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2008年2月 4日 (月)

審判請求期限が延びるはなし

学生ディベートみたいに、ふっかけられた議論に(論旨に特段のこだわりなく)応答しているとき、理由を尋ねられたら困る、ということがある。適当に行っている議論に理由なんてどうでもいいからだ。こういう場合、理由をでっち上げるコツというのがあって、まずは

「(理由は)3つある」

と言い張ってしまうことだそうだ。一呼吸置いて、まずは概括的な理由を一つ適当に挙げておく。これを説明している間に、あとの2つを考える。ちなみに3つ目が思いつかなければ、2つ目だけを挙げたところで、相手に議論のチャンスを与えて誤魔化してしまう。

▽ 今回閣議決定された特許法等改正案の、ある資料の最終ページには、改正案提出の「理由」が書かれていたのだが、

知的財産権の戦略的な活用及び適正な保護を図るため、仮通常実施権制度等の創設、通常実施権に係る登録事項の開示の見直し、拒絶査定不服審判の請求期間の拡大、特許関係料金の引下げ等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である

…そうである。あーそうかい、ってな理由である。

■ 今回の法改正(閣議決定の段階ではあるが、基本的には案通りに通過してしまうであろう)では、おそらく受験生としては「仮専用実施権」、「仮通常実施権」という真新しい制度に要注目ではないだろうか。そのほかは一応、いまある制度をいじっただけなのだが、この「仮実施権」については新設の制度だからだ。

 しかし、この新制度については、もうちょっと特許庁のつける理由が見えてくる時点まで待つとして、今回は実務上影響のありそうなところとして、拒査不服審判請求期間の拡大について見てみよう。

■ ところで手続補正というのは、すでにした手続を補充訂正することで、根拠法は特許法17条だ。

□第17条第1項第1文
手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。

 この条文からでは、手続の補正は、いつでも、どんな補正でもできそうであるが、ご存知の通り、補正のできる時期も範囲も法律で制限されているわけである。例えば、拒絶査定不服審判をするときの明細書の補正の場合、その補正内容は大層制限的である。さらに、時期は次のように規定されている。

□第17条の2第1項柱書、第4号
 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
…中略…
4.拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするとき。

 現在の特許法では、拒絶査定不服審判の請求は、査定謄本の送達日から30日ということになっている。一般的にいって、代理人(弁理士)の許へ拒絶査定謄本が送達されてきてから、クライアントに対して連絡をとり、コメントを一筆書いてクレイムの補正内容を定めるには、この30日は大変短い。

 と、いうわけで、審判請求日から30日間の補正期間を有効に利用して、とりあえずは急いでコメントを作成して審判での勝算の心証などを述べ、まずは審判を請求するかどうかを決めてもらう。審判請求をすると決め、審判を請求してから残りの30日間で補正の内容を詰めるわけである。
 むろん、審判請求の理由についても、一般的には明細書等の補正の時点で追加する補正を行う。

 こんなのが現在一般的な実務である。

■ 今回の法改正では、拒絶査定不服審判の請求期限が査定謄本送達日から3月になる。やたらと長いが、そのおかげで(?)、明細書の補正期間も、「請求と同時」に変更となる。つまり、

まずは審判を請求しておいて、後から補正案を詰める実務は使えなくなる

ので要注意である。たとえ従来通り30日以内に審判請求をしても、である。
 これを間違うと補正期間を失ってしまい、補正を行うためには、審判官から拒絶理由でも貰わないといけない。これについては交渉のしかたがないではないが、いろいろ面倒なのである。

■ と、いうわけで、閣議決定段階といっても、この改正が行われる蓋然性は高いから、いまから各事務所や出願人の方はご注意、という次第。
 …に、しても、この法改正については、もうすこしマシな理由は思いつかなかったのだろうか。

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コメント

この件、何時になったら本当に、施行されるんでしょうね。
ウソツキ政府、ホラフキ経済産業省と言う所でしょうか?
一身上の都合により、この件影響のある者。

投稿: 一身上の都合により、この件影響のある者。 | 2009年3月12日 (木) 13時35分

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