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2007年11月 1日 (木)

UIむだばなし

液状の洗濯せっけんは、水が多少冷たくても溶解が早いように思え、これからの季節にちょうどいいように思っている。また、この液状せっけん、容器頭部に、液体の一時貯留部が設けられていて、しかもその一時貯留部に目盛りが打ってある。従って使用時には、容器胴部を押圧してせっけん液を一時貯留部へ目盛りをみながら導入していき、目盛りから見て適切な量になったところで、一時貯留部にあるせっけん液を洗濯機の洗濯槽へ流し込めばいい。別体のメスシリンダー(大げさ?)などを使う必要がないから、すこぶる便利、といいたいところだが…。

▽ 当該目盛りの打ち方に少々問題があるんである---NN/g(http://www.nngroup.com/)からつっこまれちゃうぞ!(ウソです)。

■ WAEI JITEN
 その昔、新和英中辞典の初版だったと思うのだが、とにかく、とある和英辞典初版の前書きを見たときの話。正確な文言は忘れたが、

本書で画期的なのは、従来ローマ字で表記されていた見出し語を、ひらがなで、かつ五十音順に配列したこと…

というような書き振りがあって大層驚いた。この記述が正しいとすれば、昔の和英辞典は、例えば、「とっきょ」という単語を引きたいとすると、そのローマ字表記、TOKKYOに置き換え、アルファベット・オーダーで、T、O…と探索していたということになる。なんたるムダ。
 …といいたいが、こういうのがまさに、ハインドサイトというやつで、後知恵であれば、いくらでも過去の表記法を詰れるんだけど、当たり前のことでも思いつくまでは、実際大変なんだよね。

 で、冒頭の液状せっけんの目盛りの話に戻るけど、ちかごろの洗濯機は頭(プログラム)がいいので、洗濯開始を指示すると、洗濯槽を回してみて洗濯物の量を測る。そのうえで、必要量だけの水を洗濯槽に入れる。だから、たとえ大型の、洗濯物の量にして7リットルを洗う洗濯機を買ったとしても、毎回目一杯の水が使われるわけではなくて、ごく少量の洗濯物だけであれば、そこまで行かず洗濯物4.5リットルぶんくらいの水(水の量で48リットルくらい?)で洗濯が行われる。せっけんの適切な量は、この使われる水の量に応じて変わるから、私としては洗濯機が導入する水の量をみて、液状せっけんを適切な量だけ計ることになる。ところが、液体一時貯留部の目盛りは、せっけんの量に対応している。で、使われる水の量に対するせっけんの量は、洗濯せっけんの背面ラベルに一覧表になっている。となると、

 洗濯機の表示をみて、使用される水の量を知る
         ↓
背面ラベルの一覧表から適切なせっけんの量を参照
         ↓
   適切なせっけんの量だけ計り取る
         ↓
       せっけん投入

という流れを毎回経ることになるのだ。
 だったら、

最初から水の量を目盛りに打っとけ!

と思うのは私だけだろうか。

■ UI
 ユーザインタフェースの特許権というのは、
取得すると強力ですよ(侵害が見て分かりやすい)、
というのはときどき聞かれる見解なんだけど、私としてはこれがどこまで本当かは実際にはわからないと考えている。技術的性質や、クレイムのやり方によっては容易に回避されちゃう権利になりやすい。
 一方であまり限定が緩いと、こんどは29条1項柱書(発明じゃない)という拒絶理由を受けたりする。

 たとえば、単に歌詞の情報を、曲名に関連づけてストレージデバイスに放り込んでおき、利用者が指定した曲名に関連する歌詞の情報を取り出してきて、ディスプレイに表示する、というだけでは、「単なる情報の提示」になる。
 だが、この歌詞が、動画になっているとかして、

歌に合わせて、歌うべき個所の色が変わるように記録してあります、それを再生します、

というと、話が違ってくる(平成9年(行ケ)206号)。このように---審査基準の言葉を使うと---提示それ自体に技術的特徴があれば(つまり提示する情報それ自体に技術的特徴があると、という意味だと解していいと思うが)、特許として登録され得る。

 情報表示に技術的特徴を求めていく典型例が、ゲーム関係の特許出願によく見られると思う。例えば、こんなのがある。

  •  特定の「技」をゲーム画面上のキャラクタに演じさせるには、複数段階の操作が必要になるものとする。しかも各操作には成否の条件があって、連続して複数段階の各操作に成功しなければ、「技」が現出しない(往年のバーチャファイターで必殺技を出すときなどがそうだったと記憶しているが)。
  •  だが、その連続した操作をマスターするのは結構困難で、しかもその操作で技が出るのかが分かりにくい。
  •  そこで、各操作がどれだけ連続して成功しているかを表すゲージを表示させることにして、達成度を知らせ、また、どれだけ技の現出に近いかを知らせることで、ゲームの楽しさを高めた。

 ここで、「複数段階の各操作がどれだけ連続して成功しているかを表すゲージの表示」がミソなわけである。この発明は登録され、特許発明になっている。
 ソフトウエアに馴染のない分野の方から見ると、

どうしてこれで特許になってるんだ

と思われるかも知れないが、コンピュータの処理手段として見たときに発明として成立している場合は、法上の発明としての成立性が認められるし、いったん法上の発明として認められると、あとは新規性等の問題になるから、従来なければ登録され得るわけだ。
 なかなかよく出来た権利である。ではあるが、まったく穴がないか、というと……。まぁ、この話はちょっと措く。

■ 実は以前、UIの特許というのがどの程度登録され得るかに興味をもって、個人的に事例をいくつか集めてみたことがあるのだ。各登録された権利がどれだけ行使に耐えているかを知る立場にないので、権利の強さは単なる憶測でしかないが、回避困難な権利の取得がいかに難しいことか、というのがまず一つの印象であった。たいがいちょっと考えつきそうな回避策がある。もっとも、そういう回避策が考えられるのも一種のハインドサイトであって、プロセキューションのプロセスが、そうは簡単でないことは分かっているつもりだ。
 一方で、驚くほど技術的範囲の広いクレイムが特許になったりしている。それはもう、思わず我が目を疑う広さである。これは取れたら取れたで凄いことだが、やっぱりこれで権利行使に意気揚々出られるかといったら、ちょっと慎重になっちゃうだろうなぁ、と考えてしまう。無効にされちゃう可能性を考えるとねぇ。
 UIでの権利が求められる場合、いろいろな抽象度の高いレベルから、実施例のレベルまでで権利の可能性を展開してみて、回避対応・無効対応を事前によく練ってクレイムを作成していく必要があるわけだ。これはこれで相当な作業であるし、報われるとは限らないので、結構大変。

 は? 液状せっけんの目盛りのインタフェースは特許になるかですって?
 いいえ、ここで発表いたしましたので、新規性を欠くでしょう(そもそもそれ以前に、液体を計り取るときにつかう目盛りで、相方の量に合わせて引いてあるものがありますね?)。

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