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2008年3月 3日 (月)

すぐに返ってこないはなし

kermit the frog というのは、Jim Henson が創り、セサミストリートで一躍有名になったマペットキャラクタだけど、このキャラクタの名前を拝借したファイル転送プログラムがある。転送対象のファイルを複数個の固定長データに分割、各分割片を送信して、相手側がOKを返せば次の分割片、OKを返さなければ、当該分割片をもう一度送信、という実に単純なプロトコルで通信を行う。「カッコーの卵」のクリフォード・ストールは、この kermit のデータ伝送時間を使って、

「ハッカーは月面にいる」

ことを突き止める(?)わけだ。

▽ コンピュータのデータ伝送などというものは斯くの如きものにて、送信したらすぐにレスポンスが欲しいわけだ。じっさい、我々はすでにそういう現実に慣れてしまっていて、例えばネットショップで、すぐに注文番号がつかないシステムなんて、

「ヘンなシステム」

だ、ということになり、あまり信用されないだろう。

■ ガンバン
 某T自動車の方式のことではない。「カンバン」ではなく「ガンバン」、「願番」のことである。いま、多くの特許事務所が利用しているパソコン出願ソフトは、ISDN 回線(またはインターネット)を介して特許庁のサーバへ出願書類等を送るようになっている。
 出願に先だって、手元の書類のハッシュ値を作っておき、出願手続をして書類一式が特許庁サーバに到達すると、特許庁サーバがハッシュ値を作って出願側に送る。これでハッシュが一致すれば「受領」ということになる。
 書類が受領されると、「受領証」という書類が作られる。この書類には、早くも発行された出願番号(願番)がついてくるのである。

 昔のオンライン出願システムでは、出願番号は後から送られてきたと記憶している。もうこの辺の記憶が曖昧なのだ。光陰矢の如し。

 そういえばこの「光陰矢の如し」、英語ならば Time flies like an arrow. だが、これについて、「矢のような蝿の時間を計れ」とかいう相対論かいなと思うような訳や、「時間蝿は矢を好む」とかいう哲学的背景を考えちゃいそうな訳があるのは、機械翻訳の公然の秘密。

 おっと脱線。とにかくフォーマルな点に不適切なところがないかを人間が確認して、「適」の判を捺してから願番発行となったのだと記憶していて、さすがに弁理士事務所で「適」マークを逃したらまずく(補正指令くらいならまだしも)、これはこれで最終確認に気を使う微妙な作業ではあった。

 いまや、方式の確認はソフトウエアがやる。そういう前提なのだろう。すぐに出願番号が附与されてくるのである。
 従って出願と同時に審査請求と言われたら、この願番を出願審査請求の書類に書き入れて提出準備をすればいい。

■ ところが、先日PCT案件の国内移行をするべく、手続をしていたら、なぜか受領書の「出願番号通知」の欄にPCT/JPの番号(国際出願番号)がついている。

「にゃ、にい??」

 私がいました手続は日本の特許法 184条の5の書面の提出手続である。この提出の効果は国際出願が日本出願に移ることだ。と、すれば国内出願の番号(特願xxxx-xxxxxx)がつくはずだ。おかしいな。手続が異常なのか?
 というわけで早速、特許庁の国際出願課へ問い合わせてみる。こういうときは国内手続のことなので、「指定官庁」へ回してもらう。電話してすぐ「1」プッシュ。交換台がでたところで「PCTの指定官庁の方へお願いします」という。

「かくかくしかじかです」
「…えっ。出願番号通知って書いてあるんですか。おかしいな。えっとですね。書面の詳しいことはよくわからないんですが、兎に角、国内移行のときには、すぐに願番はつきません」
「つかないんですか」
「つかないんです」

どうやら、4,5日ほどを要するらしい。いまどき、そんなことかい。日本出願ならばすぐにつくくせに。ふと気になって、

「では、審査請求を同時にする場合は?」

と伺うと、

「そのときは[事件の表示]欄に、国内移行と同じように、国際出願番号と出願種別とを並記して下さい」
「それでいいんですか?」
「はい。種別を忘れないようにしてください」

ほほう。すると、国内の出願番号がつくまでは、国際出願の願番と出願種別(特許、実用新案の別など)で出願を識別するわけだな。
 要するに、特許庁の人によれば、

【書類名】       出願審査請求書
【あて先】       特許庁長官殿
【出願の表示】
  【国際出願番号】  PCT/JPYYYY/NNNNNN
  【出願の区分】   特許
【請求項の数】     1
【請求人】
  【識別番号】    xxxxxxxxx
  【氏名又は名称】  yyyyyy
【代理人】
  【識別番号】    xxxxxxxxx
  【弁理士】
  【氏名又は名称】  弁理屋 べべん
【手数料の表示】
  【予納台帳番号】  xxxxxx
  【納付金額】    xxxxxx

というようにするわけだ。本当かな。ちょっといまのところ根拠条文を当たってる余裕がないのが現状。というわけで、本件については、超特急案件でもないので「4,5日のところ」を待機。審査請求は、後日のことである。
 なお、PCTで国際調査を受けておくと、審査請求の金額が若干抑えられる。だからといってPCTがお勧めとは言わないが、PCTで出願したならば、この金額になってないとヘン。案外ウッカリしてしまう人がいそうなので要注意。

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コメント

 ご無沙汰です。

> 本当かな。

 本当ですよ。上記書式で翻訳文提出と同日に審査請求をした実績もあります。そのときの案件では、出願番号通知は国内書面提出から4ヶ月後、翻訳文の提出から数えても2ヶ月以上経過してから受領しましたが・・・・、ほんとに4、5日で願番通知あるんですか?
 なお、根拠条文を探そうと思いましたが、微妙に根拠不明ですね。特施規の様式第4備考2や様式第20備考1などには、事件を国際出願番号と出願の区分で特定する例が載ってますが、出願審査請求書の様式第44では当該規定は準用されてません。まあ特許庁国際出願課が発行するPCT国際出願の手続(下記URL)P399にも載ってるので、これで問題ないんでしょうが、ここまで規定が念入りだと、つい規定されていない部分は反対解釈をしたくなります。

http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/pdf/h19_jitsumusya_txt/pct-shitei.pdf

投稿: Kaz | 2008年3月 3日 (月) 21時09分

コメントありがとうございます。

数月かかるのですか。特許庁の担当者も、「よくわからないのですが」を連発していて心許ないと思っていたのですが…。今回の案件の場合は、審査請求期限も、もう少し先なので構わないですが、どういう扱いしてんでしょうね。番号くらい、すぐつけりゃいいものを。

投稿: ntakei | 2008年3月 4日 (火) 04時28分

私もよく知りませんが、PCTルートの場合、国際事務局とのやりとりがあるから、国内の出願番号をすぐに付けるのは出来ないのでは?
国際事務局側の電子化はそんなに進んでないでしょうし、特許庁のシステムと一体化してる訳でもないでしょうから、人手を介するのでその分遅くなる筈です。

先に付けて何らかの問題が発生した場合、欠番にする訳にもいかないでしょうから、仮付与みたいなことも難しいと思います。

投稿: とおる | 2008年3月 4日 (火) 05時32分

はじめまして。ほぼ毎日拝見させていただいてます。

願番通知は国内書面を提出してから数日~数ヶ月かかります。今日通知を受け取ったケースだと、短いものは1週間、長いものだと半年でした。国際事務局から必要な書類が届かないと願番がつかないとか聞いたことがあります。

ちなみに、早期審査をかけて早期審査対象ケースになったとしても、国際事務局から必要な書類が届かないと審査に着手できず、少々時間がかかることもあります。お願いすれば、特許庁から国際事務局へ早く書類を送るように催促してくれるみたいです。

投稿: 雇われ弁理士 | 2008年3月 5日 (水) 00時41分

とおる様
雇われ弁理士様

コメントありがとうございます。たいへん参考になりました。
なるほどー。WIPO がらみですか。JPOが「分からない」というのも仕方ないんですかね。

手続的な迅速の側面からも、国内移行が早期に行われる場合は、WIPO からの書類の送達を自動的に催促してくれるようにしてくれてもよさそうなものですが…。

投稿: ntakei | 2008年3月 5日 (水) 02時26分

仮に、恒常的に「早く」と催促するようになれば、日本を特別扱いする理由が無い限り、全ての要請を無視されるようになるんじゃないでしょうか?
特別料金を支払ってる訳でもありませんから。

ちょっと、国際事務局相手に、日本的な感覚を期待し過ぎているような気がします。

相手が国際機関で、日本の主権が直接に及ぶ所ではないですから、こちらの都合に合わせることは期待し難いんじゃないかと思います。

そもそも、「どんな事務手続きでも迅速且つ正確になるべき」というのは、日本固有の価値観であって、先進国であっても必ずしも共通する訳ではないですよね。

例えば、http://wiredvision.jp/blog/fujii/200802/200802251000.html 「ヨーロッパ人が忙しくない3つの理由」等見ると分かりますが、ヨーロッパでもこんな感じな訳です。

ましてや、WIPOは、途上国を含む世界百数十カ国を相手にしてる訳ですし、多様な出身構成でしょうから、その点どうだろうかと思われます。

投稿: とおる | 2008年3月 5日 (水) 05時44分

日本的な感覚と言うのは、
・サービスは無償が基本と言う考え
・全ての仕事に(報酬が安くても)迅速さや正確さを求める考え
等々です。

ちなみに、米国等に比べて特許事務所が苦しい&低収入なのも、この感覚故という気もします。

投稿: とおる | 2008年3月 5日 (水) 05時50分

とおる様

そうですね。日本にはサービスと水は無料だという考え方があって、それが特許事務所収入の低さに繋がっているという点には大いに同調します。

たしかに WIPO としては JP だけ特別扱いするわけにはいかないんでしょうねぇ。と、いうか、本件の場合は PCT 自体が手続期間を遅らせることも趣旨の一つとしているので、そのせいかと思うのです。ですから、請求しても無視される、ということもないとは思うのですが。

それにしてもヨーロッパ代理人などは本当に尻に火をつけてやりたくなることがありますね

投稿: ntakei | 2008年3月 6日 (木) 16時42分

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