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2009年2月20日 (金)

ある附則のはなし

事情があって、昨日の更新が本日になってしまった。本日は、試験関係のネタの日なのだが、これは昨日分で、夜には試験関係ネタを書いてみようと思う。

▽ さて、特許庁のウェブサイトの見出しに、「料金が安くなる?」という項目があって、昨今の景気動向では見逃せない一行のような気がする。

■ ただ、ここで料金の免除等の対象になっているのは、「国」だとか「国立大学法人」やそのTLO等を除くと、「資力に乏しい」とかいう条件がつき、これは生活保護を受けてたり、非課税だったりする人や、法人税が非課税になってる法人などと、なかなか「狭き門」になる。
 ところで、最近では大学なんかと企業が共同で研究をした成果として特許出願をする、というケースは多くあり、例えば国立大学法人との共同出願の場合にもこの種の減免措置が受けられるか、というと、可能ではあるわけだ。
 で、特許庁のサイトによると、国立大学法人等が、平成16年4月1日から平成19年3月31日までの間にした出願については、審査請求料等が免除になるわけなんだが、当該特許庁サイトの表示では、「免除」とある下に「(産業技術力強化法附則第3条)」と書いてある。

■ この条文をちょっと長いが、引用する。

□ 産業技術力強化法附則第3条1項 次に掲げる特許権又は特許を受ける権利について特許法第百七条第一項の規定により納付すべき特許料、同法第百九十五条第一項若しくは第二項の規定により納付すべき手数料又は工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(平成二年法律第三十号)第四十条第一項の規定により納付すべき手数料に関する特許法第百七条第二項の規定、同法第百九十五条第四項及び第五項の規定(これらの規定を特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(昭和五十三年法律第三十号)第十八条第四項において準用する場合を含む。)又は工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第四十条第三項及び第四項の規定の適用については、国立大学法人(国立大学法人法第二条第一項に規定する国立大学法人をいう。)、大学共同利用機関法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構(以下この条において「国立大学法人等」という。)は、国とみなす。
 一 国立大学法人法附則第九条第一項又は独立行政法人国立高等専門学校機構法(平成十五年法律第百十三号)附則第八条第一項の規定により国立大学法人等が承継した特許権
 二 国立大学法人法附則第九条第一項又は独立行政法人国立高等専門学校機構法附則第八条第一項の規定により国立大学法人等が承継した特許を受ける権利(平成十九年三月三十一日までにされた特許出願(同年四月一日以後にする特許出願であって、特許法第四十四条第二項(同法第四十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定により同年三月三十一日までにしたものとみなされるものを除く。以下この項において同じ。)に係るものに限る。)又は当該国立大学法人等が当該特許を受ける権利に基づいて取得した特許権
 三 国立大学法人等が平成十九年三月三十一日までに当該国立大学法人等の大学等研究者から承継した特許権若しくは特許を受ける権利(同日までにされた特許出願に係るものに限る。)又は当該国立大学法人等が当該特許を受ける権利に基づいて取得した特許権
 四 承認事業者が国立大学法人等から譲渡を受けた特許権若しくは特許を受ける権利(前三号に掲げるものに限る。)又は当該特許を受ける権利に基づいて取得した特許権(平成十九年三月三十一日までにされた特許出願に係るものに限る。)であって、当該国立大学法人等が当該承認事業者から承継したもの

 長いので、要所だけ読んで貰えればよい。要するに、各号の条件を満たす場合は国立大学法人等は、国とみなすよ、という話である。こういう国立大学法人等を、『「国みなし」の者』などと読んでいるウェブページも、特許庁にはある。で、条件は各号に展開されているわけだ。
 ここでちょっと注目していただきたいのは、第三号(以下では附則3号と略して呼ぶ)の条件であって、特に、特許を受ける権利に係る部分である。
 第三号では、「国立大学法人等が平成十九年三月三十一日までに当該国立大学法人等の大学等研究者から承継した…特許を受ける権利」とある。ここで特許を受ける権利の承継元が規定されているのが少し曲者である。

■ こういうケースを考えてみる。
 ある民間の企業Aの従業者aが、国立大学法人Bの研究者bと共同で発明をした。出願については、料金免除があることなどを考慮して、国立大学法人Bが単独で出願をする。こういうケースは比較的多いらしい。
 この場合、研究者b→国立大学法人Bの承継関係は附則3号の要件を満たしているのに、民間企業の従業者a→国立大学法人Bの承継関係は附則3号の要件を満足していない。このときどうなるか。
 結論を言うと、

免除の措置は受けられない

ことになるのである。
 また、この承継関係の不備は本来ならば治癒不能なので、料金支払い以外の手続きが考えられないところだ。

■ いやーわかりにくいし、困ったものだなぁということではあるんだが、実はこの話には続きがある。
 今回の件は、特許庁の方から聞いた話なのであるが、この減免制度が始まって以来、特許庁ではこの種の手続ミスにより補正指令(料金払えの指令)が相次いだそうである。一方、出願人側からも「何とかならないのか」と声があがった。それはそうだろう。出願料金くらいならまだしも、審査請求料も減免にならないのだから。
 で、特許庁は対応策を打ち出した。その対応策というのは、

民間企業Aの従業者aが特許を受ける権利の放棄書を提出する

というものだ。放棄の時点は出願より前の時点とする必要があるが、この手続により、一応、承継関係が明確になって治癒されたと考えるらしい。
 やや苦肉の策っぽいが、料金支払いしか選択肢がなくなるよりよい。また出願人が従業者aでない以上は従業者aとしても特許を受ける権利を放棄しても別段問題にはならない。

■ なお、出願の時点で、企業Aと国立大学法人Bとの共同出願になっていれば、a→A、b→Bの承継関係と考えられて、セーフになる。この場合は、企業Aがその持ち分に従って、手続料金を支払うということになる。
 たいそうわかりづらかったらしい、という特許庁の方のお墨付き(?)らしいので、念のため、ここで注意喚起でした。

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