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2008年4月18日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(5)

本日は AIPLA の方々による弁理士会の研修がありました。ごく久々にお会いする現地代理人の方もおられて、半年も経過していまさらですが、新規開業をお知らせしておきました。この研修は、本年度の義務研修の単位に認定されるせいか盛況で、用意された座席はほぼ満席になっていました。

▽ 論題は KSR-Teleflex をはじめとして、さまざまな分野に及んだのですが、あんまりいろんな話題を単時間に詰め込んであったので、ノートを見返さないことには、

どんな話だったっけ

と、思い出すのに一苦労…(いや、話のマクラにしただけで、ちゃんと覚えてますよ?)。

■ さて、今回で吉藤先生のご本の紹介は5回目ですが、何の話をしていたところだったか覚えておられるでしょうか。用尽説の話? いいえ。もとの話は、「実施」の話でした。
 そもそもの話題は特許法第68条、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する(本文)」という条文の解釈の問題でした。
 もう少々この問題を続けます。吉藤先生の話は「業として」、そして「専有する」へ続きます。

■ 業として
 業として、というのは、基本的に「家庭的・個人的な目的を排除する趣旨」であると説明されます。素早く行きましょう。吉藤のポイントは

  • 営利不問
  • 家庭的・個人的除外 ∵産業立法として行きすぎ
  • 反復継続不問(1回だけでも侵害)

というところです。ですから、「国営工事としての港湾工事に、特許にかかる浚渫(しゅんせつ)機を1回だけ使用すること」は、業としての実施なのであります。

■ 専有する
 権利の専有とは、他者を排して権利者のみが実施を独占するという意味を指します。ここに問題として排他権説と専用権説という2つがあるのですが、吉藤先生は先へ伸ばして説明をしていますね。近ごろの試験問題からしますと、特許権が排他権であるか専用権なのかという議論は意味がないかも知れません。しかしまぁ、先生のところに書いてはありますから…。
 実はこの blog では、既にどこかで書いているのですが、この問題は、利用発明をどう捉えるかの問題に発展します。
 仮に特許権は専用権であるとするならば、専用権でありながら他者権利の存在により実施ができないという利用発明の規定が理解できなくなる、と考えます。そこで特許権は専用権と考える場合、利用発明は例外規定だということになります。ただ、専用権説であっても排他性を認めないわけではなく、排他性は特許権の物件的性質に基づく当然のものと捉えます。
 一方、特許権が純粋な排他権であるという立場(排他権説)では、「発明者は本来自己の発明を自由に実施できる権利を有し、特許権は他人に発明を実施させない排他権にすぎない」、つまり特許権によって積極的に実施ができるようになるわけではないと考えますから、純粋に排他権と考える場合、他者権利の存在によって実施が制限されることもそれはあり得るわけです。この立場では利用発明は例外規定ではありません(この場合は92条に対する念のための規定と考えます)。
 吉藤先生は、排他権説に立った場合、特許権者については当然に実施が予定されていることと相容れないと考えていきます。特許法の目的(1条)からすると、純粋な排他権と考えることは「発明の利用を図る」方向に働かないので、問題があることはカンタンに理由がつきます。この意味では論文試験では排他権の立場に立つと理由付けが微妙になる可能性があります。まぁ、72条のことはそのうちまた触れることに致しまして、ここでは少なくとも特許権を「純粋な排他権」と考えることは難しい方向であることと思っておいて下さい。

 さて、そうすると、条文にいう「専有する」の趣旨は、どういうことかというと、

「他人を排して権利者のみが実施を独占する」

という意味だと、こうなります。「他人を排して」だけでは不足で、「実施を独占する」ところまで行くわけです。もっとも、他人が実施について正当な権原を有している場合がありますし、特許権の効力が及ばない範囲の規定も別にあります。従って、もうちょっと正確に書くのならば、

「権原なき第三者の実施を排し、権利者が実施を独占すること」

が原則で、例外的に効力の及ばない範囲が存在する、ということです。

■ なお、権原と権限の相違については、未だに検索でよく引かれるのですが、

  • 「権原」は、権利の原因のことであり、
  • 「権限」は、パワー(権利の限度)のことである

というように捉えておけばいいと思います。
 例えば通常実施権というのは「権原」であり、これに基づいて実施をする権利を有します。実施の権限はあるわけです。しかし、通常実施権は他者侵害を抑えることはできませんから(単に特許権者等から実施を認められているにすぎませんので)、他者が侵害していることで損害賠償を請求するような権利はないわけです。権限はそこまで及ばないわけです。
 論文では、語はなるべく正確に。司法試験ならぬ弁理士試験だから、と気を抜きますと、手痛いシッペ返しが待ってます。誰もが皆、他人の失敗には常に厳しいのです。
 次回は「専有する」の例外からですかな。

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