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2008年11月18日 (火)

乱読日記[108]

原島広至,「東京今昔散歩」

東京今昔散歩―彩色絵はがき・古地図から眺める (中経の文庫 は 5-1)
原島 広至
中経出版
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おすすめ度の平均: 3.0
3 安くて、しかも詳しく、持ち運びにもいい

都内を散歩するのが、昔から好きである。高校の頃は、高校のある吉祥寺から実家のある板橋区ほうまで数時間をかけて歩いてみたりということをしていた。大学時代は神田の古書店街界隈から竹橋あたりを抜けて、東京駅の方まで歩くのが好きなコースであった。

▽ 今は、さすがに数時間歩くことはなくなってしまったのだけど、特許庁から国会図書館までの道のりだとか、虎ノ門から新橋まで歩いてみたりとか、散歩代わりのコースを歩くことはよくある。

■ 平岩弓枝さんが昭和 48 年以来書き続けておられる、「御宿かわせみ」という時代小説のシリーズがあって、その名の「かわせみ」なる宿は、江戸の大川端にあるという。大川は現在の隅田川で、大川端とは、通称、大川橋(正式名は吾妻橋)の西詰あたりをいうらしい。いまでいうアサヒビール本社の対岸側、銀座線浅草駅の4番、5番出口あたりである。
 現在の状態は東京メトロの浅草駅案内http://www.tokyometro.jp/rosen/eki/asakusa/index.htmlで、「駅周辺の地図」というのをクリックし、当該クリック操作によりポップアップして出てきた画面で出口の4番あたりをクリックしてみればよい。
 本書でいえば、72ページの絵(大正時代の吾妻橋)と73ページの写真(現在)のあたりだろう。
 時代小説を読んでいると、いまでいう、どのあたりなのかな、と気になることがしばしばあるもので、本書は、そういう目的にも合っている。

■ 本書は、全ページがカラーという豪華な文庫本である。
 古地図と現代の地図とでは、対比がわかりやすい部分もなくはないが、必ずしも対応する場所が分かるとは限らない。それは、道路や交差点が微妙にずれていたり、鉄道が巡らされていたり、あるいは川が暗渠にされたり、海が埋め立てられたりという事情による。
 そのために、例えば池波正太郎先生の「江戸切絵図散歩」を見ていても、

ははぁ、だいたいあのあたりが、XX氏の住居だったのだな、

とかそんな大ざっぱなことがわかる程度である。
 本書では、単に古地図と現代地図とを対比して紹介しているのではなく、そこから一歩踏み込んで、地図上のある地点から描かれた江戸のころの古い絵画や、明治以降の絵はがきの絵や写真、そして、現代の写真、それぞれの絵画や写真に描かれた建物などを模式図で説明したものなどを組み合わせつつ、地図の対応関係や、そこから見た風景の変化がわかりやすく紹介されている。
 いままで、こういった紹介をした本はなかったのではないだろうか

■ 収録されている場所は、亀戸、向島、浅草、両国、万世橋のあたり、上野、皇居周辺、日本橋、丸の内、銀座、霞ヶ関、赤坂、四谷、芝といったあたり。そもそも現在の都心である新宿などは、江戸のころはただの田舎だったわけだから、対比のしようもないといえば、ない。
 そういえば、四谷三丁目駅近くのホテルJALシティのロビーには、四谷付近の古地図が掲げられていたが、昨年改装してからは行っていないし、どうなったかな。あ、いや、そのホテルJALシティのロビーの地図には、たしかに新宿御苑が内藤氏の所有だったことが図示されていたと記憶しているのだが。

■ いやいや。話がそれた。本書に戻る。
 江戸はそもそも水の町で、水路が発達していたのである。で、大昔の秋葉原あたりには、水路が引かれていたという話を聞いたことがあって、このたび、本書の万世橋界隈の地図で確認してみると、隅田川に通じる運河らしきものがたしかに、現在の清洲橋通りより秋葉原駅よりに伸びている。残念ながら、その点について本書では詳しく説明はされていないが、各地で川が埋め立てられ、地名に橋の名前だけが残っていたりという状況はいろいろと紹介されていて、印象的だった。
 また、本書によると、万世橋には、万世橋駅という私鉄駅があったという。そんな私鉄線の存在もこの本で初めて知った。万世橋駅前には、広瀬中佐像と杉野兵曹長の像(このお二方のお話についてはここでは割愛させていただくが)があったといい、その跡地が、あの交通博物館だったという。なお、その交通博物館も、現在では営業をしておらず、「跡」となってしまっている。

■ 写真や絵を眺めていると、ふと、そこへ行って実際に見てみたくなるような、散歩に持ち出してみたくなるような、そんな本である。

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