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2007年9月28日 (金)

[弁理士試験]条約案内(12)

論文試験合格者の方は、もうすぐ口述試験ですね。口述試験というのは、すこし前までは落ちる人が年に数人の程度だったので、不合格になるのでは、というプレッシャーが物凄かったのです。しかし最近では約1割が不合格となるということで、却って開き直れるというか、そんな感じなのかなぁと想像しています。

▽ あの試験が昔のままの採点基準であるとすると、要するに人間を観る試験なので、落ちるということは受験の態度か、人の話を聞く態度か、どこかに問題があるということです。科目別にいえば、一科目くらい失敗するのがよくある話で、その程度で悔やんではいけません。
 さて、今回から特許協力条約(PCT)の内容についてです。

■ 条約と規則とがあります
 PCTを勉強する場合、条約本文だけを見ていてもダメです。規則の一部には重要なものもあるので、そこまで知っておく必要があるのです。しかし、とりあえずは条約本文の構成を中心に見ていきましょう。

■ PCTで現れる登場人物
 まず、整理を容易にするために、各登場人物の名前を簡約化してしまいましょう。どうにも長い名前が多いのです。
□国際事務局=IB(International Bureau)
 各国の手続書類を仲介したりするところです。いつぞやからは、受理官庁としても機能するようになりました。

□受理官庁=RO(Receiving Office)
 国際特許出願を受理するところです。例えば日本で言えば特許庁ですね。

□国際調査機関=ISA(International Searching Authority)
 国際特許出願について必ず行われる国際調査を遂行する機関です。ここが作成する報告は、国際調査報告(ISR)といいます。

□国際予備審査機関=IPEA(International Preliminary Examining Authority)
 チャプター2に入ったときに国際予備審査を行う機関です。ここが作成する報告は、国際予備審査報告(IPER)といいます。

□指定官庁=DO(Designated Office)
 最終的に権利を求める国の官庁です。

□選択官庁=EO
(Elected Office)
 指定官庁のうちで、予備審査の結果の利用を求める場合、「選択」というのをします。それで選択されると、指定官庁ではなく、特に「選択官庁」と呼ばれるようになります。

■ PCTでの書類の流れ
 出願人は、ROに対して出願手続を行います(10条、R19.1)。以下、関連する規則については、「R」と書きます。R19.1と書いたらそれは、規則19.1が関連していることを示します。
 最初ですから、念のため、規則ってどんなことが書いてあるか見てみますか?
 あ、その前に条約本文から。

□10条 国際出願は、所定の受理官庁にするものとし、受理官庁は、この条約及び規則の定めるところにより、国際出願を点検し及び処理する。

□R19.1 出願先
(a) 国際出願は、(b)の規定が適用される場合を除くほか、出願人の選択により、次のいずれかに対して行う。
(i) 出願人がその居住者である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁
(ii) 出願人がその国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁
(iii) 国際事務局(出願人がその居住者又は国民である締約国のいかんを問わない。)
(b) 締約国は、他の締約国又は政府間機関との間で、当該他の締約国の国内官庁又は政府間機関が自国の国内官庁に代わつて自国の居住者又は国民である出願人のための受理官庁として全部又は一部の目的のために行動することについて合意することができる。その合意にかかわらず、当該締約国の国内官庁は、第十五条(5)の規定の適用上、権限のある受理官庁とみなす。
(c) 総会は、第九条(2)の規定に基づいて行つた決定に関連して、その特定した国の居住者又は国民の出願のための受理官庁として行動する国内官庁又は政府間機関を選定する。その選定には、当該国内官庁又は政府間機関の事前の同意を必要とする。

 居住者であるか、国民である締約国の国内官庁、IBなどからROを選択できるようになっているわけですね。
 さてROは、記録原本をIBへ送付し、写し一通をISAに送ります(12条)。

 ISAは、特別のことがない限り、ISRを作成します(18条)。ISRは、出願人とIBとに送付されます。IBは、国際出願とISRとをDOへ送ります(20条、R47.1(a))。

 出願人は、ISAを受け取った後、2月または優先日から16月のどちらか遅い日までに請求の範囲について補正を行うことができます(いわゆる19条補正)。

 出願人は、この後、一般的には優先日から30月までにDOに対して翻訳文などを提出して、「国内移行」という手続を採ります。なおDOは、出願時に何もしなければ締約国全てが指定されているのですが、そのすべてに対して手続をする必要はなく、権利が欲しい国に対してだけ手続をすればいいのです。

 その後は、各国での取り扱いに応じて異なる手続となります。
 あぁ、そうそう。PCTの各国移行前までの手続を、International Phase、その後各国での手続を、National Phaseとよく呼びます

 もっともスムースにいった場合で、こんなのが chapter I の手続です。
 念のため、図示しておきます。

0709281

■ えっ? はい。そうですね。カンの鋭い方は気がつかれましたね。

優先日ってなんじゃい。

 はい。その説明がまだでした。優先日というのは大層便利な概念で、2条(xi)に規定があります。

□2条(xi) 「優先日」とは,期間の計算上,次の日をいう。
(a) 国際出願が第8条の規定による優先権の主張を伴う場合には,その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b) 国際出願が第8条の規定による2以上の優先権の主張を伴う場合には,それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c) 国際出願が第8条の規定による優先権の主張を伴わない場合には,その出願の国際出願日

つまり、一番最初の優先権の発生日のことです。

 あ、それから、最初から全指定になってるのに、「指定国」とわざわざ言う理由なんですが、これはその昔(といっても2002年くらいまでは)、出願時に一々指定をしていたからなんです。この手続は結構デリケートで、あとから指定を追加できないことになっていました。そのため、

全部指定しといて後からいらなきゃ国内移行しなきゃいい

という安全策がよく採られていたのです。そこで、その後、

優先日から15月経過時に「確認」を求め、そこで必要な指定国を確定させる

という制度に変わりました。さらにその後、

全指定としておく。

となったわけです。しかし、こうすると、日本国も指定されてしまうので、例えば日本国出願を優先権の基礎としてその後PCTの出願をすると、後で説明しますが、自己指定の効果によって、国内優先権が主張されたのと同じようになり、優先日から1年3月後に取下げられてしまいます。これは好ましくない場合があって、国内出願はそのまま残しておきたい、という出願人は、一々指定取下げの手続をとっておりました。そして、最近では、

全指定とする。ただし、日本を除くならばその旨を記入しておけ

という制度になったのです。
 どうです? PCTというやつ。けっこう頻繁に制度が変わります。出願人に使いやすい制度を模索しての結果ではあるのですが、試験用の題材として見た場合、改正点がからむとちょっと大変そうですね。
 次回は、chapter I の手続をもう少しくわしく見ます。その後、chapter II の手続を概観いたしましょう。

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