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2008年2月15日 (金)

[弁理士試験]判例案内(13)

「友達の友達はまた友達だ…」というのは、お昼の長寿番組、「笑っていいとも!」で、タモリが初期に使っていた台詞ですね。その「また友達」が、米国が名指しで敵意を表明する某団体に所属してるらしいある人が、またぞろ辞書を見れば分かるような単語を誤用されたとかで、話題になってました。特段、法律用語ともとれない単語ですので、誤用があったとすれば日本語が分かっているのかどうかというレベルに落ちてしまうワケで、そんな人が大臣なんだろうかと…。

▽ 随分前に書いた気がしますが、法律用語というもの。とても分かりにくいものが多いですね。しかも閲覧と縦覧の違い(いずれも資料などを見せることだが閲覧=有料、縦覧=無料という相違がある)など、使い分けも大変面倒です。これがまたワケの分からない単語になると尚更で、「固有必要的」とか「類似必要的」とか。これ意味分かりますか?

■ 共同訴訟
 例えばフタマタかけられた2人の女性が、一人の男性を吊るし上げる場合(いやぁ、昨日はバレンタインでしたから、たまにはこんな例で…)を考えてみましょう。この2人は別に共同して吊るし上げをしなくても良いわけですが、たまたま意気投合して共同して吊るし上げを実行することも考えられます。このように(?)、共同してしなくてもいいのに、共同してする訴訟が、通常共同訴訟ということになります。この通常共同訴訟に対する観念が「必要的共同訴訟」です。

 例えば学校の掃除当番で、いつもサボろうとするA君に業を煮やしたB君が、先生にチクリを入れるとします。このとき、たまたまC君も同じようにA君の掃除を強制するよう先生に請願していたとします。B君とC君とは共同して先生に請願する必要はありませんね。
 そこで先生が、こんなことをすると…

B君の請願は採り上げてA君に掃除をさせることを約束し、
C君の請願については受け入れずにA君に掃除をさせないでよいと判断する

これは、おかしくないですか?
 このように(?)共同してしなくても構わないが、それぞれ訴え出る以上は、共同するべき(そうでないと矛盾した結論が生じ得る)場合があります。このような形態が「類似必要的共同訴訟」です。矛盾した結論を出したら困る。結論は一致しているべき---そんな考え方を「合一確定の要請」と言ってます。
 なお、この類似必要的共同訴訟、もっと裁判実例に即せば、Wikipedia にあるように、株主総会決議取消の訴えというのがあります。

 さらに、法律が合一確定の要請をしている場合、共同訴訟が法によって強制されると考えられる場合、これが「固有必要的共同訴訟」です。

■ 平成6年(行ツ)83号事件
 この事件では、磁気治療器の考案について、A,B社が共同で出願したものの、拒絶の査定をされたので、A,B共同で審判を請求したら、審判でもひっくり返らなかったため、今度はA社が単独で審決取消訴訟を起こしたというものです。

 さて、ここで唐突ですが問題です。「磁気治療器」の出願は、特許、実用新案、意匠のどれでしょうか。
 そうです。「実用新案」ですね。「考案」と言ってますからね。こういうキーワードに敏感になるようにしておいて下さいね。

 話を戻します。
 本件、「(行ツ)」ですから、最高裁判所の判例ですが、原審である高裁では、単独でも適法として審決を取り消す判決を出したのです。これに対する上告を裁判所は採り上げて次のように判示します:

実用新案登録を受ける権利の共有者が、その共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に、右共有者の提起する審決取消訴訟は、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解すべきである(最高裁昭和五二年(行ツ)第二八号同五五年一月一八日第二小法廷判決・裁判集民事一二九号四三頁参照)。けだし、右訴訟における審決の違法性の有無の判断は共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって、右審決を取り消すか否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるからである。実用新案法が、実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは共有者の全員が共同で請求しなければならないとしている(同法四一条の準用する特許法一三二条三項)のも、右と同様の趣旨に出たものというべきである。

 共同出願に係る審決取消訴訟は、法律によって出願人全員で共同してなすべきと強制されている、固有必要的共同訴訟であると判断したわけです。審判において合一確定の要請がされているのも同様の趣旨だとして、根拠としているようです。

 ちなみに、この判決が引いている昭和52年(行ツ)28号判決は、裁判所のウェブサイトで見ることができないのですが、これを紹介した文献(「特許・意匠・商標の基礎知識」第3版)によると、同じく実用新案登録出願の拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の事案で、かかる訴訟は共有している権利(登録を受ける権利)についての、民法252条ただし書きにいう保存行為に当たると解することはできず、共有者全員で提起することを要する必要的共同訴訟であるとしていました。この平成6年の事件の判決は、この先例を確認して、「固有」必要的共同訴訟だとまで判断したものということのようです。

□「特許・意匠・商標の基礎知識」
 少々古くなってるようですが、試験対策の副読本に。

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コメント

ここまで書かれながら、なぜ無効審決取消訴訟のことにふれられないのでしょうか?

投稿: 同業者 | 2008年2月15日 (金) 14時36分

同業者様

コメントありがとうございます。
今回は、判決の範囲内でご紹介してしまいました。

無効審決取消訴訟の場合も、共有権利者側が原告となる場合、同様に審決合一確定の要請がありますので、必要的共同訴訟であることに変わりありません[※後続のコメントを要参照=単独で請求可とする判例あり]。

被告適格の要件の方はどうか、ということですが、この場合、法第132条2項、3項と、第179条とがありますので、自然に固有必要的共同訴訟ということになります。

コメントで追記させて頂きます。

投稿: ntakei | 2008年2月16日 (土) 00時29分

H14年2月22日の最高裁の判例は、無効審決取消訴訟の権利共有者の単独提起は適法と判断していますね。
請求認容であれば、再度特許庁で共有者全員で審判手続きすることになるし、請求棄却であれば無効審決が確定して特許権が遡及消滅するため、いずれにせよ合一確定の要請に反しないとの判断です。
実務上は拒絶審決取消訴訟と無効審決取消訴訟とで、取り扱いが異なるみたいです。
ただし、取り扱いを異ならせることに対しては、学説上の批判はあるみたいですが(平仄がとれているのか私も正直よくわかりません)、
てっきりこの判例をご存知で、何か意図がおありなのかと。

投稿: 同業者 | 2008年2月16日 (土) 23時33分

同業者さま

ご教示ありがとうございます。この判決は先学にして知りませんでした。
この判例(平成 13年 (行ヒ) 142号)は面白いですね。念のためその要旨を書き出しておきます。
「商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の無効審決がされたときは,単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当」
 142号事件では、出訴は一旦発生した権利の消滅を防止する「保存行為」である、と判断しているわけですね。そしてここでご紹介した平成6年(行ツ)83号事件との関係については、「事案が相違する」と判じています。
 なお、その「相違」はどの点が相違するという趣旨かが判決文からは明確でないですが、全体的にみて、142号事件での出訴は、登録された権利の消滅を防止する「保存行為」であるが、83号事件等での出訴は、特許を受ける権利のような登録されていない権利の消滅を防止するとはいえ、「保存行為」とは言えない、ということなのでしょうか。
 審決取消訴訟としての確定の効果にそんなに相違はあるかなぁ…。個人的にはちょっと納得が行きかねる理由付けで、この判例をテコにして83号事件をひっくり返すこととかできないのか、気になります。すこし射程を研究してみたいですね。
 ありがとうございました。

 えーっと、そうか。
このような判決もあるということですので、取りあえず、この判決要旨の範囲で、コメントの内容を修正させて頂きます。

投稿: ntakei | 2008年2月17日 (日) 00時22分

今手元にありませんので不正確ですが、田村先生の本に、「特許法は特許を受ける権利が共有の場合には、共同で出願することを要件(38条)とし、不服審判も共同で請求(132条)することを求めている。すなわち、特許を取得するまでの一連の行為は全て共同でやる事を求めている(ん?補正は?不利益行為でないから?)。だから、特許取得までの手続きに当たる拒絶審決取消訴訟も共同でやる必要があるんだ。これに対して、一旦特許になった後は、そのような共同で手続きを行う要請がないから、無効審決取消訴訟は単独でできるんだ。そのような考えが判決の結論が分かれた根底にあるんだ。」てなことが書いてありました。わかったようなわからないような・・・
射程についてですが、知財関連ってなんか無制限に拡大適用されてゆく気がしませんか?キルビー判決に対する104条の3の新設もそうですし、弁理屋さんが以前に触れられたようにリパーゼ判決に対する70条の改正もそうですし・・・
だからか、私も含めて弁理士は判決の射程について、無関心、無知な人が多い。

投稿: 同業者 | 2008年2月17日 (日) 01時26分

むむむ…。
その田村先生説は、私にはよく分かりませんsad
と、いいますか、納得がいかないです。

判例の射程ということについては、判示された事項の文言だけを形式的に抽出する方法に難があるのだと思います。
それで法改正まで進めちゃうのは剛腕というか、分かっててやってるのでは、と勘ぐってしまうところがありますが。

投稿: ntakei | 2008年2月18日 (月) 02時05分

上記の田村説ですが、どこに掲載されているのかというと・・・
特許判例ガイド第3版272ページにあります(事務所においてあるので、昨日は確認できなかった。)。
今読みましたら、私の要約は概略合っているようですが、さらに付け加えるならば、無効審決取消訴訟については、もともとの無効審判が権利者でない側から請求され、権利者は受動的な立場に置かれているから、権利者に十分な保護するためには共有者の単独による訴訟提起が認められるべきってなことが書かれています。
なんだか、よくわかりませんな。

投稿: 同業者 | 2008年2月18日 (月) 09時38分

ありがとうございます。
判例ガイドが手元にないので、機会をみて参照してみたいと思います。

しかし、やっぱり納得が行かない説明な気がしますが、田村先生でもそこまでの理由付けしかできなかったというように見るべきなのでしょうかdespair

投稿: ntakei | 2008年2月20日 (水) 02時08分

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