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2007年6月15日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(15)

司法試験の制度が変更され、ロースクールができてから、司法試験受験業界はかなり厳しくなった模様です。受験業界全体が縮小してきている気がします。それに伴ってか、弁理士講座を擁していた受験機関もなんだか淋しくなっている模様。例えばWセミナーなどは、事業譲渡されることになっているらしいです。これが業界縮小のためなのか、それとも戦略的なものなのかはワカラナイのですが。

▽ そのWセミナーで出している受験誌に、「PATENT NEWS」というのがあるのですが、その最新号は時期を狙ってか、「論点の最終チェック」と称して、リストにまとめられた論点集が掲載されていました。いまごろこんなものでチェックしているというのもどうかとは思いますが、気になる方は、ご覧になってはいかがですか。案外安価な雑誌なのです。

□弁理士 Patent News

■さて、商標法案内も、はや15回を数え、商標に関する基本的な項目はだいたい概観して参りました。あとは、団体商標・地域団体商標だとか、小売に関する問題だとか、改正がらみで少々補填しておく程度かなぁと思っています。マドプロに関しては純粋に手続法ですから、一度流して条文を読んでみるとだいたいの内容が理解できてしまうと思われます。

■団体商標
 念のため、確認を致しますが、我が国の民法では、権利義務の主体となり得る資格(権利能力)は自然人または法人にしか認めていません。このうち法人というのは、例えば営利法人、公益法人、特定非営利活動法人(NPO)、中間法人などいろいろなものがあります。
 一定の目的の下に結合した人の集団を「社団」と呼ぶわけですが、この社団が「社団法人」となるためには、法律によって法的人格を与えられなければなりません(民法33条)。例えば、民法34条に定める非営利法人などがそうです。

□民法第34条 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。

何が言いたいかというと、法人格を与えられない社団というのもあるということで、そういうのを「権利能力なき社団」というわけです(ご覧になったこと、ありますよね?)。

 さて、ここまで書いておいて、団体商標の規定を見ましょう。

□商標法第7条(1項) 民法第34条の規定により設立された社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)若しくは事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用をさせる商標について、団体商標の商標登録を受けることができる。

 通常の商標であれば、権利者が使用するのが前提であるのに対して、団体商標は権利者と使用者とが分離している点が特徴的です。本制度導入前の法律では、実質的に使用権設定で足りるというわけで規定がなかったのですが、法律の国際的調和の観点から、改めて明文化したということになっています。
 団体商標に係る商標権の主体は構成員を擁する団体であるわけですが、権利能力の観点から、法人格を備えた者に限定されています。
 また、団体構成員には、使用の権利が与えられますが、特に使用許諾契約をしなくても、使用権が認められるという構成になっています(商標法31条の2第1項)。ここで「当該法人の定めるところにより」のような文言がありますが、これは団体内部の規約等で、特定の基準に適合した商品にだけ使用を許諾するというようなことができるようにしているわけです。
 その他、団体商標については、その移転などが問題になります。基本的に24条の2第2項、第3項などに規定の場合を除いて移転ができるわけですが、24条の3第2項所定の手続をとって移転しないと、通常の商標権に変更されたものと擬制されてしまいます(24条の3第1項)。

■さて、この団体商標と比較しつつ地域団体商標についてみますと、

□商標法第7条の2 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)又はこれに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第3条の規定(同条第1項第1号又は第2号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。

とあり、まず主体としては法人格を備えるだけでなく、「当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る」とさらに制限を加えています。
 この制限は、地域団体商標というものの特質を表していると思うのですが、そもそも地域団体商標におけるマークは、地域名+商品(役務)名等の文字のみとなっています。ということは、普通ならば、その地域でその商品を販売等する人ならば誰でも使いたいものなわけです。そういう理由で、私人の独占に馴染まないとしていままで登録を拒絶してきたわけです。そこへ今回の地域団体商標制度では当該部分の権利の設定を認めてでも、地域ブランドの育成に資するために、かかるマークの登録を認めようというのですから、

「登録を認めるに当たっては、可能な限り、商標の使用を欲する事業者が当該商標を使用することができるようにすべき」

(http://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/h17_kaisei/03.pdfの第9ページより)ということになっているのです。
 また、いままでであれば、全国的に著名になってしまえば3条2項がありますから、登録ができていたということにも注目して下さい。ただ、そうなると他人の便乗使用による商標の毀損が怖れられていたということです(図形との組み合わせなどでも、図形を替えられちゃうと便乗使用が有効に阻止できないという点もあります)。今回は複数都道府県に及ぶほどの周知性で十分、などとしていて、より早い段階で登録を可能とするというのも一つの目的なわけです。
 そのほか、移転の自由がないことや専用使用権設定ができないことなどにも、団体商標との相違があります。
 あぁ、そうか。移転の自由ということですが、

□商標法24条の2第4項 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。

とあるのですが、「譲渡できない」といってるだけですから一般承継は可能ですよね。ちょっと一次試験的なポイントですが。

 地域団体商標についてもう一度確認しておきたいのであれば、上に挙げた、http://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/h17_kaisei/03.pdfの資料を一読されることをお勧めします。そんなに長くありませんし、ちょっと面白そうなことも書いてありますよ。例えば、同資料21ページの(補説3)「26条の適用について特別の規定を設けなかった理由」などは、具体的な事例をからめて問題をつくることができそうです(だからといって出題されるとは限りませんが)。

■試験直前であればこそ、目新しい「ポイント集」のようなものを漁って、本質的な部分を理解せずに「ポイント」を使ってしまうことがないように、なるべく一次資料といいますか、解説された文書に戻って確認して頂きたいのです。今回はどちらかというと、そういう原資料へ当たるためのご案内、ということに致しました。

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