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2008年3月21日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(1)

そろそろ特許庁での受験願書の配付が始まっているみたいです。試験制度もさることながら、願書にしても私の受験時代からは随分と違っています。私の頃は…あれ。えーっと、どんなだったっけ? 受験時代から7年も経過すると、もういいかげん受験時代の記憶というものがなくなってくるものだなぁ。

▽ 判例案内も、もうそろそろいいかと思うので、昔の本を引っ張り出して、「ファインマンを読む」風に読み返して見ていってようかと。とくに最近入手困難な吉藤あたりを対象にして…。

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4 プロパテント時代に読むべき1冊

■ 吉藤の読み方
 というか、基本書の読み方なのですが、一般に文系書籍の読み方は「繰り返し読み」に限ると思います。理科系の本ならば、一歩一歩説明を解釈していくような読み方をするところ、文系書籍は著者の思考を理解するために何度でも繰り返して読んで、内容を習得してしまう読み方が妥当だと思うのです。その意味では吉藤の本も、繰り返して何度でも読んで、内容を習得してしまうに限ります。
 受験時代、私も何度読んだか知れません。ついにはどこを読んでも記憶している内容ばかりになり、飽きてしまったので、中山の「工業所有権法」に手を出しました。

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 この中山は、ちょっとおいておきまして、吉藤「特許法概説」の良いところは何といってもその網羅的なところにあります。だいたい必要なところが書かれていますので、出題する側も出題される側もこの本を読んでおくことが必要十分だったのだと思います。その点、いまではこの本に相当するほど網羅的な基本書というものが見当たらない気がいたします。

 ところで「特許法概説」は、本文と注釈とが主な構成要素です。吉藤はその網羅的なところに魅力があるわけですから、当然、注釈まで全体的に読んでおかないと意味がないというものです。

 例えば「VII 特許権」の章で、5.特許権の共有、(4)審判請求上の制限その他(以下、都合により吉藤12版をベースに話を進めますが、ページ構成は13版(オンデマンド版)と殆ど変わりはないと理解しています)というところをご覧下さい。
 侵害訴訟についての記載があるのですが、ここでは共有特許権の侵害があったときに、共有者の一人が単独で差止請求や損害賠償請求などが可能かどうかについて書かれています。訴訟実務は単独で出来るとしていて、学説も同様、と紹介した後、「注1」が始まります。
 この「注1」では、紋谷先生の著書を引いて、無体財産権の合有的性格から、その訴訟も固有必要的共同訴訟と解する、という説を紹介します。そして「しかし、それでは共有者の一部脱落が他の共有者の不利益となる」とし、「そこで−」と繋いで差止請求権についてはそれが保存行為の性格も有するからと述べて、単独で可能との説の根拠とします。

 こういう記載から、よくレジュメにあるように、

前段: 特許権の共有→合有的性格 訴訟は固有必要的共同訴訟との考えあり
しかし:共有者の一部脱落が他の共有者の不利益になる
そこで:差止請求権→保存行為の性格も有する
    損害賠償など→不可分債権の規定に準じて単独での訴訟可とすべき

というような流れが書けるわけです。

■ 吉藤の読み方(2)
 さらに吉藤を読むときには、

「必ずしもこの本の記載が正しいと考える必要はない」

ということもあり得ることを注意しないといけません。
 いや、むろん、法改正によって記載が妥当しないところも多いわけですが(いまとなっては)、その意味ではなく、法解釈の側面においても必ずしも吉藤の支持する説に同意する必要はありません。また書き振りも、必ずしもそのままコピーするのは考えものです。
 例えば、「II 特許を受けることができる発明」の章、1.発明の定義のうち(1)自然法則の利用(B)自然法則の利用、の中のマル1、「全体的利用」をご覧下さい。
 ここには、「一部においても自然法則を利用しない部分のあるものは発明ではない」と書かれています。一方、特許庁の審査基準を見ますと、「第II部、第1章 産業上利用することができる発明」の中で、1.1(4)自然法則を利用していないもの、には、こんな記載があります。

「逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。」

ざーっと読むと、矛盾しているようにも見えるのですが、まぁ、吉藤のいう「利用していない」というのは、前後の記載から「自然現象についての誤った認識」に基づくものを言うようで、それは要するに実施可能性がなくなるからダメなのです。
 一方で特許庁のいう「利用していない部分」というのは、実施可能性がなくなる話ではなく、人為的取り決めみたいな部分があっても全体的に利用していると考えられる場合があることに配慮した記載と思われるわけで、両者は必ずしも矛盾しているわけではないのですが、このように少々読みにくい部分があるのも事実で、吉藤の通りに論文に書くことについては要注意なのです。

■ と、いうわけで、今後毎週「吉藤を読む」というシリーズで、(古い)基本書を読んで行くことに致したいと思います。何らかの参考になれば幸いであります。

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