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2009年6月 9日 (火)

二重利得の問題

何を隠そう(隠すまでもないが)、古本屋というのが好きである。
事務所のある町田には大型の古書店、高原書店があって、ここも面白いのだが、学生時代からよく利用していて、機会があればいつでも立ち寄りたくなるのが、東京・神田の古書店街である。専門の古書店を巡っていると、時間を忘れることがある。

▼ こういう専門古書店の、ある意味で対極にある古書店が、ブックオフではなかろうかと思う。売れ筋の古書がそろっているのだが、古書というには十分キレイな本ばかりだ。敢えて古書店らしい特徴を挙げろといわれたら、品揃えのランダムさと、ほとんどの本が(一冊しかないからだろうが)平積みや面差しになっておらず、棚差しになっていることくらいか。

■ そのブックオフが不正経理問題で揺れていたとは知らなかったが、それはそれとして、今回は、ブックオフに対して、大日本印刷のグループと講談社ら大手出版社が出資することを発表したそうだ。
 この出資に対しては、種々の憶測が既に飛んでいるが、現実は(少なくとも表向きは)、

「出資したところで、まだ何をするかはわからない」

という状態のようだ。

■ まさかブックオフの一部コーナーに新本を置くというような、アイデンティティの崩壊を意味するようなことはしないだろうとは思うのだが、大日本印刷の常務は、一物二価を避けるために、新本と中古本とを識別させるため、カバー付け変え、ラベル貼付などをしたらどうか等と言っていて、これがよく分からない。
 そんなことをしたら中古品のコストが上昇して、中古市場まで縮小しちゃうんじゃないだろうか。

■ また、ICタグ付けなどという話もあるみたいだ。本一冊一冊のトレーサビリティを確保しようという話らしいが、これはどちらかというと、新本が一般書店で万引きされ、ブックオフへ転売されることを防止するという試みらしい。万引きした人物が直接転売をしているかどうかの立証は少々困難かも知れないとも思うのだが、目的はそれじゃないのかなぁ。どうなんだろうか。

■ そして講談社の常務がいうのが、著作権者への利益還元である。例えば著者への利益還元を考えているようだ。これについて、産経新聞では

「中古本に著作権は及ばない」というのが、ブックオフの主張だ。両者の隔たりは大きい。

とある。
 しかし一方で、東洋経済のサイト(http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/adb54b66ae21915c4e7fffdcbd1571ec/page/2/)では、ブックオフの取締役が、

「(著者に)何らかお返しをしたい」と同調。

とあって、何かそろってない。どっちなんだい?

■ いや、まぁ、それはとりあえず措くとして、特許、実用新案、意匠、商標といった産業財産権の場合、「消尽論」とか「用尽論」とか「消耗理論」とか(英語ならば、Exhaustion)いったものがあって、一度適法に販売されたものについて、各権利は及ばない、という話がある。その趣旨は、例えば特許の場合、平成7年(オ)1988号事件(いわゆるBBS事件)での最高裁の判断に曰く、

(1) 特許法による発明の保護は社会公共の利益との調和の下において実現されなければならないものであるところ、(2) 一般に譲渡においては、譲渡人は目的物について有するすべての権利を譲受人に移転し、譲受人は譲渡人が有していたすべての権利を取得するものであり、特許製品が市場での流通に置かれる場合にも、譲受人が目的物につき特許権者の権利行使を離れて自由に業として使用し再譲渡等をすることができる権利を取得することを前提として、取引行為が行われるものであって、仮に、特許製品について譲渡等を行う都度特許権者の許諾を要するということになれば、市場における商品の自由な流通が阻害され、特許製品の円滑な流通が妨げられて、かえって特許権者自身の利益を害する結果を来し、ひいては「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」(特許法一条参照)という特許法の目的にも反することになり、(3) 他方、特許権者は、特許製品を自ら譲渡するに当たって特許発明の公開の対価を含めた譲渡代金を取得し、特許発明の実施を許諾するに当たって実施料を取得するのであるから、特許発明の公開の代償を確保する機会は保障されているものということができ、特許権者又は実施権者から譲渡された特許製品について、特許権者が流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。

ということである。

■ 著作権のばあいも---(2)の後段部分は多少当てはまらない部分があるとしても---(3)二重に利得を得ることを認める必要性がないこと、を含め、同様の論理が妥当するのではないだろうか。
 そうだとすると、中古品から著作権相当料を頂戴しよう、という考え方にはちょっとしたムリが入ってる気がする。もっとも、古書店側が独自に定めた販売金額で売却した上で、そのうちの一部を著作権者に勝手に還元するというのであれば、それはそれで問題ないかも知れないが、価格に転嫁はされているわけで、その影響を受けるのは消費者だろうからなぁ。
 かといって、現状では新本は売れないわ、古本のために新本の売り上げは食われるわで、ジリ貧なんだろうし、「再販期間」という手もありそうだが、CDの再版期間のほうもうまく行ってないように見えるし…、解決案の策定までの道のりは混沌としているようだ。
 この際、著作権者に対する妥当な報酬ってのが何なのか、立法論も含めて根本から議論してみたらどうなんだろうか。

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