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2007年7月18日 (水)

形式論か否かという、はなし

アップルのCEO、 Steve Jobs の給与は、年間1ドルである。これは、この人独特の皮肉…なのではなくて、社会保障を受けるために形だけ給与を出しておく必要があるからだそうだ。実質無償で働いているわけである。米国で先行して発売された iPhone は日本でもそれなりに話題になって、しかも、端末が比較的高価なのに売れている現実を見て、政府などは「あれに倣え」と号砲を打っているようだ。

▽ 政府としてはそういう方向へ持っていって経済的発展をもっと促したいのだろうけど、経済の構造が違うんだから、そんな形ばかり米国風にしなくたって…。

■形式的?
 それは私がまだ教育指導を受ける側だったころのこと。その新規出願案件は喩えていえば---現実の案件をお話するわけにはいかないので、タトエバナシになる---、ワインの発明であったが、技術的思想として純粋に取り出してみれば応用範囲は広く、ビールや清酒にもつかえそうな話であった。
 とはいえ、ワインの醸造とビールの醸造とは多少の相違もあって、共通点を捉えた上位概念語を使ってクレイム(特許権を請求する範囲を表現したもの)をつくり、指導担当(所長だった)に持っていってみると…

「…分かりにくいなぁ…」

と一発。クレイムに現れる各語について、ワイン醸造で使う言葉を何故使わないか、ときた。

「ビールや清酒にもつかえる話かと思いまして…」

と私。すると、所長、

「…だって、このクライアントはワインしか造ってないじゃない」

 要するに顧客製品をカバーするには広すぎるクレイムだというわけである。
 この所長のいうことにも一応、理はあって、形式的にダダ広いクレイムを書いて権利を獲得しても、実施してない技術だと、損害賠償も覚束ない場合があるからだ。つまりは損害の発生がなかったと認定されてしまうわけだ。
 そのときは所長の指示でもあったし、ワイン用語に書き換えてクレイムを限定したが、しかし、満を持して(?)持っていったクレイム案が否定されてしまったわけだから、私としては多少ヘコむし、別段限定してやんなくてもいいじゃん、と反発を覚えたものである。
 サポート要件についていろいろウルサイ今日この頃である。クレイムをダダ広く書きたいのならば、対応する明細書もダダ広い技術に適用可能であることを示したものでないといけない。時代は、この所長案だろうか
 広いクレイムを確保するために明細書に一々書いて行くと明細書が長くなりすぎてコスト的に問題が発生する。だから、記載を工夫して最上位を確保しつつ段階的に落とし込めるようにする。この作業が案外ホネである。

 あれから月日は流れたが、いまでもクレイムを作成しつつ迷うことがある。このクレイムはクライアントにとって適切な広さになっているだろうかと。

■外箱
 ファンの羽根についての発明があったとして、そういう羽根を備えた「ファン」とクレイムすれば、それはファンの部品単体で侵害の発生が想定されていることになる。一方、そのファンを「備えた扇風機」とすれば、このファンを搭載した扇風機での侵害が想定されていることになる。むろん、特許権者としては、ファンのクレイムに基づいて、それを搭載した扇風機製造会社を攻めてもいいわけだけど、それなら「扇風機」と書くほうが、対象がハッキリしていていい。
 実施品をクレイムするという立場で言うのならば理解できるのだけど、形ばかり外箱を大きくクレイムするという場合もないとはいえず。時折、本当に良いのかなぁとは思いつつ。ただ、外箱を大きくするべきという考え方は、昔から実際にあるものだし…。
 というわけで(?)「ファン」をクレイムしておいたら、さらに「それを備えた扇風機」もクレイムして欲しい、と修正指示を受けることがある。米国出願も後にあると思うと、こちらとしては、つい完全性を考えてしまうので、対象物のサイズが大きくなるたびに明細書に書き込むことが増えてしまう。

 これは過去にいた事務所での話。あるとき、この指示を受けた同僚Xが、明細書に追記するべき事項が増えてしまい、苛立ちつつ冗談交じりに、

「ええい、じゃぁ、『扇風機を置いた部屋』とか、その部屋を含む建物とかクレイムしてやろうか!」

と喚いた。それを聞いた別の同僚Y。

「ついでだからさ、建物の立ってる土地とか、その土地を含む国土とか…」

さらに別の同僚Z、

「当該国土を含む地球地球を含む宇宙…」

そしたら、X氏、Z氏を遮っていわく、

「それはだめだよ。それはだめだ。特許権は属地主義だから。」

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