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2008年6月19日 (木)

率の問題

コピーワンスだの、ダビング10だのと、ディジタル放送の開始---というかアナログ放送の終了を前にして、いろいろヤヤコシイ用語が飛び交っている。ダビング10の導入がもめている件については、wikipedia に、椎名和夫・日本芸能実演家団体協議会常任理事がいろいろと反対したかのように書かれているのだけれど、ここ(http://xtc.bz/index.php?ID=488)の先のリンクを読んでみる限りでは、著作権団体と消費者側とメーカー側と放送局側との四者間の争いの決着がつかないという話のようである。別段、椎名氏が特に強硬なのでもなくて、むしろ権利者としては相応の主張をしている気がするが、本当に補償金問題と絡んでるんだろうか。そうだとすると、あれ(私的録音の補償金)は、ちゃんと合理的な額が権利者側に渡っているんだろうか??

▽ とにかく、先頃、「批判されている」というカナダの著作権法改正の話といい、各者の思惑のためにまとまりが付かない状況は日本だけではないようである。
 さて、それとはあまり関係のない事柄ながら、今月16日、MPEG-LAが、サムスンが、デジタルテレビジョン方式の一つ、ATSC についての特許権侵害があったとして、ポラロイドとウエスチングハウス・デジタル・エレクトロニクスとを相手取って、訴訟を起こしたと発表した。ただ、これ、対象となる特許権がプレスの情報等からは必ずしも明らかでないし、相手方製品も明らかでないから、話題としてはこれだけ、なんだけれども…。

■ ATSC
 大学時代の知人が、あるとき、PAL 方式のビデオを観る方法はないか、と相談してきたことがある。日本の映像信号形式が NTSC であるのに対して、中国やヨーロッパでは PAL と呼ばれる形式なので、PAL 形式の映像信号を記録したビデオカセットをそのままVCRにセットして、日本のテレビに映そうとしても、これを観ることはできない。途中で PAL→NTSC 変換装置などをかませることになる。
 変換器を買えそうな場所を案内しつつ、いったいぜんたい、どうして PAL のビデオなんか買って帰ってくるんだ、というと、彼は、

「ヘヘヘ…」

と笑っていた。「ヘヘヘ」、じゃぁないよ。助平が…。

 いや、これは余談だった。アナログ放送に PAL や NTSC があるのと同様、デジタル放送にも映像信号規格があり、ATSC はその一つ。アメリカや韓国、台湾などで採用されている方式である。ちなみに日本は独自規格の ISDB。ヨーロッパ、中国は DVB と、バラバラだ。

 そのような ATSC に関する特許だからか、MPEG-LA 内でのライセンシーの数は、他の特許群と比べると、明らかに少ない。ただ、米国内で通用する映像機器を作ろうと思えば、今後、この権利のライセンス取得はどうしたって必須であろう。
 どうしてポラロイドやウエスチングハウスがライセンシーになっていないのか、それはよくわからないのだが。

■ 訴訟地
 米国の訴訟法については、以前、米国の某巨大法律事務所にいた「有名人」、L氏の講義で、ちょっとばかしカジったのであるが、訴訟管轄の問題については、メモを見ないともう分からなくなってしまった。そしてメモは事務所に置いてある。どういう規定だったかなぁ。
 今回の場合、サムスンは、デラウエアの地方裁判所へ出訴したようである。なお、同じ相手に対して、別の権利ホルダーの Zenith Electronics, LLC も出訴しているようだが、こちらはテキサス東部地方裁判所だという。

 いや、実をいうと、PWC が先頃発表した、「2008 Patent Litigation Study」という資料(http://www.pwc.com/extweb/pwcpublications.nsf/docid/ebc144cf6220c1e785257424005f9a2b)に、各地の裁判所ごとのトライアルの所要期間のメジアン(Median time-to-trial)、認定された損害額のメジアン(Median damages awarded)、トライアルの成功率(Trial success rate)、及びサマリ・ジャッジメントの成功率(SJ success rate)が集計されているのである。
 この資料によると、デラウエアは、迅速さでは第6位(平均1.89年)となっている。また、損害額は10位、トライアルの成功率は62.5%で9位、サマリ・ジャッジメントは18.0%で8位となっている(テキサス東部は、それぞれ 1.79年で5位、損害額で6位、トライアル成功率が71.9%で3位、サマリ・ジャッジメントは8.3%で16位である)。たしか、訴訟をどこの裁判所にするかも、原告側の思惑があってのことだったと思うけど(そういう意味ではテキサス東部は、ロケット・ドケットだったかな?)。まぁ、裁判所によっては、有意な差がありそうな気もするので(そういう意味では、この資料はちょっと統計情報としては出来が悪く、検定がちゃんとされていない)、たしかに訴訟を起こす裁判所をちゃんと選ぶ必要があるんだろう。

■ ちなみに、米国全体で見ると、2.16年で、$1,808,578、成功率はトライアルが57.0%(!)、サマリが18.9%。結構勝訴率が高いんだ。
 ちなみに同資料によると、米国では、ここ7年ほど、権利者の勝訴率が(トライアル、サマリを併せて)約40%の程度で推移しているらしく、比較的権利者が勝ちやすい構造になっている模様だ。

■ この結果を、和解での決着も多い日本での結果と直接比較するのは間違っているとは思うが、例えば司法統計(分かりにくいんだ、これが)から日本での数値(平成18年度)を拾ってみる。全地裁の結果(つまり審決取消などを含まない)で、金銭を目的とする訴えのうち、知的財産権に関する訴えの総数は363とある。うち、判決に至ったものが123件。和解は175件である。
 判決の123件のうち、認容が52件、棄却ないし却下が71件ある。これによると請求の認容率は42%。なんだ、大して変わらないのかな…とも思うけど、これは特許だけでなく商標、著作権関係などを含んでいるし、最近はまた、ぐっと低下している(20 %を切っている状態とか…)と聞くし…、いや、そもそも和解の内容が不明だし。
 こういう統計情報って、もう少し詳しいものが欲しいとおもっても、なかなか入手しにくいのが現状で、どこかにまとまったものはないものかなぁ。例えば日本の場合、東京地裁とそれ以外とで勝訴率に相違があるか、とか、分からないかなぁ。

■ それにしても、どうも米国のほうが、---これは代理人の贔屓目もあるのかも知れないけれども(また、企業側からすれば必ずしも原告勝訴率が高ければいいというものでないのは分かっているけれども)---特許権を率直に評価しているような気がするんだよね。気のせいかなぁ。
 やっぱり、104条の3とかの影響があったりしないのかなぁ(そういえば昨年の特許委員会第4部会が、それ、やっていたっけ?)。

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