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2009年11月17日 (火)

乱読日記[145]

福沢諭吉,「物理学の要用」

先日、NHK でリーマン予想の話をするというので、録画予約をして見てみた。

▽ フェルマーの最終定理が証明されてしまったから、次のナゾとしてリーマン予想を出してきたのかも知れないが、ゼータ関数の説明はすこしばかりムリがあったし、素数定理と関係づけようとしているのかとも思ったが、たしか素数定理自体は証明済みのはずで、今ひとつ食いつけなかった。ベリサインの金庫は興味深く見たけれども。

■ 今回乱読した文章は、青空文庫から落とした小文で、福沢らしい鋭い指摘が含まれている。
 福沢は、物理学を、経済学その他の学問とは違う特異な学問であるとする。というのも、経済学は例えば英国流と米国流と…などいろいろ道理があって構わないが、物理学は米国でも英国でも、もちろん日本でも同じ法則が成り立つわけである。そういうところが特異なところだと。

■ そこは
わかるんだけど、それは数学とかでも同じではなかろうかと思う。
 数学では証明の方法に複数のやり方があるではないか、というのは福沢の考え方に沿わない話だと思うが、仮にそう言ったとしても、物理だって例えばファインマンが
「物理学者は同じ問題について少なくとも6通りの解法を持っていなければならない」
という趣旨のことを述べていたとおり、一つの問題に複数の解法が成り立ち得る。

 いや。しかしそれは福沢の言いたいことと違うと思うんだ。福沢先生は法則自体をいうわけで、日本で正しい定理が米国で正しくない、といったことがない、というような意味なんだ。そしてそれはたぶん、「物理の」というよりは「科学(Science)の」というべきだ、と感じた。

■ さらに福沢は、日本では幸いにして魑魅魍魎の類の扱いは一部宗教家の預かるところで、一般人には関わりがなかったために、物理学(というよりおそらく科学)を受け入れる素地があった、とする。それに対して例えば中国ではそうではなかった、というのである。
 この外国についての福沢の主張はいささか短絡的な感じもするが、日本において物理学を受け入れる素地があったというのは、案外正しいかもしれない。もっとも、近世の日本人の物理学は---特に実用の面では---磁性体に偏っているようにも思えるけれども。
 西洋の学問を貪欲に取り入れようとした時代にあって、先進的知識を幅広く捉えた福沢諭吉らしい見解に思えた。

■ 話は変わるが、先日、電車で真向かいに座っていた女子高校生ふたりが、大声で化学の問題を話合っていた。
 いや。高度な話をしていたわけでは決してない。おそらく二人とも、ろくすっぽ授業を聞いていなかったのだが、試験があるかして、一応は一通り試験に出そうな問題をさらっておこうとしているわけである。その態度はなかなか感心だなぁと思いつつ、別段聞くつもりもなかったのだが、つい耳が…。
 双方が聞いた授業の断片をつなぎ合わせているのだが、なかなか正解法が導き出せない。ようは、化学式の係数の決定の問題なのである。例えば、水素(H)と、酸素(O)とを化合させて水をつくる、という場合、左辺にはHと、Oとがあり、右辺にはHOがある。そこで、Oの数から

+1/2O→H

みたいな式をつくり、係数を整数化して

2H+O→2H

にする、というような単純な話である。

■ ふたりを比較すると、どうやら向かって左に座っている子のほうが授業をすこしはまじめに聞いていた。

「…だからさ、左側にはOって書かなきゃいけないじゃん。そうしたら右側と数が合わないってことじゃないの?」

すると、いささかすっとぼけた右側の子がいう。

「えー、でも1/2とか。わけわかんない。」

そう言われると、左の子も自信がないらしい。「うー」などとうめいている。
 この変なおじさん(私)が行って教えてやろうかとも思ったが、面白いのでハタからの見物を決め込んでいた。
 左側の子が果敢にいう

「結局はさ、2H+O→2HOっていうのは納得がいくじゃん?」
「うんうん。」

という会話から、分かりにくいのはどうやら整数化の過程らしいと感じた。分数に対して何か差別感(苦手感?)を感じているのかな、とも思われた。と、そのとき、右側の子が「大発見」をした。

「これってさー。前に書いてある2と、後ろに書いてある2と掛けて4ってことじゃない?」
「えー…じゃ、これが1掛ける2(左辺Oのことだな)で2?、おー! 2掛ける2(右辺Hの部分)で4で、2掛ける1(右辺のO)で2だぁ」
「あってんじゃーん!!」

という具合で、係数を合わせる方法がついにわかったらしい。苦節10分弱。

ききかじりの授業から、ここまで解法を再構成できるのも、科学の受け入れ素地のおかげ? かなぁ。

■ とにかく、理解力があるなら、まじめに授業うけときゃいいのに、という話ではある。

 ちなみに、大学時代、塾講師を4,5年やった経験からすると、要するに「お勉強のできる子」っていうのは、過去にやった授業の内容をキチンと覚えている子のことのような気がする。あの子たちが折角の「大発見」をテストの後で忘却しないように願う。他人事だけど。

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