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2007年12月28日 (金)

[弁理士試験]判例案内(7)

知り合いの勤め先を探すのに、google が使える場合があります。相手が弁理士ならば、大概、事務所のウェブサイトがあるので(弊所はまだ作ってないけど)引っ掛かってくれます。そうでなくても、勤務先のウェブサイトに名前が出ている人もいるので、google は重宝するのですが、たまさか、ある友人の場合は、彼の氏名が著名な画家の氏名と同じであるために、ウェブサイトに掲載はあるのに、google の順位としては相当下位になってしまい、google が使えません。

▽ こんなふうに、一方があんまり有名だと、他方がどんなに重要なものでも有名なものの影に隠れてしまうことって、ありませんか?

■ BBS アルミホイール事件の影
 まだ、この「判例案内」では採り上げていなかったと思いますが、特許製品の並行輸入をめぐる一つの事件(BBS アルミホイール事件)がありました。これに対する最高裁判決は、特許製品の並行輸入品が権利侵害とならない場合を述べた画期的な判決です(平成7年(オ)1988号)。この判例をいまのところ採り上げていないのは、既に数年前の弁理士試験で出題されたことがあるからです。
 いくら有名な事案でも、そう再三出題するとは考えにくいので、ここではいまのところ採り上げていません。

 ところで、この有名判決に対して影になってしまっているかに思われる判決があります。それはもう一つの BBS アルミホイール事件です。

■ 昭和60年(ワ)1833号事件
 弁理士試験の勉強を始めたてのころは、産業財産権法各法が基本的に、特許法をベースとして作られているというような錯覚を起こしがちです。
 しかし、特許から意匠法までが創作保護の法律であるのに対して、商標は手続的なところに共通点こそあれ、本質的に競業法なのですから、そこには相違があるのはむしろ当然です。並行輸入の事案で争う場合であっても、特許権と商標権とで異なる争いになるわけです。
 この昭和60年(ワ)1833号事件では、商標機能が害されていないことを理由に、日本での「BBS」商標権者による差止請求を退けています。しかしながら、この判決文については、電子データが裁判所から入手できないので、この辺の詳しいところを、別の事案ですが、「パーカー事件」という同趣旨の判決で見ていきましょう。

■ 昭和43年(ワ)7003号事件
 本件は、結果からみると確認の訴訟です。確認の訴訟というのは、
「原告に対して、被告が差止請求権を有しないことを確認する」
というような主文になる訴訟です。確定判決に執行力がないなどの特徴がありますが、まぁ、訴訟法上の問題については、ここでは触れないでおきましょう。付記試験講座ではないですからね。

 今回は、あの有名なパーカーの万年筆、ボールペンを並行輸入する業者(原告)に対し、日本でのパーカー商標権の専用実施権者(被告)が使用停止を求めたことで、本訴となったものです。
 判決文からすると、当初原告の求めた裁判は、
「被告が登録第一七一八六七号商標権の専用使用権に基づく差止請求権を有しないことを確認する」
というものの他に、
「被告は原告のなす主文第一項掲記の物品の輸入及び販売を妨害してはならない。」
というのがあったようです。ただ、販売妨害などについては却下になってますが、これはまぁ、妨害行為が実際にあったとは認められないから却下なのです。

 さて、本件で重要な部分を抜粋引用してみましょう。

(1)既に明らかにしたとおり、被告は米国から商標権者たるパーカー社において「PARKER」なる商標を附した製品を輸入し、これを国内で販売しているだけであり、日本において「PARKER」の商標を附した指定商品を製造しているものではない。

(2)(被告側の証拠によっては)「PARKER」商標が日本における特定の輸入販売業者から出た商品の標識であることが国内の需要者の意識に浸透しているものとは未だ認めるに足りない。

(3)原告の輸入販売しようとするパーカー社の製品と被告の輸入販売するパーカー社の製品とは全く同一であつて、その間に品質上些かの差異もない以上、「PARKER」の商標の附された指定商品が原告によつて輸入販売されても、需要者に商品の出所品質について誤認混同を生ぜしめる危険は全く生じないのであつて、右商標の果す機能は少しも害されることがないというべきである。このように、右商標を附した商品に対する需要者の信頼が裏切られるおそれがないとすれば、少なくとも需要者の保護に欠けるところはないのみならず、商標権者たるパーカー社の業務上の信用その他営業上の利益も損なわれないことは自明であろう。また本件商標の如く世界的に著名な商標については、各国の需要者はその商標が内国の登録商標であるか外国のそれであるかを問題とせず、商標が製造元を表示する点を重視して当該商標の附された商品を購入するのが通常であり、被告が内国商標の専用使用権者として有する業務上の信用は、パーカー社が右商標の使用によつて築き上げたパーカー製品の世界市場における名声と表裏一体、不可分の関係にあつて、これとは別個の独立した存在であるとは解せられ[ない]。

(4)原告のなす真正パーカー商品の輸入販売によつて、被告は内国市場の独占的支配を脅かされることはあつても、パーカー社の業務上の信用が損なわれることがない以上、被告の業務上の信用もまた損なわれないものというべく、むしろ、第三者による真正商品の輸入を認めるときは、国内における価格及びサービス等に関する公正な自由競争が生じ、需要者に利益がもたらせられることが考えられるほか、国際貿易が促進され、産業の発達が刺激されるという積極的利点があり、却つて商標法の目的にも適合する結果を生ずるのである。

 便宜上、番号を振り、下線を引くなどしました。特に主要な部分のロジックは(3)にあり、こうです。

 並行輸入品なので、真正品であり、輸入品と品質上の差異がないから、出所品質について誤認混同は生じない。つまり、商標の機能は害されない。

 さらに(4)まで話が行ってます。

 むしろ(独占輸入業者だけでなく並行輸入品が入ることで)国内市場での自由競争が促進されるから、商標法の目的に却って適合する。

 もっとも、(2)の部分からすると、対象の商標が日本での特定の輸入販売業者から出た商品の標識であることが国内の需要者の意識に浸透していればどうなったかはわかりません。その場合にどんな論理構成ができるか、考えて見られるのも面白いかもしれません。

■ 結論においては、特許でも商標でも、「並行輸入品の販売は侵害にならない」ということになってるわけですが、その結論に至るロジックは両者で全く異なっています。判例を勉強する場合や、判例に依拠して論文を書こうとする場合は、法律ごとの「らしさ」を含めた判例のロジックを追跡していくことが重要です。むろん、そのロジックによって、出題に答える結果になっていなければ、どんなにうまく再現できても得点にはなりませんが。

■ 今年の最終更新は(おそらく)31日です。なんせ、年末になって大変重要なこと(EPC2000の発効、ロンドン・プロトコールに関する動き)などがあったからです。もっとも、これが週末中にまとめられるかはとっても疑問が…。

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