« なごり | トップページ | ネットワークむだばなし »

2007年9月19日 (水)

米国弁護士の腕

様は魔女」シリーズの全作DVD化ニュースがあってビックリした。人気のあるシリーズだとは思っていたが、まさかぜんぶDVD化とは。あの当時やっていた海外ドラマのまるごとDVD化って、案外売れるものなんだろうか。だったら、「バイオニック・ジェミー」とか、あのあたりも、また観てみたい気もするが…。いかにもアメリカらしい話だった…ような記憶があるが…。

□「奥様は魔女」DVD−BOX

▽ いかにもアメリカらしい、と、知財でいえば、プロセキューションの方も特徴的なんだけど、権利行使の方でも、ディスカバリーみたいにちょっと怖い制度があったりする。先日、「国際商事法務」という雑誌に掲載されていた記事(Vol.35, No.9 (2007),p.1221-)によると、どうも東芝が絡む訴訟で、ディスカバリーに関して制裁命令(サンクション・オーダー)が出されたらしい。

■ 証拠開示
 ディスカバリーというのはアメリカ流の証拠開示の手続で、これが恐ろしいのは、不利な証拠があったとして、これを隠せば訴訟上の不利益を被るわけだけど、文書管理が疎かであるために、その証拠がありながら提出ができなかった、とかいう場合があり得るからなんだ。
 特に最近は電子文書についてもディスカバリーが及ぶという話になっていて(eディスカバリー)、米国を視野に入れるのであれば、電子文書までを含めた企業内の文書管理のポリシー徹底が求められるわけだ。いわゆる litigation hold というやつ。実際に提起されている訴訟に関連する文書だけではなくて、将来提起される虞があると合理的な理由から判断できる訴訟に関連する文書について、その保存・破棄のポリシーを定めておくわけだ。

 ほんとうをいえば、日本の特許事務所においてだって、プロセキューションの過程で発生した通信文などをどう保存して、どう破棄するかというポリシーを万全に定めておくことが望ましいはずだけど、そこまでやってる事務所がいったいどれほどあることやら。

 いや、しかし問題は文書だけではない。ディスカバリーの方法は文書提出命令だけでなくて、回答を求める場合(いわゆる Interrogatory)や、最近、外国代理人がよくデモしてる「Deposition」なんかがあるのだ。特に Deposition は、その場での回答が求められるわけだから、この制度に慣れてない外国(この場合、米国以外は「外国」だ)人にとっては、対応が困難になるのは当然といえば当然。ちょっと酷い話なんである。

 一応知っておいて損のない話として、ディスカバリー要求への対抗策というのがないでもない。たとえば日本での文書提出命令にもあるような、イン・カメラ手続の申立みたいなこともできる。これにはプロテクティブ・オーダー(Protective Order)という申し立てをするのである。法的なハラスメントなどからの保護の要請によってできあがっている制度だというが、開示範囲などを相手方と合意するとか、裁判所に申し立てるとかするわけである。イン・カメラの制度とはちがって、いろいろな開示方法を提案できるらしい(デポジションを日本でやれ、とか)。まぁ柔軟な制度なのである。

 このほか、わりとよくまとまった説明が、その国際商事法務の記事(Vol.35, No.9 (2007),p.1221-))に出ているので、ご参考まで。

■ で、本件
 で、本件だが、東芝側が、訴訟対象となっているラップトップコンピュータの BIOS(Basic Input/Output System)のソースコード開示を求められたのに対し、東芝側が当初、ソースコードは東芝にはなくて、外部の会社にしかないので、

Unavailable

だ、と回答したのに、その後、東芝側の証人が

東芝は BIOS ソースコードを保有している。ただそれは機密情報なので開示できない

という証言をしてしまったようなのである。
 記事によると、どうも東芝側の弁護人が

ヘタこいた

という話らしい。
 その結果、裁判所は、東芝側に大層不利な制裁命令を発行したわけだ。
 ちなみに、その内容というのが、

  • 冒頭陳述時間を原告の1/2とする
  • 最終弁論の時間を原告の1/3とする
  • 特許権非侵害について被告側の専門家証人尋問申請を禁じる
  • 陪審員に対し、故意に証拠を隠匿した旨を考慮してよいと説示する
  • その他

などとなっている。怖いねぇ。特に専門家証人尋問申請の禁止は、陪審員を入れた裁判では相当不利になってしまいそうな気がする。

■ 弁護士の腕
 米国の弁護士の腕、というのはあまり日本では話題にならないことだけど、こういう「事故」が起きると、いやがおうにも気になってしまう。特にいつも付き合いのある代理人は大丈夫だろうかとか、そういうことだ。
 最近話題になった KSR の事件でも、かなり突っ込んでよくよく調べてみると、Teleflex 側の弁護士が「下手こいた」と見られる話が散見される。こういうのを見る限り(最高裁の判示内容には一定の意味を認めるとしても)、弁護士のちょっとした油断・失敗が敗訴原因になっている例もあるものだなぁと気になってしまう。せっかくプロセキューションで我々が有意な権利を創設してもそれを運用する側がそれじゃぁなぁ…(たまーにプロセキューションで下手なこと言いやがって、みたいな話がでてくるんで、こうしてときどき逆襲してみたりして…。いや別に仲が悪いわけじゃないですよ?)

|

« なごり | トップページ | ネットワークむだばなし »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 米国弁護士の腕:

» NY市長が陪審員候補に(2度目) [弁護士・訴訟・判決ニュース]
日本版陪審員制度である裁判員制度が来年(2009年5月)にもはじまりますが、米国ではNY市長まで陪審員として呼ばれる訳ですね。ちょっと驚き。 有権者リストから抽選で陪審員候補を自動的に抽出して、弁護士や検事が候補と面談した上で、陪審員として選任する手続きを踏むからこんなことが起きるらしいです。(日本の裁判員制度も同じような手続きを踏むのでしょうか?) NY市長が陪審員候補に 選任は見送 ... [続きを読む]

受信: 2007年9月20日 (木) 11時38分

« なごり | トップページ | ネットワークむだばなし »