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2008年2月 1日 (金)

[弁理士試験]判例案内(11)

判例案内も11回目になりました。どうも、試験について役立つ判例を選択しようとすると、偏りがでる、といいますか、商標などは判例研究が試験対策になることも多いのですが、商標ばかり採り上げていても仕方がないような気がして…。

▽ 過去の「判例案内」を見ていると、意匠法に固有の判断がされた判決がありません。類似意匠があったころの意匠法であれば、類似意匠の権利範囲についていくつか見てもよい判例があったのですが、いまはそれもないですし…。

■ 平成13年(ネ)3044号
 そういう意味で、本件判決もそれほど重要判決というわけではありません。
 類似意匠があったころは、類似意匠の権利範囲の解釈という問題点があって、意匠らしい論点があったのですが、いまでは権利行使の段階であえて意匠固有の部分を拾うとすれば、「類否判断」というか、要部の認定等になるのではないでしょうか。

 意匠要部は、

意匠の類否を判断するにあたっては、意匠を全体として考察することを要するが、この場合、意匠を見る者の注意を最もひきやすい部分を要部として把握し、これを観察して一般の需要者が誤認、混同するかどうかという観点から、その類否を決するのが相当であり、その意匠に一般にありふれた周知の形状が含まれている場合には、この部分は、一般の需要者の注意をひくことはないから要部とはなりえないが、それが公知のものであるにすぎない場合にはこれをもって要部にはならないと即断すべきではない(昭和45年(行ケ)66)

というような判断をするわけです。
 「看者の注意をもっともひく部分」というのがキーでしょうか。

 ちなみに、某判例集から少々、要部認定に関する判決を拾ってみますと、「看者」を、意匠の対象となる物品の購入層に基づいて決める例がいくつかあります。
 例えば、平成4年(行ケ)9では、集束暗渠管という物品について、その購入者は専門技術者であるとし、かかる「看者」は、形状のみならず機能的な点も考慮して(物品の)選択をするとして、管の断面形状に強い関心を持つだろうと推測しています。その結果、中央壁に突設した突条に注目し、この点で引用意匠との非類似を認めています。
 それから、平成6年(ワ)7400では、クマの絵柄のついたポシェットについて、当該物品の主要購入層が就学前の幼児から小学校低学年の女子と想定したうえで、その要部を「微笑んでいるような愛らしい表情の熊の顔」と、がまぐち部分と認定しています。

 まぁ、公知意匠を参照して、そこを除いていくような方法もあるにはあるのですが…

 おっと、サブタイトルとの齟齬が。本件(平成13年(ネ)3044号)は、建築の基礎工事中に、そこへ埋込む「埋込みボルト」に関する件(意匠登録第905957号)で、さながらスキーのストックのようなデザインのものです。ストックの場合、底部の円形に広がる傘(パウダーバスケットとかいうようですが)に相当している部分(アンカー)が円ではなく小判状になっていたり、グリップに相当する部分がねじ切ってあったりという相違はあるのですが。

■ 要部認定
 本件でも、要部の認定にあたり、

本件意匠の要部について 意匠の類否を判断するに当たっては、両意匠を全体として観察することを要するが、この場合、当該意匠に係る物品が取引ないし使用される過程において、物品の性質、用途、使用形態からみて取引者又は需要者の注意を強く引く特徴的な部分を意匠の要部として把握し、その要部に現われた両意匠の構成態様が看者に共通の美感を与え、両意匠の誤認混同を生じさせるか否かを基準とすべきである。
そして、登録意匠の要部の認定に際しては、当該登録意匠出願前に存在する公知意匠についても、これを参酌すべきである(公知意匠と合致する部分のみでは、他の構成部分と結合しない限り、当該登録意匠の固有の特徴とならない。)。

と、しています。

 参考までに、この引用部分の直後、判決は、

また、登録意匠に類似意匠が付帯するときは、類似意匠は当該登録意匠(本意匠)の要部を把握し類似範囲を明確にする有力な資料であるから、その要部を認定するに当たって参酌するのは当然である。

というようにして類似意匠に基づく本意匠の要部認定について判断しています。

 本件では、機能的な問題から基本的形状はだいたい同じになってしまいます。そういうわけで、本件でも要部はアンカー部分(スキーストックなら底部の傘のところ)と認め、その全体的形状から円形と小判状とでは違う、として、被告側の対象意匠と本件登録意匠とを非類似と判断しています。

■ 試験問題で要部認定をさせるようなものがでてくるかというと、少々疑念もあるのですが、意匠の類否判断についてはいくつか事例を知っていても、損はないでしょう。
 それにしても、意匠に関する記事が確かに少ないような気もしますので、そのうち「ファインマン物理学を読む」ではないですが、「意匠法概説を読む」みたいな企画をやりましょうかねぇ。

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