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2008年4月 4日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(3)

家の近所にあったラーメン屋が閉店してしまいました。駅から徒歩10分程度の距離だし、大きな街道からはちょっと入り込んだ、車を止めるスペースもない通り沿いにあったので、

やっぱりこういう立地では無理だったのかなぁ

と思っておりました。そして先日、そのラーメン屋跡地に新しいラーメン屋が。

▽ 旧ラーメン店は醤油ラーメン、新ラーメン店はどうやらトンコツ系で、そっくりそのままの再生ではないのですが、ラーメンの店というところでは相違がありませんで、一体全体閉店はなんだったのかと(もしかしてお店を新築してスープの味の鞍替えをしただけ?)。

■ 用尽説
 用尽説(消尽説とも)は、販売が正当に行われると特許権は「用い尽くされる」と考え、当該物について再度、特許権を主張できないようにするというものです。
 仮に用尽説を認めない場合、

「特許製品を譲渡するごとに特許権者の許諾を要することになるので、市場での円滑な流通が妨げられ、却って特許権者自身の利益を損ない、ひいては特許法第1条所定の法目的に反する」

わけです。そして

「一方、特許権者は特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されており、特許権者等から譲渡された特許製品について、特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しない」

わけです。
 なお、これらは、最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決(いわゆるBBS事件最高裁判決)から拾った文です。

 吉藤では用尽説の一つの論点として、国際消尽の可能性を論じます。まさにBBS事件のことで、熊谷健一先生補訂の12版では、ちゃんとBBS事件の最高裁判決を紹介しています(吉藤先生ご自身は、平成7年に逝去されております)。

 ここではBBS事件の判決を敢えて追うことはおいておきましょう。

■ 実施行為の諸態様
 吉藤12版のころ、特許法第2条3項1号は、こんな感じでした。

「物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為」

 「物」については、ここに書かれている行為をすることが発明の実施行為に当たるわけです。敢えて1つだけ文言を解釈すると、例えば魚を集めやすいというような特許権にかかる漁網を前衛芸術に使うような、発明本来の目的を達成せず、作用効果を奏しない使用態様は、ここにいう「使用」とは言いにくいわけです。そこで「使用」は、「物の発明の本来の目的を達成し、または作用効果を奏するよう使用すること」だとされます。
 そして「輸入」は規定されているのですが「輸出」は規定されていなかったのです。そこで吉藤は「問題となる行為」の第1番目に「輸出」を掲げます。
 吉藤の結論は、「輸出は譲渡の概念に含まれる」というものです。この結論には少々無理のある感が否めないのですが、平成18年、特許法第2条3項1号が、

「物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為」

と改正されたことで、問題はなくなってしまいました。
 この改正、

・従来、「輸出」は侵害行為とはされていなかった
・しかし、「輸出」の前段階として国内で行われる模倣品の製造や譲渡といった行為が捕捉できなければ、実際に水際において「輸出」される段階で模倣品が発見されても差止め等を行うことが困難な場合があることが指摘されていた。
・そこで、「輸出」を産業財産権の「実施」や「使用」の定義に加え、国内の製造や譲渡の段階では差止めができない場合であっても、輸出者が判明した場合には、権利者が「輸出」の段階で差止め等の措置を講じることを可能とした、

というような趣旨です(平成18年の改正本)。
 吉藤と青本(工業所有権法逐条解説)とを基礎におく場合でも、私が受験生だった時代から、改正本を併せて用いることが必須でした。
□改正本(H18)

産業財産権法の解説―平成18年意匠法等の一部改正
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■ 問題となる行為、の続き
 吉藤はさらに続けます。
 問題となる行為の二つ目は「所持」です。そして三番目、これが重要なのですが、「修理・改造」という問題です。
 修理について、吉藤は、

(a)オーバーホール
(b)過半数にも満たない取替
(c)全面的取替に準じる行為
(d)全面的取替

というような段階別で論じていきます。さらに、修理の程度が(b)と(c)の間にある場合、というのもあります。また摩耗品の交換を別に論じています。

 この問題についても、昨今、「インクタンク事件」の最高裁判決がありましたから、そちらを参考にするのがよいかも知れません。この事件では、高裁は「第1類型」、「第2類型」というような話をしているのですが、最高裁は

 特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許されるというべきである。そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり,当該特許製品の属性としては,製品の機能,構造及び材質,用途,耐用期間,使用態様が,加工及び部材の交換の態様としては,加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである。

と判じていますね。吉藤に近いような、そんな感じでしょうか。
 結局「インクタンク事件(キヤノン)」では、特許発明の本質的部分の機能を回復(使い切ると、インクが固着して機能が失われるところを再生している)として上記基準に当て嵌めて「侵害」と認定しているわけです。なお、同じようでも「インクタンク事件(エプソン)」では、エプソン側の特許権が無効であるというような判断で、インクタンクの製造者側が敗訴しています。

 さらに短答式向きの「方法と用尽説」という問題や、「生産物は直接生産物に限るべきか」などと続くのですが、また長くなってしまったので、ここでカットしましょう。
 うーん、進まないなぁ。

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