« [アンケート]米国ルール改正、どれが嫌? | トップページ | 「初音ミク」ちゃんと、biomen »

2007年10月 9日 (火)

新・面接ガイドラインのはなし

事務所開設に向けての作業もいろいろあって、私としては休日も休日にならないのに、そのうえ委員会の仕事も忙しい時期に入ってきてキツイ。ただ、たくさんの判決をざーっと見ていると、同じようでも主張のポイントというのがそれぞれ少しずつ違うものだなぁと、おもしろい。いや、事案ごとの相違というのとはまた少し違う、なんというか、主張の仕方の相違っていうのがあるような気がする。

▽ さて、アンケートのインターンの話じゃないけれど、資格を取っただけでは分からない話が当然ながら、ある。最初のうちは、個々の手続が、あーXX法XX条の手続というのはこれか、と知識と対比して面白かったりするわけだけど、そのうち実務上の知識というのが単なる法律の知識とは異なっていることに気がついてくる。

■しゅこう
 そういった手続の中で、実務上、割と多いのに、あまり試験勉強では出てこない手続がある。そのうちの一つじゃないかと思うのだけど。「手交(しゅこう)」というやつ。要するに面接の審査なんだけど、面接の結果、最後に軽微な記載不備をちょっとだけ直して特許査定しようというとき、
代理人か出願人が特許庁へ行って、

「最後に、こういった補正を致したいと思いまして」

と、代理人か出願人が審査官に補正案を提示する。すると審査官は、それをみて、拒絶理由が解消しそうだと思えば、

「わかりました」

と言って、記載不備の書かれた拒絶理由(提示した補正によって解消されるはずの拒絶理由)を渡す。代理人らは、それに記名・押印して返す。
 最後に、代理人らは補正書を提出する。あとは特許査定を待つだけになる。
 こんなのが手交という手続である。

 さてこのとき、「代理人」事務所の誰かが行って同じことができるだろうか、というと…。

■代理
 代理の制度は、

  • 私的自治の拡張
  • 私的自治の補充

の2つの柱を趣旨とする。
 「…の拡張」のほうは、代理人をつかうことで本人の活動範囲を広げるニーズから認められるもので、主に「任意代理」に対応する趣旨である。他方の「補充」は、法定代理に対応する趣旨である。弁理士が代理をさせて貰うという場合、これは当然ながら任意代理による。
 代理制度の最大の特徴は、手続をとるのが代理人であったとしても、その手続によって発生する効果は、それが良い結果であると否とに関わらず、代理人をスルーして本人に帰属するということである。それゆえ、「本人」である方々の求めを満足するよう、代理人は全力を尽くす。そうでなければ信頼関係が築けない。
 弁理士の資格というのは、特定の手続における代理人となり得る地位を得るためにある。弁理士でなければ、例えば特許等の特許庁における手続を業として代理できない(弁理士法4条)。
 しかるに、弁理士事務所に就職した受験生らが、この種の手続を遂行するとすれば、それは「代理」ではなく、その弁理士事務所に属する弁理士のだれかが代理している案件について、「担当」しているに過ぎない。
 ということは、例えば「手交」のような手続で補正案を示してみたり、ということがされても、それが「代理」でない場合は問題がある。代理人でない以上は、本人である出願人と関係のない人間になってしまうわけで、それが補正などの重大な手続を行うわけには行かないからだ。

■2001 年 面接ガイドライン
 このことは、手交に限らず、一般的な面接の場合でも同様である。
 ただ、巨大な弁理士事務所の中には、所長である弁理士がノータッチのままに、技術者が独自に処理している案件があるのではないかと疑いたくなる場合がある。たとえば所長1人で技術者が数十人とかいう事務所などである。現実の中身を知らないが、どういうチェックができるというのだろう、というわけである。
 しかしながら仮にそうだとすると、面接に所長が出てきても中身も分からずじまいになってしまう。その事態を憂慮してのことか、2001 年の面接ガイドラインは、「出頭者の要件」として、次のように定めていた。

□5.1.1 出頭者の要件
(1)面接は、迅速かつ的確な審査に資するために審査官と出願人又は代理人との密な意思疎通を図ることを目的とするものであるから、面接における出頭者は、面接を行う審査官の要請等に対して、責任ある対応をなしうる者であることが必要である。
 このため、出頭者には、出願等の手続きについての知識を有し、当該出願に係る発明についての技術的知識を有し、かつ、当該出願の処分についての出願人の意思を的確に表示できる者であることが求められる。

(2)迅速かつ的確な審査に資するという面接の趣旨を、よりよく実現するためには、極力、出頭者としては、
a.出願人(法人出願にあっては法人の代表権を有する者)、
b.本件出願について予め届出のある代理人たる弁理士又は指定代理人、
c.出願人又は復代理人の選任権を有する代理人から、審査官との面接についての委任を受け、これを証する書面(委任状)を持参する弁理士、のいずれかとすることが望ましい。
 なお、これらの出頭者は必要に応じ発明者や担当スタッフ(法人の特許部員、弁理士事務所の職員等)を同伴者とすることを妨げるものではない。

 ※着色は、著者。
 代理人の出頭を求めるが、発明者や、担当スタッフ(弁理士事務所の職員等)を同伴者とすることを妨げない、としているのだ。特許庁側も分かっている人材と話したいのだ。
 それが先週末に公開された面接ガイドラインでは、次のように変わった。

□4.1.1 出願人側の応対者の要件
面接における出願人側の応対者は、その面接内容が特許審査に関わる内容に及ぶことから、責任ある応対をなし得る者であることが求められます。

(1)代理人が代理している場合
当該代理人(ア.指定代理人、イ.出願人又は復代理人の選任権を有する代理人から、審査官との面接についての委任を受け、これを証する書面(委任状)を持参する弁理士を含む。)と面接を行いますが、その際、上記趣旨に照らし、できる限り代理人のうち当該案件を直接担当している担当弁理士と面接を行うようにします。
この際、弁理士事務所員については、面接の同席は許容しますが、審査官と直接的に意思疎通を図ることはできません。一方、出願人本人、又は出願人本人以外の知財部員等については、同席して審査官と直接的に意思疎通を図ることが可能です。

 ※着色は、著者。
 なお、弁理士であっても、代理人、または担当弁理士として出願書類に明記されていない場合は、代理権を証明する書面を求めるという(脚注7)。担当者を多く抱える巨大事務所にとっては、ちょっとショックなのではないだろうか。
 事務員は同席できても、審査官と直接に意思疎通はできないというので、こんな場面が想像される。

場所は審判廷のあの狭い部屋である。時間的には黄昏時というのが場面にあってる気がする。扉の窓から霞が関ビルに反射した夕日が入り込む。
所長弁理士「…以上が、引例との相違点にあたります」
審査官「はぁ。ただですね。いまの請求項の記載だと、XXがそこまで限定されていないと思うのですが」
所長弁理士「は。ちょっとお待ち下さい」
弁理士と担当者が書類を手に話し込む。審査官はその間、ボーッと待っている。
所長弁理士「…お待たせしました。えー、いや、あのう、XXにつきましては、先程ご説明した内容以上に読めるということでしょうか。」
審査官「はい。XXについてはxの場合もありますが、yの場合もあり得ますよね?」
所長弁理士「ちょっとお待ちを。」
弁理士と担当者がまた書類をめぐって話し込む。審査官は、その間またボーッと待っている。
所長弁理士「えー、お待たせして済みません。ただですね。yと読むためには、単にXXではなくてYXXのようにいうのが一般的じゃないかと…」
…以下略…

話の筋はもっと過激にできるけど、ちょっと自粛。いずれにしろ、こういうように弁理士を仲介させたやり取りが続くようでは、お互いにやりにくいと思うんだけど。まぁ、制度上そういうものだろ、と言われるとその通りだけど。

■ さらにショックなことを言えば、この要件、電話連絡の話にも準用されている(「5.電話・ファクシミリ等による連絡」を参照)。今後は、補助者による対庁手続が厳しく制限されることが予想される。いや、補助者だけじゃない。弁理士だって代理していない弁理士は手続が制限的になることが予想される
 補助者に限ってみても---業務を技術スタッフとかいうのに任せておくな、という見解は正論なんだけど---私のとこみたいに、これから立てる事務所とか、新興のところはまだいいとして、旧来からある事務所の場合、「いまさら…」的な状態になったりしないだろうか。最近まで良いようなことを言っていて、突然に

「ダメになりました」

というのがどういう影響になって出てくるやら。案件の蓄積のある事務所はこれからの手続が大変かも知れない。

|

« [アンケート]米国ルール改正、どれが嫌? | トップページ | 「初音ミク」ちゃんと、biomen »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165428/16705664

この記事へのトラックバック一覧です: 新・面接ガイドラインのはなし:

» 中学受験で成功する子供 [中学受験 受験させたい 受験のコツ 子供の為に中学受験]
こんにちは!こどもの受験を真剣に考えてるあなたに情報収集できる場所をと思って紹介してます。 [続きを読む]

受信: 2007年10月 9日 (火) 07時17分

» 医療事務資格 [医療事務資格]
医療事務資格についての情報サイトです。 [続きを読む]

受信: 2007年10月11日 (木) 10時32分

« [アンケート]米国ルール改正、どれが嫌? | トップページ | 「初音ミク」ちゃんと、biomen »