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2008年3月28日 (金)

[弁理士試験]吉藤を読む(2)

家電製品のマニュアルをどう読むか−というと、私などは殆ど読まない派なのだけど、知りあいのTさんなどは

頭からしっかり読む

んだそうです。

そうでないと、全部の機能がわからないじゃない

というわけで、そのやり方は立派だなぁ、とは思うんですが、製品がある程度使えるまでは参考用に出しておきますが、日常支障がなくなると、新機能なんてどうでもよくなり、もうマニュアルはどこかの棚の中です。うちの場合。

▽ 吉藤「特許法概説」の場合、章ごとの独立性が結構高いので、どこから読んでも割とイケます。そもそも最初のほうは特許制度の歴史ばかりで試験には関係のないことばかりです。そんなことなら、イチから読むのではなくて、いきなり核心部から読み始める方が効率的というものです。

■ 真ん中あたりで割ってみると
 吉藤「特許法概説」を、中央よりやや後ろ寄りで開いてみますと、そこには「VII 特許権」という章があります。特許法を先頭からずーっと見て行くと飽きますので、このあたりから始めても良いんじゃないかと思うわけです。
 「権利」というのを論述するときには、

  • 性格
  • 発生
  • 主体
  • 客体
  • 効力
  • 変動
  • 消滅

などという項目を列挙することになりますが、吉藤先生もまずは特許権の性質を論じようとします。もっとも、対して論じることもなく、学説として「人格権説」、「所有権説」、そしてコーラーの「無体財産権説」を紹介しているだけです。ここは大して面白くありませんので、すっ飛ばしましょう。

 次に吉藤先生は、「特許権の効力」という大項目を掲げます。むろん原則は特許法68条にあって、

□特許法68条(本文)

特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。

ということです。ここで「本文」と書きましたのは、その後に「ただし書き」というのがあるからで、特許法68条全体は、

□特許法68条

特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

ということになっていまして、本文が原則なんだけど、「ただし」、この場合はこう、というような話がついているわけです。
 まぁ、最初は原則論で参ります。

 法律の文言というのは額面通りに受け取ってはいけないところがありまして、それが問題を複雑にしているわけですがこの条文も例外ではなく、「業として」というのはどういう意味か、とか、「実施」とは、とか、「専有する」というのはどんな意味かというのにいろいろ議論があるわけです。
 「特許発明」という文言については特許法2条2項に定義がありますし、それで明確なのですが、同じ2条に定義があっても少々解釈上の問題があるのが「実施」です。

■実施
 2条3項では、実施行為を発明の類型でわけて説明しています。発明が「物」である場合、これは例えば「ナントカ装置」とか「ナントカ・システム」とか、そういうものだとか、「物質X」みたいな場合ですね。このときには、
「生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し等)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為」
ということになります。「又は」というのと「若しくは」というのも実は法律用語で、「又は」より「若しくは」が小さい括りにあたるんです。
 具体的な例で考えていきますと、選択肢が並列的で単純ならば「ランチは生姜焼き定食又はシャケ定食」というように「又は」を使えばいいんです。でも、ランチ以外に通常メニューがあるとすれば、
 「生姜焼き若しくはシャケの定食、又は通常メニュー」
というようになるわけです。
 ですからここでは、
「生産、使用、譲渡等、(輸出若しくは輸入)、譲渡等の申出」
という5態様を並列にしているわけです。
 話を戻しまして、2条3項。ここでは、発明を

  • 方法
  • 物を製造する方法

の3態様に分けています。そしてそれぞれについて「実施」とはどういうことなのかを、上のように述べているわけです。残りの方法、製造方法をカンタンに言えば、方法についてはその方法の使用、製造方法については、その方法の使用のほか、その使用でできた物について「使用、譲渡等、(輸出若しくは輸入)、譲渡等の申出」ということになります。この製造方法でできた物の生産行為が入っていないのは至極当然で、なんせ製造方法の使用がそのまま物の生産に当たるからです。

 このように吉藤先生は実施について法律の条文についての説明をしたのち、

(a)実施行為の独立性

という話に入ります。しかしもっと重要なのはここで「特許発明に係る物の購入」という例示をしたあとで突然、「購入後の行為の適法性」という話に移った後です。
 「物の購入」自体は、実施の態様に含まれていませんから、それ自体適法です。では、購入行為という独立した行為の後、それを権原のない人がその物を使用することは侵害なのでしょうか。

 あ、ここで権原はタイポではありません。権利の原因となるものを「権原」というのです。特許を実施する権利があるというとき、その権利の原因は、「通常実施権」などの実施権かも知れません。こういう「通常実施権」のようなものを「権原」というわけです。

 つまり、権原なき者による特許発明の実施が「侵害」ということになるわけですが、例えばあなたが、「特許製品」を購入したとき、その製品についての特許権の実施権原は、ふつーないわけです。だってそのメーカーから実施権を設定されたとかそういう契約を結んではいないわけでしょう。じゃぁ、その製品を使ったら「侵害?」 というのがこの問題です。吉藤は、この問題を「実施行為の独立性の例外」として説明していきます。つまり、「販売」という行為が入ると、その後の使用行為は侵害にならない、と構成したいわけです。そのためにどういう説明がつけられるか。

 吉藤先生は、

所有権移転説、黙示実施許諾説、用尽説(消尽説・消耗理論とも)

にわけて説明します。重要なものは、このうち黙示の実施許諾と用尽説だけです。特に近年の弁理士試験では用尽説の重要性が高いと思いますが、そろそろ終わりにしないと長すぎの気がします。

■うーん、これで3ページ。
もっと速度を上げないとダメですね。法令用語の説明なんかを取り込んでみたのですが、長くなりますね。
 次の本に任せてしまいましょうかねぇ。

□法令用語の基礎知識

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