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2007年4月13日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(8)

小売が役務に含まれるようになりましたので(商標法2条2項)、その点に関連して、審査基準の3条1項柱書き部分の解説が大きく膨らみました。一次試験においてはある程度注意が必要でしょうねぇ。また、卸売業や、製造小売業について同様に扱うことができるかどうかについて、改正本に説明があるようです。このあたりも一次っぽいといえば言えるかも。

▽ 商標法案内では、特許法案内とは違って、やや判例、事例重視な書き方になっておりますが、それというのも試験に関係して重要な判決が、商標法関係には数多いからです。しかしながら、審判規定なども一応は取り挙げておきたい。そんなことで事例関係を今回で終わりにするべく、損害発生に関する事案について「小僧寿し」事件を見てみましょう。

■小僧寿し事件
 小僧寿しといいますと、昔住んでいた家の近くにあり、おみやげの寿司を売る店として記憶しておりました。小僧さんが手を前に組んで慇懃にしている図を思い出します。本件(平成6(オ)1102号事件)は、その「小僧寿し」が、「小僧」なる登録商標を有している商標権者から訴えられた、というものです。
 この事件については、「小僧」と「小僧寿し」とが類似するか否かという争点がクローズアップされることが多いのですが、最高裁が提供している判例要旨をみると、もっとほかの争点があることがわかります。引用してみましょう。

□裁判要旨
一 フランチャイズ契約により結合し全体として組織化された企業グループ(フランチャイズチェーン)の名称は、商標法二六条一項一号にいう自己の名称に当たる。
二 「小僧寿し」が著名なフランチャイズチェーンの略称として需要者の間で広く認識されている場合において、右フランチャイズチェーンにより使用されている「小僧寿し」、「KOZO ZUSHI」等の文字標章は、標章全体としてのみ称呼、観念を生じ、「小僧」又は「KOZO」の部分から出所の識別表示としての称呼、観念を生じないものであって、「小僧」なる登録商標と類似しない。
三 著名なフランチャイズチェーンによりその名称又は略称である「小僧寿しチェーン」又は「小僧寿し」と共に継続して使用されている「(図形標章は末尾添付)」等の図形標章は、「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」の称呼を生ずる余地があるとしても、「小僧」なる登録商標との間で商品の出所混同を生ずるおそれがなく、右登録商標と類似しない。
四 商標権者からの商標法三八条二項に基づく損害賠償請求に対して、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができる。

一般に大きく取り挙げられているのは、フランチャイズチェーンの名称も26条1項1号の「自己の名称」に相当するという点や、著名なチェーンの略称なので、称呼上類似するとしても具体的出所混同を生じないから登録商標と類似しないという点です。しかし、第4の争点、損害の発生がありえないとの抗弁という点について、今回スポットを当ててみたいと思います。

■損害賠償請求に対する抗弁
 商標法においても、特許法と同じような損害額推定規定がおかれています(38条)。このとき、種々の立証が困難であっても最低限使用料相当額を請求できるようにしている点(38条3項)も特許法等と同じです。

□38条3項
 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

 しかしこの事案での「小僧」なる登録商標、実は商標権者によって使用されていませんでした。そこで最高裁は、使用していないなど、登録商標に顧客吸引力がまったく認められず、侵害者の商品売り上げにまったく寄与していないときは、38条3項の規定を適用しないと判じているわけです。これは当時としては画期的な判例でした。しかも最高裁判例であったことなどから、ひろく紹介されるに至っております。ただ、上に書きましたように争点も多い事案ですので、個々の争点を整理しておきませんと、試験で応用することが難しくなります。
 今回スポットを当てた、
 使っていない → 登録商標に顧客吸引力がない → 侵害者の売り上げに寄与しない
というロジックは、例えば二次の問題で、相手方がまったく使っていない商標権に基づく権利行使をしてきたときに、損害賠償を逃れる抗弁を考えろ、といわれたときに使えるわけです。このように、判例に複数の争点があるときは、個々の争点にバラして応用が効くようにしておきたいものです。

■さて、これでだいたいの主要判例は尽くしたかな、と思っていたら、そうか。パーカー事件なんてのがありました。商標と特許との相違を知る上では役立つ判決の一つかなとは思います。ま、次回はなるべく審判の条文を眺めることにしたいと思います。

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