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2009年1月17日 (土)

[弁理士試験]用語使い[2]

またも、アクセス履歴からの用語の問題を拾ってみようとおもいます。

▽ 今回は、かなり初学者向けになりそうです。

■ ここ数日、続けて検索されたものから。
 どういうわけか、「指定官庁」と「選択官庁」というのをペアで検索してくるケースが見受けられました。これらはいずれもPCT(特許協力条約)の言葉です。ですから、これらの語の意味を知るには、PCTの出願のことを知らないといけません。
 PCTは、ごく簡単に言ってしまえば、出願の方式を統一する条約です。PCTでは、「国際特許出願」を一つすれば、締約国全体に、その出願日に出願したと同じ、仮の効果が生まれます。権利が欲しい国に対しては、別途の出願をすることなく、「国際特許出願」を、当該権利が欲しい国の出願に「移し替える」(国内移行)処理をします。この国内移行の処理例としては、翻訳文の提出などがあるわけです。
 さて、さきほど、PCTでは国際特許出願時に全PCT締約国へ出願したのと同じ効果が生じる、と言いました。ところが、つい数年前のPCT改正まではそんなことはありませんでした。どのPCT締約国に出願したことにしてほしいか、出願時に「指定」することが求められていたのです。つまり、ここで指定される国が「指定国」で、当該「指定国」で国内移行した出願を処理する官庁(たいていはその国の特許庁)が「指定官庁」ということになります。
 現在のPCTでは、全締約国が予め指定された状態にある(全指定状態)というわけです。もっとも、実際に国内移行の手続きをしなければ、出願したという効果は消えていきますので、そういう形で指定解除をするようにしたわけです(例外もあり、例えば日本国を指定から除外するなどのオプションがあります)。

 さて、では「選択官庁」とは何か。「選択官庁」は、「指定官庁」のうち、特に出願人が選択した官庁、ということです。何のために選択したか、というと、それは「国際予備審査」の結果を利用するよう選択するわけです。
 PCTの手続き上、出願人は、「国際予備審査」という予備的な審査を行わせることができます(有料)。ただ、この「国際予備審査」の結果を、すべての指定官庁で利用すべきかどうかはわかりません。そこで出願人が予備審査の結果を利用するべき指定官庁を選択します。そうして選択された指定官庁が「選択官庁」です。

 ところで近頃では、「国際調査」(国際出願料金に含まれているという意味で強制的に行われ、無料)の内容が「国際予備審査」の内容にとても近いものになってきました。また、従来は国際予備審査を請求しなければ、優先日から20月以内での国内移行を求められている一方、予備審査が請求されると、選択国に対しては優先日から30月以内で移行を行えばよいようになっていました。しかし最近は、予備審査の請求がなくても30月内の移行を認めている国が多く、予備審査の意義が薄れています。

 このように指定官庁と選択官庁との違いは、かなり明らかなので、論文でこれを間違えて書く、ということはあまりないことでしょう。

■ はっ。そうだ。PCTといえば、「優先日」という便利な語が定義されているのは、このPCTなんですよね(2条(xi))。

□PCT2条(xi)「優先日」とは、期間の計算上、次の日をいう。
(a) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴う場合には、その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b) 国際出願が第八条の規定による二以上の優先権の主張を伴う場合には、それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴わない場合には、その出願の国際出願日

まぁ、いわば最先の出願日というわけですが、このように「優先日」という観念はPCTで定義されるものなので、特許法単独の問題で「優先日」という語を使うのは実はおかしなことになります。まぁ、国内優先の基礎となった出願のうち、最先の出願の出願日、とでもいう冗長な書き方を要するでしょう。もっとも、ここで「優先日」の語を定義してしまえば、後でも使えなくはありませんが、論文式試験では敢えて自分で用語を定義するような書き方だと、採点が難しくなる場合もありえるような気もします。

 つづく…のかなぁ、このネタ。

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コメント

「国際出願」と「国際特許出願」との違いを理解されていないようですね。それと、「指定国の指定」の説明も誤解を招きます。初学者向けの基本的な用語の解説なんですから、分かり易さのために正確性を犠牲にしてはいけません。

投稿: 通りすがり | 2010年10月27日 (水) 13時43分

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