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2009年1月10日 (土)

[弁理士試験]用語使いの問題

金曜日は、弁理士試験関係のネタ、と決めていたのに、吉藤のシリーズを終えてしまうと、次に何をしたものか迷ってしまい、結局、日が変わってしまいました。

▽ 精神論的な話でお茶を濁すのは好きじゃないですし、何か役に立つことがあればいいんですが。
 と、思っていたら、アクセス履歴に気になるものを発見。本日は、これで行くかなぁ…。

■ もう、何遍も書いてきてるんですが、これで検索してこられる方は、結構多いのです。そのキーワードは:

「権限、権原、違い」

権限と権原との違いを知りたいのでしょう。「権原」は、法律のことでしかお目にかかることがありませんので、無理もないのですが。この相違を書いた記事は、もうだいぶ前のものになってしまったので、記憶を新たにする意味でもう一度、おさらい。
 「権限」(Power)は、ある者の行為が有効になる「限度」というような意味です。代表的なのは、代理人の権限で、委任状(Power of Attorney)などの契約で定められる限度を意味しています。出願の取り下げについての権限が与えられていなければ、優先権主張出願の代理で問題が発生するように、行為が有効になる限度をいいます。
 一方で「権原」は、法律上の行為等が有効になる根拠となる権利など、法上の原因、根拠を意味します。例えば、通常実施権者は、通常実施権という実施の「権原」を有しているということです。通常実施権者の行為が「有効」であるとか「無効」であるとかいう議論は(通常実施権との関係では)ありませんから、通常実施権者の「権限」がどうの、という話はおかしくなります。
 両者は似ていて、あまり関係のない言葉なのですね。
 法律の用語の場合、こういう紛らわしいものがありますので、「誤記?」と思っても、知らない単語は念のため、法律辞典を引いた方がいいかも知れません。

■ そういう意味で、論文上などで、気をつけた方がいい表現というのもないではありません。
 ありがちなところでは、「標章」と「商標」との相違、というのがあります。
 知ってるよ、と言われそうですが、また、おさらい。
 商標法2条では、まず、「標章」を定義します。標章とは、

文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合

です。そして、この標章のうち、

1.業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
2.業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(1.に掲げるものを除く。)

を、「商標」といいます。
 従って、国際連合のマークは、国際連合を表示する「標章」として4条1項などに記載されます。何人かの商品について使用されるようなものではないから、とでも説明できるのではないかと思います。
 そこで、例えば、平成18年度の本試験、商標法の論文式の問題文を見てみます。ここでは、株式会社CBAコーヒーという企業(甲)が、

「CBAコーヒー」の名称で喫茶店を運営している

とあります。
 一方、「家具」と「マグカップ」とを指定商品とする「CBA」なる「商標」の登録を求める出願を、乙氏が行うことになっています。
 こうして見ますと、乙氏の「CBA」については「商標」と明記される一方、「CBAコーヒー」の方は、「名称」だとか、「文字」だとかと書かれていて、「商標」であるとは書かれていません。
 ここで、解答として

「CBAコーヒー」の商標を付した、甲のマグカップが…

などと書こうものなら、違和感がありませんでしょうか??

■ そういえば、少々前に、麻生総理が、「株券を満期まで持っている人」というような発言をして話題になったように記憶しています。
 麻生総理はひょっとして、経済の仕組みをなにも知らないのでは、という話になってました。
 論文でも、細かな言葉遣いの相違が採点のポイントになることがあるわけで、用語の使い分けというか、用語の正確な運用が求められる(そうでないと、その用語が表す概念を理解していないと判断されてしまう)わけです。似たような話がまだあると思うのですが、これもシリーズに…できるかなぁ??

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コメント

竹居先生
権限と権原の使い分けについて、次の用法でよいでしょうか?

1.専用実施権を設定した特許権者には、
 その設定範囲内では他者に通常実施権を許諾する『権限』はない(68条ただし書)。

2.よって、その範囲内での実施『権原』を望む者は、
 専用実施権者に許諾を求めるべきである(77条4項)。

3.ただし、専用実施権者には、
 単独で他人に通常実施権を許諾する『権限』はないので、
 特許権者の承諾を得る必要がある(77条4項)。

4.したがって、専用実施権者が特許権者の承諾なく
 許諾した通常実施権は無効であり、
 通常実施権の許諾を受けた者の業としての実施行為は、
 『権原』なくなされた行為として特許権の侵害となり、
 差止請求等の対象となる(100条以下)。

(『権限』『権原』ごとに段落を分けました)

投稿: おっとせい | 2009年1月10日 (土) 14時12分

コメントありがとうございます。

お書きの用法でも間違ってはいないと思いますが、こういう用語はあまり使いすぎてもよいものでもありません。基本的には4番目の例の使い方以外では、あまり「権限」や「権原」という用語を使う必要がないのではないかと思います。
例えば1番目の例では、「権限」がない、というよりも、後から通常実施権を設定することは、専用実施権の設定登録に関する契約違反という話ですから、厳しい採点者の先生では、「権限」という用語につっかかってくる可能性もあるかと思います。
用語については、要は、正しい使い方をすることで、種々の用語を積極的に使うべきかというと、そうでもないかと思います。

投稿: ntakei | 2009年1月14日 (水) 02時34分

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