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2008年1月25日 (金)

[弁理士試験]判例案内(10)

こう寒い日が続くと、風邪でもひきそうだなぁと思っていたら、家族が風邪をひいて倒れました。少々看病疲れもしているのですが、疲れてばかりもいられないのは、そろそろ委員会の方の仕事も締め切りが近いのであります。そういうわけで、本日の記事は、少々駆け足で見ていける判例を選択してみました。

▽ 風邪をひきますと、子供の頃は、フルーツの缶詰めとかそういうのを食べさせられた記憶がある---というと、少々年寄っぽいのでしょうか。いや、私自身はあまり果物の缶詰めというより、葛湯を飲まされた憶えがあるばかりですが。

■ 平成 10 年(行ツ)19号
 この事件は、黄桃の新品種の発明に関するものです。判決の文章からみると、種々の黄桃品種を掛け合わせて特定の品種を得たらしいです。

 クレームを引き写しますと、

 従来周知の缶詰専用桃品種タスカンを種子親とし、これに花粉親として桃品種エルバーターを交配せしめて本発明者が改良育成した桃品種タスバーターを種子親とし、本発明者が偶発実生の黄肉の桃品種晩黄桃を交配せしめ、得た種子より発芽した植物を選抜淘汰の結果、
 本文に詳記し、図面に示すように葉緑がわずかに波立つが種子親タスバーター程には波立たない大きな被針形の葉を有し、花は、淡紅色の芯咲きで、花粉多く自家受精の性質を有し、結実多く、果実は整った円形で、果皮強靱であり、色は黄色地に陽光面に紅暈を現し、外観きわめて美麗であり、果肉は黄色で、肉質きわめて緻密で繊維少なく、粘核であり、核の周囲に着色が少なく、微酸を含む甘味を有し、果頂と底部との味の差がなく、芳香を有する桃の新品種黄桃を育成し、これを乗法により無性的に増殖する方法。
というものです。

 わかったようなわからないような。

 結局、発明に係る桃自体は、前半部に書かれている交配の作業によって特定されているわけですが、ここで問題になったのは、「晩黄桃」が失われてしまったことでした。

■ 発明の時点、及び出願の時点には、「晩黄桃」があったので、この発明に係る黄桃も得られたのですが、「晩黄桃」が失われてしまうと、本発明の黄桃は得られない。というわけで、発明の実施可能性が争われたわけです。
 判決は次のように言います。

 本件発明の育種過程は、これを反復実施して科学的に本件黄桃と同じ形質を有する桃を再現することが可能であるから、たといその確率が高いものとはいえないとしても、本件発明には反復可能性があるというべきである。なお、発明の反復可能性は、特許出願当時にあれば足りるから、その後親品種である晩黄桃が所在不明になったことは、右判断を左右するものではない

 発明の成立という意味では、本件は、反復可能性は一応満足しているわけですが、その反復可能性がいつ満足されていればよいか、という判断として、「特許出願当時にあれば足りる」としたのです。

■ したがってその後、晩黄桃がなくなったことではこの判断は変わらないというわけです。
 本件は、バイオ系の技術に固有のものなので、このまま試験に出るものではないと思いますが、反復可能性はいつあればよいかということについては、問われてもおかしくはないと思われます。もっとも、ポイントが絞られすぎているので、あまり出題可能性は高くないでしょうが。

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