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2008年6月 5日 (木)

オープンな はなし

Yes, We Are Open

っていうのは、あやふやな記憶によると sun microsystems のキャッチフレーズだったような印象があるんだけど、当時の sunos は、別に open source ではなかったし、この標語は同社のネットワーク技術の高さを暗喩したものだったような…。

▽ open source の話となると、いろいろと思想的な問題があって、それはもう gnu emacs と vi とのどちらが優れているかというような論争と同様に、ほとんど「宗教的」で、傍から見ればどっちでも同じような主張をしている陣営が、それぞれを異教の徒として扱っているような印象を受けないでもない。だから、そういう世界には、ここでは立ち入らないことにする。
 本記事における Open の話は、だから、ちょっと違う話である。

■ 開放特許
 いつかも書いたかも知れないが、特許手続の書面には、

実施権許諾の意思がある

というような語句を表示でき、ライセンスの意思を伝えることができる。
 権利者としては自社実施の見込みがない場合は、さっさと権利を放棄するか、あるいはライセンスに回した方が、当然ながら利となる。
 INPIT(工業所有権情報・研修館)の特許流通データベースというのは、まさにこの開放特許のためにあるようなシステムで、ライセンスアウトを希望する側と、ライセンスインを希望する側とで、それぞれに情報を出しあって登録している。言葉は悪いかも知れないが、言ってしまえば、

特許版、結婚情報サービス

みたいなもの、だろうか。
 INPIT では、「開放特許事例集」なるものを発行して、送料まで含めて無料で提供してくれているから、興味のある方は、請求されてはいかがだろう。
URL: http://www.ryutu.inpit.go.jp/db/description/open/index.html

■ いや、今回の話題にしたいのは、これではなく、先頃ニュースになっている、川崎市がライセンスを手伝ったらしき、富士通の開放特許の事例である。
 神奈川県の川崎市では、市内にある研究機関での成果を流通させるべく、「知的財産戦略推進プログラム」というのを策定して、具体的に実施している。今回でライセンスは3例目を数えるらしく、それなりに機能している。立派なものである

■ どんなものがライセンスされているのか、ちょっと興味を引かれて、報道記事にでていた特許番号を叩いてみた。
 特許3619380号は、「カーナビロボット」に関わるものだという。ナビロボット?
 最初の請求項を見てみよう。

【請求項1】
 頭部と胴部とを有する車載入出力装置であって、
 車載された環境における入力情報を取得する情報入力部と、
 該情報入力部で取得された入力情報を解読して出力情報を生成する情報解読部と、
 該情報解読部で生成された出力情報を出力する情報出力部とを備え、
 前記情報出力部が、音声を出力する音声出力装置を備え、該情報出力部が、前記出力情報を、前記音声出力装置を用いて音声で出力する態様を有するとともに、該情報出力部が、車に配備された、受信した情報に応じて状態を変更する設備に向けて出力情報を送信する送信装置を備え、
 前記情報入力部が、音声をピックアップするマイクロホンと前記設備の状態を検出するセンサとを備え、
 前記情報解読部が、音声を認識する音声認識装置を備えて音声の解読を行なうとともに、前記センサによる前記設備の状態の検出結果を受け取って、前記設備の状態を変更するための出力情報および前記音声出力装置を用いた音声出力用の出力情報を生成するものであって、さらに、
 前記情報解読部が、前記マイクロホンからの入力音声を認識して認識不能であったときは音声による再問合せ用の出力情報を生成するとともに、音声認識に成功し認識された音声が前記設備の状態変更指示であったときには、前記センサによる検出結果から該設備の状態を認識して、該設備の、変更指示された状態への変更が可能か否かを判定し、不能なときは不能であることの音声による報告用の出力情報を生成し、可能なときは、該設備を指示された状態に変更するための出力情報を生成するものであることを特徴とする車載入出力装置。

 …長っ。…えらく長いクレイムだけれど、補正のときに(補正要件具備を明確にするためか、「交通整理」をせずに)従属項を連結して作ったようなので、こういう結果になったみたいだ。こういう長いクレイムを読むコツは、構成要件にバラしてみていくことで、本件についてみれば、実質的には、頭部・胴部・情報入力部・情報解読部・情報出力部という5つの要素しかないことがわかる。あとは、各部の構成や動作についての限定である。

■ 意見書? そう。本件は一度拒絶理由がかかっていて(29条2項)、主要な拒絶引例は、特開平10−38601号公報である。そこには、車載の人形が記載されていて、この人形には、いろんなセンサがつながってる。でもって、

【0025】人形には、両腕が上下に動くように人形内部の腕部にアクチュエーター24が取り付けられている。…中略…
【0026】今、ナビゲーション部の方位センサー20と車速センサー33から定常の走行モードと異なる異常な走行状態を検出したとき、例えば車両の蛇行が認められた場合などには、制御部21は直ちに異状自体を検知し、信号の種類を判定して、居眠りに対応したした動作を動作データCD−ROM23から取り出しコントローラ(再生手段)22によって人形内に内蔵されるアクチュエータ24およびステー内のモータ25を駆動し人形の動作をもって情報を表現する。同時に居眠り異常をスピーカ29より音声で知らせる。この動作は、運転者に人間が話し掛けたり、休むことを進めたりするものである。
(特開平10−38601号公報より)

ということになっている(それにしても弁理士が書いたんじゃないな、とよく分かる明細書だ)。主な目的は、

「おい、寝てんじゃねーよ」

と運転者に集中を促すとか、休むように促すというものなのだ。それを擬人的な仕掛けが行うという話。ナビについてはその後に記載があって、

【0034】表現として、例えばナビゲーションの機能の一つである経路誘導の際の曲がるべき方向に表情の視線を向けるなどの表現や、図11に示すように曲がるべき方向に指をさす表現が考えられる。また、人形の各関節にアクチュエーターを取り付けボディーラングエッジ的表現を行わせることも考えられる。
(特開平10−38601号公報より)

というような話になってる。

■ で、この主要引例
に対する本件特許の「相違点」は、意見されているところによると、対話的な処理を行うところだそうだ。
 その目で先のクレイムをもう一度みてみると、ポイントは、

「前記情報解読部が、前記マイクロホンからの入力音声を認識して認識不能であったときは音声による再問合せ用の出力情報を生成するとともに」

というところに集約されているということでいいんだろうか。

■ 本件ライセンスされた特許公報の図1には、可愛らしいクマのぬいぐるみが助手席に座っている絵が描かれてる。どういうわけか、上記主要引例の人形も助手席に座っているようで、乗車人数が増えたらどうするんだろう。ダッシュボードの上に立ってポーズしてくれてもよさそうなものだが、と思ったら、特許公報の図2は、なんかエアコン吹きだし口に取り付けられたらしきクマが…。
 個人的に欲しいと思うかなどうかな人形のキャラクタによるかな。そうか。これ商品化するときには、いろんなバージョンがでるんだろうなぁ。むしろそっちが「売り」になりそうな気がするなぁ。なんか、アニメキャラクタみたいのを乗っけて走ってるのをみたらちょっとギョッとしそうだなぁ。
 あ、なお、改正道交法とは関係ないものの、本件の特許公報の図では、クマちゃん、ちゃんとシートベルトをつけている。なんか装着方法が誤ってる気もするけど。

※ 昨日は、google adsense の「動画」というのを貼り付けてみたのですが、同じ事務所のA先生が、ときどき冷やかしでこの blog を見てくれていたらしく、今日は突然、

「おい、この動画はちょっと…」

というのです。私は、google の規定に従ってクリックしないようにしていたので、どのような動画が流れるのか、今一つわかっていなかったのですが、A先生の話によると、たしかにそれはちょっと…な動画であったようですので、しばらくテストを中断いたします。

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