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2009年7月29日 (水)

ください、ばなし

今日もまた、あまり時間が取れないところですが…

▽ 本日は、ナナメ読みした審決から記事を拾おうという無謀なトライアルであります。

■ これは中小企業の社長さんに多いことかなと思うけど、新商品の商標を「これ」と決めてから事務所へやってこられて、

「これを登録してください。ぜひ。」

と仰る。ところが調査などをしてみると、これが登録可能性が低かったりするわけだ。で、その旨をお伝えすると、

「いや。もう、商品がでてしまってますし、名称変更は考えられません。なんとか登録してください。」

と、こうくる。
 で、同一の他人の登録商標があって登録可能性が阻害されている場合は、当該他人の同一商標が攻められないかを調べる。
 「攻める」といっても、直ちに無効や取消の審判をかけるわけじゃありませんよ、念のため。

■ まぁ、ファーストステップとしては、その登録商標の実際の使用状況なんかを確かめることになるかと思う。
 場合によっては、商品を取り扱っている小売店に電話して、

「XXという商品なんですが、おいていますか?」

なんてことを聞いてみる。ここで

「あー、それね。もう作られていない商品でしてね」

なんて話になればしめたものだからだ。
 まぁ、詳しくは他にもいろいろあるんだけれども、そうして外堀を埋めた上で、本丸(商標権者)に問い合わせをかけてみる。この問い合わせは、要するに、商標権の譲渡交渉に乗ってくれるかどうか、ということなんだ。
 めでたく譲渡交渉が成立すると、審査というリスクがなく、比較的安全に目的の商標権が手に入ったりする。ただ、所望の商標と相手の商標がまったく同一というのも稀だったりするし、価格や手続(対庁でないところ)を含め、譲渡交渉っていうのがまた、いろいろあるんだけれども、それは今回は省略。

■ 最近よく目にしたり耳にしたりする「クラシエ」という商標。何かから変わったことは覚えているんだけど、元が何だったか、忘れるんだよね、私の場合。

 その「クラシエ」、元のブランドは「カネボウ(kanebo)」である。この会社はそもそも鐘淵で創業し、明治26年に「鐘淵紡績」と社名変更、鐘のマークを商標として著名になった。そして平成13年、「カネボウ株式会社」に社名変更(ただし商標としての「カネボウ」はそれ以前から使われていた)、そして平成19年に「クラシエ」へ商号等を変更したという次第。企業も親子関係があったりするんで、社名やコーポレート商標などといろいろ紛らわしい表記をせざるを得ないが、要するに全体的に使用するハウスマーク的商標として、「Kracie」というのを選択した、ということ。

■ もちろん、そのときぬかりなく、「Kracie」商標について、取扱商品を指定した商標出願をしているわけなんだけど、どうもその一部(例えば「電気式歯ブラシ」など)は拒絶されてたらしい。その理由は他人の既登録商標の存在。つまり4条1項11号。相手方(引用商標)は、登録第4719444号。その商標はカタカナ「クラシエ」の標準文字。なお指定商品は数多いので、ご興味があれば公報をドウゾ。商標権者は三重県の輸送業者らしい。え? 輸送業者??

■ どうやら、この三重県の会社、関連企業で水の販売などもやっているらしくて、そこでいろいろ日常生活用品も取り扱っている模様。
 で、クラシエ側は、ここも一応はぬかりなく、必要そうなところ(「デンタルフロス」など一部指定商品)については分割して移転登録は受けていたみたい。
 しかしながら不服2007-35225号で、この「電気式歯ブラシ」に係る「Kracie」商標は拒絶審決になってしまった。審決の要旨は、いわく

「Kracie」と「クラシエ」は称呼類似、「電気式歯ブラシ」は、登録第4719444号の分割譲渡されていない部分に含まれる指定商品「家庭用電熱用品類」と類似する、従って商標法4条1項11号により登録できない、

というもの。まぁ称呼類似は首肯できる。指定商品間の類否は、生産部門、販売部門、需要者の範囲、用途、原材料などといった観点で評価するのが一般的だけど、審決はそれぞれについて検討して類似性を述べている。ま、仕方ないところかな、という雰囲気ではある。
 引用商標について全体の譲渡が受けられれば良かったんだろうけど、全体の譲渡が貰えなかったのは、やっぱり他方も使用中だったからなんだろうけれども、共有にもできなかったんだろうか。

■ 論点はほとんどないけど、当事者が大企業だけにちょっと気になった事件でした。

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