« 弁理士登録ばなし | トップページ | 面談の部屋、むだばなし »

2008年11月 7日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(31)

先週は、Bilski 判決があって、一回休みにさせて頂きましたが、今回はちゃんとやろうと思います。「吉藤を読む。」
今週は、補正に関係する部分の落ち穂拾い。そして次に、分割・変更と行きたいわけです。

▽ しかし、ここへ来て最大の問題が。
 吉藤先生の本が。
 部屋の整理をしていたら、1.2、3メートルに積み上げた書籍柱の最下部に(さっき、取り出しました)。

ベルメゾンネット

■ 落ち穂拾いというのは、「補正規定の改正史」ともいえる部分です。
 試験には役に立たない部分ではありますが、補正というのは改正が最も激しい部分でもあり、各時点での法律の動向を反映して、おもしろい部分でもありますので、「落ち穂拾い」的に見ておきたいと思ったわけです。
 そもそも吉藤先生の本には、比較的詳しく書いてありますしね。

■ ただし今回は、吉藤先生の本をちょっと離れまして(せっかく掘り出したのに)、法改正を制度別に解説した、「平成特許法改正ハンドブック」を参考に補正制度の改正経緯を「散歩」してみたいと思います。

 この散歩のはじめの風景には、「出願公開」という制度がありません。と、いうことは出願審査請求の制度もありません。全件が出願順に審査されておりました。審査官が特許をしてもよい、という心証を抱くに至りますと、登録査定、ならぬ、出願公告ということが行われます。
 出願公告は、出願書類を公衆の縦覧に供し、公衆による審査を可能とする制度でありました。この期間のうちに、登録が行われることに文句のある公衆は異議申し立てというのをすることができたわけです。
 また、国内優先という制度もなく、補正の内容的制限は「要旨を変更してはいけない」というもの。要旨変更というのは簡単にいえば、明細書の中に正確な文言がなくても、当該技術思想が表現されていることがわかれば、補正によりクレイムアップしてよいよ、という程度に緩やかで、細やかな判断です。なお、要旨変更だと認められると補正が却下され、却下に対しては不服審判(補正却下不服審判)や、補正却下後の新出願の制度(補正時に、補正後のクレイムで新出願をしたものとみなす制度)がありました。
まぁ、そんな時代。

■ そこへ、「出願公開」制度が導入されます(昭和45年)。と、いうことは出願審査請求の制度というのも導入がされることになります(なぜ、この二つが関連しているか、それは以前に書きました。また、例のアレも含めれば、これらは三位一体ともいえる制度なのでした)。それに対応して、補正のできる時期が改正されます。

補正期間の原則:出願の係属中
明細書・図面については、出願から1年3月経過後、出願公告の決定謄本送達前までにおいては、

  • 審査請求と同時
  • 他人による審査請求の通知があってから3月以内
  • 拒絶理由通知の応答期間
  • 拒絶査定不服審判の請求から30日以内

明細書・図面について、出願公告の決定謄本送達後は、公告後の補正の規定による。

--- なぜ、1年3月か。このように、「出願から1年3月」という場合、特許法では、たいがい公開を見込んでの期間設定であるわけですが、ここでもその通り。公開時の明細書等を確定させる意味があったのでしょう。

■ 昭和50年。公告後の拒絶査定に対する審判のときにも補正ができることを明確化。そのとき、補正の目的として、

  • 特許請求の範囲の減縮
  • 誤記の訂正
  • 明瞭でない記載の釈明

という事情に限るという内容的制限が入ります。これは「公告」が事実上、権利の確定を意味するものであることから、特許の与えられた権利の範囲を弄るべきでない、という考えがあったものでしょう。
 さらに昭和53年にマイナーな改正。その後の昭和60年には、国内優先権の制度が導入され、要旨変更と判断された補正却下に対する新出願の規定が一斉削除されます。そういう場合は「国内優先」を使いなさい、という意味です。

■ ビッグな改正はその後の平成5年。
 内容的制限が大幅に変更され、「要旨変更」から、

「出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内」

という現在のものと同じ表現で補正の内容的制限が規定されました。問題なのはその運用でして、審査基準に、

「直接的かつ一義的に導き出せるもの」

とされてしまったわけです。この一文は欧米の「obvious」から来ていると説明されていましたが、厳しすぎるのでは、という批判もわずかにあったように記憶しています。
 とにかく「直接的かつ一義的」ですから、例えばクレイムに「弾性体」とあってこれを補正したいとして、明細書において、当該弾性体の例として弦巻バネだけが記載されているとすると、クレイムの「弾性体」を「ゴム」に補正することはできず、「弦巻バネ」しか書いてないんだから、「弦巻バネ」としか補正できない、というような、そんな話。
 「弾性体」にはゴムが含まれているのは技術常識どころか、一般人の常識であるとしても、この補正は認められません、ということだったのです。
 また、この平成5年において、first action と、final action とを分ける制度が入りました。いわゆる「最後の拒絶理由通知」というやつです。文言がややこしいのですが、前のアクションに対して出願人がした補正によって、通知する必要が生じた拒絶理由は、たいがい「最後の拒絶理由通知」になります。審査官の方によっては、補正の結果、前の拒絶理由が維持できなくなると、新たに「最初の拒絶理由」を通知してくださる方もおいでです。

■ そして平成6年。出願公告制度が廃止になります。

「ニッポンのトッキョ制度、登録までに時間がカカリすぎマース」

と諸外国から突っ込まれた、というのが改正事情のようですが、とにかく早めに登録をさせ、その後に公衆審査を行わせる(登録後異議)ことにしたわけです。
 また、これと併せて、補正の時期について、1年3月という期間設定を取り除いて(要約書は公開が目的なので相変わらず1年3月までに据え置くのですが)、最初の拒絶理由の応答期間までは、出願当初明細書等の範囲で補正可能、というだいたい現状と同じ補正制度ができあがってくるわけです。
 そして平成15年には、「直接的かつ一義的」の審査基準も改められて、欧米の obviousness に近い運用がされるようになってきています。

■ このように、補正制度は、特許法の改正の歴史とともに、改正に影響されてその実体を大きく変動させてきた制度なわけです。吉藤先生の本の場合、この背景事情を分かったものとして記載していると思われるフシが感じられまして、「吉藤を読む」としては、このような背景事情とともに一度概観しておきたかった、というわけです。
 ま、ここまでは受験に関係のない、ほんとの「むだばなし。」

■ では、次の本題です。「出願の単一性。」
 おっと、かなり長くなってしまいました。今回は落ち穂拾いだけで、続きはまた来週ということで…(なんだかなぁ)。

|

« 弁理士登録ばなし | トップページ | 面談の部屋、むだばなし »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [弁理士試験]吉藤を読む(31):

« 弁理士登録ばなし | トップページ | 面談の部屋、むだばなし »