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2009年7月23日 (木)

乱読日記[134]

仁杉巖・監修、深澤義朗・編著,「新幹線保線ものがたり」

新幹線保線ものがたり―東海道新幹線、安全・超高速・快適へのあくなき挑戦
深澤 義朗 仁杉 巖
山海堂
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近頃は東海以西の顧客が少ないので、乗る機会がなくなってしまったけれども、東海道新幹線の乗り心地はほかのJR特急と比べても抜きんでているものがあって、それは高速運転の賜物なのかなぁと迂闊にも考えていたんだけど、これはまったくの誤解だった。

▽ 東海道新幹線は、東京駅から新大阪(それより西は山陽新幹線という)までの総延長 515.4km に亘る長大な距離を移動する鉄道である。

■ 在来線の軌道に比べ、若干広い標準軌。他の路線に先駆けて導入された車内信号、ATC、コンピュータ制御システム…。近年(平成9年)では最高速度270km/h、表定速度206km/h、輸送量は一日に36万人、1列車あたりの平均遅れ時分が0.3分という信じられない輸送安定性。東海道新幹線といえばそんな安定した指標がアタマに浮かぶ。
 しかしこの安定した数値は、本書で紹介されている保線を行うスタッフを含む、新幹線関係者の努力があってこそなんである。

■ 本書を読んでいると、この当然のような事実に、改めて気づかされる。
 東海道新幹線の線路は、砕いた石を敷いた上に枕木を置き、この枕木により支持される構造の軌道(バラスト軌道)であり、本書の著者によれば、

「賽の河原の石積みのごとき」

常時崩れ続ける構造物で、継続的な補修が不可欠である。
 開業時にその実績から採用されたバラスト軌道であるが、後にその維持工数の多さから、スラブ軌道としなかったことが悔やまれたとも言われつつ、しかしながら保線作業を行う各種機械の高性能化により維持コストは少しずつであるが低減しているらしい。
 なお、保線用の機械といえば枕木下に砕石をたたき込むマルチプルタイタンパー(Multiple Tie Tamper;通称マルタイ)等が広く知られていると思われるが、マルタイ自身の導入は驚くべき事に昭和29年にまで遡り、新幹線よりも歴史は古い。

■ 本書では、保線のための種々のノウハウのあらましが開示されている。
 内容は尽く専門的で、私のような一般人ではその内容を十分理解できていないように思う。誰か解説でもしてくれるならば聞いてみたい気もする。
 しかしながら、保線のための時間(間合)を確保する苦労から始まり、乗り心地の改善のため、時速220キロでは気づれないが時速300キロに近くなってくると、途端に著大な車体の揺動を引き起こす約1ミリの線路の出っ張りを見つけ、それを校正するといった話まで、内容は多岐にわたり、改善の努力がなみなみでないことは素人の私にも伝わってくる。
 この本から感じたところでは、どうも、

「高速になればなるほど云々」

という話ではなく、

「この速度域と、この速度域とではハナシが違う」

というようなもので、要するに速度に関係してパラメータが連続的に変化するようなハナシではないようなんである。
 こういうことは、実際に現場を知らないと、分からないことだろうなぁと思う。

■ おそらくは鉄道マニア(何度も書きますが私は鉄っちゃんではないですよ。ただ、例えばカシオペアに乗れるとか言われたら小躍りしますが)には堪らない本なんじゃないだろうか。専門家向けには、もう少しまとまっていてもいいのかなという気もしたが、「ものがたり」的に読める本として、関係者にも有益な本であるのだろう。
 そうそう。新幹線好きの方も是非

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コメント

『女子と鉄道』(酒井順子)によれば、「たいていの鉄道好き男性って、「自分はマニアではない」と必死に否定するものです」

投稿: eg | 2009年7月26日 (日) 08時46分

eg 様

いつもコメントありがとうございます。
うーん、それはきっと、「自分よりマニア」な人々を見てしまっているからか、または好みの方向が細分化されすぎていてマニアというにはあまりに知識が偏向しているとかではないかと。

私の場合、古い友人にマニアがおりまして、彼に引き比べ、私の場合は「症状が軽すぎる」と考えているものです。ただ、鉄道技術には結構関心がありまして、先日も、「CPUの創り方」のchatarou氏のサイト(http://homepage3.nifty.com/sudamiyako/)で、東武の博物館に興味深そうなものがあると知り、ウズウズしたりしてます。
…やっぱりマニアですかね?

投稿: ntakei | 2009年7月27日 (月) 03時26分

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