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2008年5月 9日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(7)

昨日5月8日から本日9日にかけて、福岡市にて将棋の名人戦第3局が行われています。この名人戦は7番勝負で、3戦先勝したほうが名人位を獲得することになっています。現在の名人位は森内俊之名人。一方の挑戦者は、今年のA級順位戦優勝者、羽生善治二冠で、いまのところ一勝一敗のタイです。さて、昨日朝から開始された名人戦。先手後手番とも9時間の持ち時間があって、使い切ると秒読み(所定分内に指さなければならないモード)になります。現在の進行状況は38手目。羽生挑戦者が本日最後の指し手を指しました。

▽ しかし、この指し手、いまその指し手を知るのは羽生挑戦者だけなのです。
 それは、一日目の終了時点で、先後手番のいずれか一方に有利にならないよう、「封じ手」と呼ばれる手続が採られているからです。

■ 利用発明
 遅々として進まない「吉藤を読む」ですが、今回は「VII 特許権」の項目のうち、特許権の効力の例外。それには「制限的例外」と「拡張的例外」があるとしているのですが、さらに「制限的例外」に「他人の実施をそのまま認めざるを得ない場合」(試験又は研究のためにする実施等)と、「自己の特許発明でありながら実施できない場合」とに細分しているわけです。
 今回は「自己の特許発明でありながら実施できない場合」の一つ、利用発明です。
 法律は72条。これに対応して、実施するための条文は72に20を加算した、92条です。

□72条 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。
   ※着色は本記事著者

 このうちの前段、「…利用するものであるとき」と、最後の「…は、業としてその特許発明の実施をすることができない」を続けて読めば、それが利用発明です。飛ばしたところは「抵触」の関係にある場合で、権利内容が重複してしまっている場合です。特許権同士が重複した場合は、それは過誤登録(拒絶理由があったのに間違って登録されている)なので、無効審判で整理することになります。
 しかし、先願に係る特許発明を、後願に係る特許発明が「利用」する場合はあり得るわけです。その場合、一旦、後願に係る特許発明の実施を制限するわけです。これを「先願優位の原則」などということもあります。

 では、利用発明に該当するときは実施は全然できないのでしょうか(許諾を受ければいいのです)。また、そもそも利用発明なんてものが過誤登録でもなく成立するものなのでしょうか。

■ 利用発明の態様
 例えば、先願に係る特許権が「長針、短針、及び秒針を有する時計」となっているとき、後願に係る特許権が「長針、短針、秒針、及び日付機構を有する時計」というものであればどうでしょうか。仮に「日付機構」に特許性があるとすれば、先に「長針、短針、及び秒針を有する時計」があったとしても、日付機構があることで権利化されて然るべきです。しかし、この後願の時計に係る発明には、「長針、短針、及び秒針を有する時計」の発明が含まれるので、利用関係が成立するわけです。こういうのが「利用発明」です。
 より詳しくは、こういうのを「思想上の利用関係にある」と吉藤先生はいいます。
 ただ、これに限る必要はない、として、「一方を実施すると他方を実施せざるを得ない」というものも含むと吉藤先生は言います。これを「実施不可避説」というのです。その意味はこうです。
 「特殊な編み方(X編み)をした靴下」という先願に係る特許発明があるとします。それに対して、「X編みにより靴下を製造する方法」という後願に係る特許発明があるとすると、仮に後願に係る特許発明が、従来のものに比してX編みを極めて簡便に行う方法であったとすると、それは権利化される可能性があるわけですが、しかし、先願に係る「靴下」の特許権は思想上、そこに含まれているわけではありませんね。
 ところが、後願に係る方法を実施すると、靴下ができてしまうので、先願に係る特許権を実施することとなってしまいます。こんなのが、「実施上の利用発明」というのだ、と吉藤先生はいうわけです。

 要するに、利用発明には「思想上の利用発明」というのがあり、また「実施上の利用発明」というのもあるのだということです。いずれも合法的に成立し得るのですが、そこには多少の問題点の指摘もあります(「選択発明のすべてを利用発明とすることの是非」)。

■ ダブルパテントのこと
 上にも書きましたが、仮に同じ発明に複数の特許権が設定されているとすれば、それは過誤登録で、「ダブルパテント」(3つ以上あっても「ダブルパテント」です)ということになります。この場合、先後願の関係は実施に影響するかどうか。一つの考え方は72条は利用発明のことしか言ってないじゃない、と割り切り、他にも規定がないことをいいことに(?)、抵触発明の特許権が無効にされない限り、自由実施できるはず、とする考え方です(放任説)。
 また、利用関係ですら実施許諾が必要なのに、ダブルパテントで許諾が必要なのは当然だ、抵触は利用の一態様だ、という考え方もあります(禁止説)。
 妥当と考えられるのは禁止説ですが、放任説論者は、80条(中用権)という規定を盾にとります。

□第80条1項柱書+1項1号 
 次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許無効審判の請求の登録前に、特許が第123条第1項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
1.同一の発明についての2以上の特許のうち、その一を無効にした場合における原特許権者

 この規定は、放任説を採用してこそ理解できる、というのです。その意味は、仮に禁止説があるとすると、権利がある間は許諾なく実施が制限されているが、無効になると突然、中用権の規定により実施権が発生するのはいかにも不合理だ、というのです。
 これに対する禁止説側からの反論は、80条は同条所定の要件を満足するような後願抵触特許だけを対象にしているのだから、どんな後願抵触特許も自由に実施できるというのは不合理だというものです。吉藤先生は各種判決を列挙しますが、多くの人にとって受け入れられやすいのは、禁止説でしょう。吉藤先生もそのように結論します。

 少々長くなってきました。「そっくり説」と「選択発明」のことについては次週としたいとおもいます。なお次週は、92条は軽く触れる程度に飛ばし、「間接侵害」に進みたいと思います。

■ 封じ手 --- それは、1日目の終了時間に手番となった側が、次の一手を決めたとき、用紙に次の一手を書いて封筒に密封することなのです。この密封封筒は2通作成され、それぞれ封じた側と、相手側と、立合人の3名でサインをするのです。
 翌日、朝の対局再開時に、封が開けられ、封じ手が読み上げられます。
 この方法ならば、封じた側は、封じた時点での考慮の結果で固定され、夜間を自分の持ち時間として使うことができません。一方、相手側も次の一手がわからないので、同様に、夜間を自分の持ち時間として使うことができないので、先後手の双方にとって公平な状況をつくりだすこの制度、なかなか面白い「発明」だと思います。

 本日の37手目までの局面をぱっと見て、私が思いついたのは△5五歩か、△6四歩。前者は飛車を3筋に展開したい考えで、後者は7三の桂馬を活かしたい考えですが、こんな、ど素人の手が合っているとは思われず、仮に合っていてもその狙いは違うんでしょうね。プロってそんなもんですよね。

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投稿: 正規品と同等品質のコピー品 | 2020年6月 8日 (月) 04時13分

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