉は高度なものもあって、例えば「不完全性定理」やら「ホモトピー」やらといったものも紹介されている。また、いっぽうでは、「数楽者」ということで、安野画伯自身を紹介する項目があったりと、ちょっと疲れた昼下がりにぺらぺらとページをめくりながら眺めるにはちょうどいい本だと思う。
 また安野画伯による挿絵も楽しい。ちなみに、この挿絵には、森先生と見える登場人物も現れる。よく似ているが、すこし若く見えるのは、この本がやや古い本だからか(初版は1982年。私が読んでいるのはそれの第4刷で1985年のもの)。
 そういえば、冒頭の amazon リンクでは、古い装丁のものが見つからず、たぶん上下巻をまとめた新装版をご紹介している。表紙の絵は、ふるいほうが味があるなぁとは思うけれども、中身はおそらく変わっていないだろう。

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コメント

『博士の愛した数式』には「博士の愛した数式」が数式で出てますよ。それが何かは、読んでのお楽しみ、ということで…。(有名な公式ですけど。)
ホーキングによる数式と売上の相関も、『宇宙を語る』か何かで読んで知っていたので、『博士の愛した数式』で数式が出てきたのを見たときは、チャレンジングな小説だと感心しつつも、売上が心配になった記憶があります。

投稿: eg | 2009年12月27日 (日) 07時32分

数式、でているんですか。

図書館での貸し出し状況がもう少し落ち着いたら読んでみようと思っております。

投稿: ntakei | 2009年12月28日 (月) 04時05分

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