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2007年6月20日 (水)

乱読日記[57]

「ビルはなぜ建っているか なぜ壊れるか」,望月重
---これから家を建てようという人にオススメ、かな?---

ここ数営業日は、ずーっと出張続きで出ずっぱりなもので、明細書の作成作業が進まない。たいへん気が重い。外国関係と中間処理期限との隙間にスポット的にできた日程をやりくりして面談を設定してしまっているせいもあるが、なんといっても、ここ数回の出張先がどれも往復4,5時間かかってしまうことが大きい。電車の中では、いくら特急の指定席に座っているからといっても、そこで明細書を書くわけにいかない。秘密情報だからだ。

▽ 今日も往復3時間ほどを特急の車中で過ごしたわけだが、今回は月末に行う発表用の資料作成という「仕事」があって、それに費やすことができた。その仕事に目処をつけたところで時計に目をやると、残り30分で目的地に着くところだった。そういえば本の残りがそんな時間で読める程度だなぁ、と思って、この本を読み切ってしまった。

■知人に建築学科卒の人間が多いので、例の事件があったとき既に、「構造設計」という単語には一応の聞き覚えがあった。ただし、それが建築の力学的構造を設計する仕事だとは知っていても、具体的に何をするかまではよく知らなかった。
 この本にはそれが書かれている。

■建造物の各構成要素---柱とか梁、土台…といったものに働く力にはどんなものがあるか、この本ではそんなところから話が始まり、木材、鉄筋コンクリートなどの構造材の性質とからめて、建造物に働いている力と、それを支える構造とを解説している。
 説明の内容はかなり微に入り、具体的な内容になっている。だが、時にアナロジーで説明し、簡便な図解を使っていたとしても、肝心の部分で結論を先行させるので、少々喰い足りない気分が否めない。例えば梁にかかる力を解説している項目では、互いに直交して交差する2つの梁を設けておき、その交差点に、2つの梁で張られる平面の法線方向へ力を加える例を出している。ここで、各梁の断面積を互いに異ならせると、各梁への力の分散比が変わる。しかしこの分散比がどういう変化をするかについては、詳しく述べられない。多少面倒な計算なんだろうが、もうちょっと突っ込んで知りたい読者のためには、参考文献などをもっと明示しても良いのではないか。だって、建築学科に憧れる高校生だって読むかも知れないのだ。
 そんなこんなで、この本の内容は、部分的に理解し難いことも多い

■ただ、一応構造設計のあらましを解説したうえで、その知識を用いて、日本各地にある有名建造物を構造から解説している章は秀逸である。この章で紹介されている建造物には、例えば出雲大社の庁の舎や、ポーラ五反田ビル、東京タワーなどがある。どの例でも、その巧みな構造設計を伺い知ることができる
 また、本書全般を通して、どういう構造にどういう力が加わると破壊に繋がりやすいのかなどの解説も豊富なので、一読すれば、とりあえずは建物の見方が変ることはまちがいない。これから家でも建てようという人がいれば、私は一読を勧めたい。必見、とはいわないが、少なくとも設計にウルサイ顧客になれる(良いことかどうかは知らない)。

■また、少々気になったことがある。
 我が国では高校物理で、一応の力学を教えるわけだけれども、その内容たるや、質点の力学に偏重している。質点があつまって剛体となったときの力学はあまり教えられないのが現状じゃないだろうか。従って、モーメントの計算とかそういったものに慣れていないのである。
 さらに、この国の物理教育は種として Mechanics の意味での力学は教えるのに、Dynamics の方の力学を教えないので、大学の過程で動力学の問題がでてくると苦労してしまう。端的な例は量子力学などで時間発展の考え方が出てくるが、実際のところ、古典力学においても動力学的な解析はあり得るのだし、それをやっといたほうが、いろいろ良いんじゃないかと思うのだが…。
 ともかく、建築学科志望の学生が、いまひとつ力学に弱いように書かれているのはちょっとばかし気になってしまった。

■ところで、この種の

「なぜXXはYYなのか」

というタイトルが最近の本に多いのはどういうわけなんだろう。よく売れるんだろうか。そうであれば、私も便乗して何か書いてみようかなぁ。

 「なぜ、この請求項は良くないのか」

ってのはどうだろう。いや、なんだか同業者から冷たい視線を浴びそうな気がする。

 「なぜ、あなたの発明は特許にならないのか」

ってのは? うーん、あんまりネタとしては面白くなさそうな…(新規性がないから、とか進歩性の考え方がこうだからとか、そんなことになっちゃうよなぁ…)。やっぱり知財系のネタは一般ウケしそうにないかなっ。

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