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2007年7月26日 (木)

他山の石---まちがい話再び

特許事務所というところは基本的に信用で成り立っているところがあるので、明細書の質については好みの問題もあって評価が分かれたとしても、期限管理などの事務的側面が確固としていると、それだけで存在意義があるものだ。と、ある外国の特許事務所もそんなで、オリジナルの明細書はどうにもあまりいただけないのだが、事務管理についてはカッチリしているらしく、そこを買われているという。

▽ ついこの間、「起電力」を「超電力」とするミスがあったと発表された弁理士試験の選択試験であるが、今度は物理系の選択科目で「円柱」とすべきところを「円筒」としてしまうミスがあったらしい。

■円筒と円柱
 円柱も円筒も cylinder ではあるんだけど、敢えて両者を区別するならば、円柱は cylinder solid で、円筒は cylinder hollow なんだ。要するに円筒の場合は、筒状になっていて、中が詰まってないわけだ。その結果、問題によっては積分範囲が異なっちゃう。
 そもそも問題文にも、少々モノいいたくなる点がないとはいえないが、それはそれとして、(1)の問題によると密度がρだという。どうも表面だけに質量が分布していると考えるならば、この密度は面積あたりの質量になってしまうわけで、弊所のメンバーの一人によれば、

それは無理のある解釈じゃないか

というのだけど、円筒は円筒だからなぁ。

 まぁ、円筒の場合と、「密度」あたりの文言から空気を読んで円柱と解釈した場合とを正解にすればいいのかな。
 結果としてはそれでいいのかも知れないけど、試験を受ける側からすると、こういう問題にはそれこそ36条(記載不備)の拒絶理由をぶつけたくなる。ただ残念なことに、これは出願明細書でも、特許請求の範囲でもないんだよね。

 しかし、今回のミスは前回のもののように単純なタイポではない。問題の内容を分かって書いていてこの結果があるわけだ。どこかで問題文をこそっと弄ったのかも知れないけど、あまりに雑な出題だったと言わざるを得まい。ちょっと問題がありすぎないだろうか。

 あたっちゃった受験生の方々には、お気の毒でした。
 ただ、実務じゃぁ、こんなのの連続だからな。

■飛び交う社内用語
 今回の新潟の地震でもちょっと話題になった、トヨタ自動車の「カンバン方式」じゃないが、あの「カンバン」のように、何かに喩えられたネーミングのまま定着した技術用語というのがないとは言えず、それが社内では普通の用語として通用してしまっている場合というのがある。
 社内では慣れてしまっているためにわからないことが多いようだが、部外者からみると、わかったようで分からない言葉になる。あるウェブページ(http://career.livedoor.com/feature/tech/tec00/ks010/)では、社内用語で起きたトラブル事例がいくつもあがっていて、例を引用してみると、機械加工品を「ワーク」と呼んでいる会社の場合に、「ワークが足りない」といったら、「何の仕事が足りないのか」と返されたとか。
 特許明細書で使ってしまうと、発明の特定が困難になってしまう場合、36条拒絶の元になるし、第一、権利の解釈のときに大いにもめるので、社内用語は一般的な用語に置き換えて出願するという方針が基本的である。
 ただ、発明者との会話には、どうしてもこういう用語が必要になるわけなので、慣れるまでは難しいものである。
 一般用語に置き換えて原稿を出すと、発明者から「ちがいますXXです」と、社内用語に訂正されたりして。この場合、知財部の方に電話をして事情を説明し、他の用語候補か元へ戻すかを検討することになったりするわけである。

■特許事務所にもある「スラング」
 とはいえ、灯台下暗しというべきか、事務所にもスラングというのがある。
 例えば、作成した明細書の原稿を、クライアントに確認してもらうために送ることを、

「査読(サドク)」

と呼ぶ事務所がある。こういう事務所では、「査読に出して下さい」というような話になるわけだが、同じことを別の事務所では「チェック出し」とか「CK出し」とかいう。不用意にお客様に対して

「先日チェックダシさせていただいたヤツですが…」

とか言ってしまうと、相手に分かったかな、と不安になることも…。相手に合わせるのがよいと思う。
 外内(ガイナイ)、内外(ナイガイ)というのもスラングだろう。外内は、外国企業や、外国の代理人からの依頼を受けて国内出願をすることだ。多くの場合、パリ優先を伴うかPCTの国内移行になる。内外はその逆で、国内出願人からの依頼を受けて外国へ出願することである。ただ、これについても「外内」を「輸入」、「内外」を「輸出」という事務所もある。従って時々は事務所間で話が通じなかったりもしたりして…。

ウチは輸入が少ないからねぇ

なんていうと、

えっ、貿易商もやってんの?

とか。いやいや、「外内」が少ないということで。

 まぁ、スラングは限定的な範囲であってもちゃんと意味が通じるし、「円筒」と「円柱」のような関係とは少々違うのであるが。いや、似たようなこともないとは言えず、今回の特許庁のミスは、他山の石としたいところである。

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