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2007年7月13日 (金)

[弁理士試験]条約案内(1)

2次試験も終わりましたし、まだ来年の試験準備のキックオフも早いでしょうから、商標法案内も一段落させて、少々寄り道(?)して、条約あたりを見てみましょうか。え? ムダですか? そりゃまぁ、ここは「むだばなし」のページなんでして…。

▽ もっとも条約類は、いまや直接的には2次試験科目ではないわけですが、勉強しなくてもいいわけでもなくて、今年のように絡めた問題は出題され得ます。だいいち、一次試験ではまだ射程範囲です。

■ちなみに
 ちなみに試験科目だった頃の勉強法といえば、スタンダードには基本書を読むことでありました。例えばパリ条約でいえば、後藤先生の「パリ条約講話―TRIPS協定の解説を含む」、すこし古い本になりますが、まだWIPOがなく、国際事務局がBIRPI※と呼ばれていた頃の局長、ボーデンハウゼン教授の「注解パリ条約(アマゾンにありませぬでした)」などがあります。PCTについては、これといったものがないのですが、橋本先生の「特許協力条約逐条解説」が一応の基本書と言えました。
※日本ではビルピと読む人が多いですが、外国人はビーアイアールピーアイとふつーに読んでるみたいです。なお、これはWIPOも同じで、WIPO現地ではワイポと読むな、と言われているらしく、通常、ダブリュアイピーオーと読んでほしいらしい。

 ところが、パリ条約の場合、二次試験の問題としては、1条から11条までしか出し得ないのです。特に4条の優先権については頻出問題、というかおおよそそのあたりを中心にしておけば問題がないということでした。そんなことですから、基本書を読むといってもムラのある読み方をしていたと思います。
 PCTの逐条解説にいたっては、論述の理由付けにつかえそうな文言は数えるほどしかなく、実質、PCT逐条解説は弁理士試験には要らないという人もありました(買う前に言ってほしいよ)。
 同じ橋本先生の本ですが、「特許関係条約」の方がよくまとまっていますので、初学者はこのあたりから入る方が良いかも知れません。

 もうひとつちなみに、当時の試験問題としては、パリ条約については規定内容を説明させる問題、PCTについては、手続をからめて、取り得る措置を列挙するとか、そんな問題が多かったように記憶しています。

■それでパリ条約

 それで、まずはパリ条約あたりから参りましょうか。
 パリ条約の起こりは相当にふるく、1883年に遡ります。当時、パリ万博というのを開催して、発明品等を展示させようとしたところ、新規性喪失、模倣盗用の虞ありとのことで、出品がされないのではないかという危惧があったそうです。そこで、その危惧をなくすため、博覧会出品物について仮の保護を与えることができないか---これがパリ条約の出発点です。この出発点となった規定がパリ条約11条です。

第11条 博覧会出品の仮保護
(1) 同盟国は,いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し,国内法令に従い,特許を受けることができる発明,実用新案,意匠及び商標に仮保護を与える。
(2) (1)の仮保護は,第4条に定める優先期間を延長するものではない。後に優先権が主張される場合には,各同盟国の主管庁は,その産品を博覧会に搬入した日から優先期間が開始するものとすることができる。
(3) 各同盟国は,当該産品が展示された事実及び搬入の日付を証明するために必要と認める証拠書類を要求することができる。

条約というのは基本的には国家間の約束ですので、多くの条約の規定は加盟国に条約に沿った国内法令の施行を求めます。この11条でもそうなっていますね。そのために、「同盟国は…約束する」といった規定が見られるわけです。なお、いずれみますが、パリ条約は面白いことに、自己執行的(Self Executive)といわれる規定がいくつもあります。この内容はまたの機会といたしまして…。

■パリ条約の3大原則
パリ条約は、その当初の条約から既に、内外人平等の原則を謳うとともに、特許について6月、その他については3月の優先期間を認めていたといいます。原則的な規定は当初から既にあったわけです。
あ、パリ条約の原則というのは、

(1)内国民待遇
(2)優先権
(3)特許独立の原則

という3つの柱からなるのです(わりと一般的な説かと思いますが、異なる説もあります)。
このうち内国民待遇というのがもっとも基本の原則であるわけで、これはある国が、その国民に対して与えているのと同等の利益を、他国民に対しても与えよう、というものです。
また優先権というのは内国民と他国民とでは言語障壁による不平等があり得るので、内国民待遇を手続的な意味で実効あらしめるために必要となる制度です。優先権は、パリ条約が認める基本的な利益です。保護対象によっては、この上に、さらなる保護が積み重ねられていくわけです。
さらに特許独立の原則というのは、ある国で拒絶されたのだから、こっちでも拒絶だ、というようなやり方を禁止することで、内国民待遇の原則を実体的な側面から実効あらしめる規定、ということになります。これらで内国民待遇を支えているわけですね。

■生きている改正前条約
ところで、パリ条約は、パリでの採択の後、ブラッセル、ワシントン、ヘーグ、ロンドン、リスボン、ストックホルムと各都市での会議によって改正を経ています。改正には全会一致という原則がありますので、同盟国があまりに多い現代では改正が現実的に不能になりつつあるようですが、会議だけは開催されていると聞きます。なお、この改正会議の都市の名の頭文字をとって、「ブワヘロリス」というように覚えたものです。ええ、どの条文が、どこの改正会議で導入されたかを書けるようにしておけ、と言われていたのです(いまでは当然、不要な知識でしょう)。

いや、それは、もう過去の話として…。

あ、それと少々意外に思われるかも知れませんが、パリ条約では、こうした従前の改正前条約がまだ生きています。廃止されていないのです。しかし、従前の条約への加盟は禁止されていますし、いまの同盟国はすべてストックホルム改正条約に加盟しています(ちょっと前まで、どっかの国がリスボン改正条約でしたが…)から、ムダといえばムダなのですが、各改正条約がまだ生きている、というのはちょっと面白いでしょう?

それでは次回は、各原則をさっと眺めてみることに致しましょう。

□パリ条約講話:語り口調が好き嫌いを分ける(?)

□PCT逐条解説:通称、Pチクとか呼ばれていますな

□特許関係条約:

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コメント

パリ条約講話を初めて読んだときには、こういう語り口調の本を読んだことがなかったので、「変だな~、読みにくいなあ~」なんて思ったものです。先生は、パリ条約の全文暗記なんてやりましたか?
ところで、「特許関係条約」は、その昔は「赤本」と呼ばれていたと聞きましたが、ホントでしょうか?

投稿: てるける | 2007年7月13日 (金) 16時44分

コメントありがとうございます。

わたしも後藤には当初挫折したクチですが、その後覚悟を決めて読みました。あれでもうすこし文体が文体ならもっと良いと思うのですが、こだわりなんでしょうか。

全文暗記、やりました。当時ふつうの勉強法だったと思いますが、A4くらいの紙半分に条文を貼り付けて、ポイントを後半分に書いて…というようなことをしまして、その紙束を読み返して覚えようとしました。個人的には6条の3が難所で、いまだにあれを表に整理した紙がたぶん、パリ条約講話と四法対照(当時の)に挟んであると思います。

橋本先生の本が赤本と呼ばれていたかは存じ上げません。赤本というと、吉藤が未だなかったころの特許法基本書(誰のだったかな?)の装丁が赤いハードカバーで、「赤本」と呼ばれていたようですが…。

投稿: ntakei | 2007年7月14日 (土) 04時17分

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