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2007年4月 5日 (木)

[弁理士試験]論文作成術(2)

少々時間が経過してしまったが、論文対策の2回目をやらねばならぬ。前回は問題文を分析して、列挙するべき項目を抽出するはなしだった。これは論文の書き方と言えるのかと思われた方も多いかも知れない。しかしながら受からない論文の殆どが、問題文に対して答えていない答案であることを思えば、書き方以前に必要な訓練であることには疑いがない。

▽ 今回はそこから一歩進んで答案構成法について考えてみる。

■論文答案の構成
 論文答案を作成するとき、先に簡単な下書きを作成しておくことがある。この下書きを作成する段階が「答案構成」である。答案構成の基本的な機能は、私見をいえば、第一に項目書き漏れの防止、第二に項目間のバランス配分の最適化である。まれに流れるような答案を作成する人もあるが、論文自体を熟読してもらえるわけでもない以上、必要にして十分な記載があれば足り、ストーリーだてをするまでもないことが多い。

 また、別の稀な例に、答案構成をまったくしないという方法もある。この種の方法を採る人たちは、いきなり答案用紙に向かって書き始めることができる人たちである。概略の構成を頭に置いて書いているわけだと思われるが、項目に遺漏がなく、バランスが適当であれば別に答案構成をする必要はないと思う。かくいう私からして、答案構成は一応書くものの、構成通りに論文を進めたことは一度もない。ただし、項目の遺漏を見出して論文に盛り込んだことは何度かある。

■事案分析の記述法
 定型的な問題であれば答案構成の方法は略かたまっていたのであるが、現在は事例問題が多く、答案構成を類型化することが難しい。項目だてとして、一応、

1.事案分析、
2.手続
  …

と進めるのが典型的かなとは思う。ただ事案が抽象的すぎて定型問題と変わらない程度であれば、分析を要しない場合もあり、そういう場合は定型問題型の答案を作成することになる。
 事案分析を書く場合、問題文をそのまま引き写すような仕方では意味がない。前回のように、平成18年の特許の問題を使って、例を挙げてみると、

 題意より、乙は、甲に対して権原なき第三者である。
 従って、仮に甲に補償金請求権や特許権が発生すれば、乙が甲の特許権に係る発明を実施すれば、それは甲の権利の侵害となる。そこで、甲の補償金請求権や特許権を早期に発生させる方法について、以下検討する。

 というのでは、問題文の内容を書き並べているだけのことで、事案分析として記載するだけの意味がほとんどない。事案分析というのは、解答の結論から遡って書くものなのだ。

 ここではつまり、

・補償金請求権の早期発生
・特許権の早期発生

 の2点を述べたいので、公開請求の要件として

・補償金請求権が未発生

 であることを、出願公開制度の規定を引いて確認しておく。出願審査請求がされたかどうかは問題文に書かれていないから、特許権については未発生であるか否か事案分析で厚く触れなくてもよさそうに思う。

 そこで事案分析としては、「出願後6月」という時点を指摘して甲の出願が未公開であることを指摘する。これは問題文に書かれていない事項であるから『気がついたよ』ということを採点者に知らせる意味でも有効であろう。

 特許出願から1年6月(国内優先権を伴う場合は先の出願から1年6月)が経過すると、当該特許出願が出願公開(64条)にかかり、補償金請求権が発生する(65条)。しかしながら、題意によると、甲の出願から6月が経過した現時点では、甲の出願はたとえ国内優先権を伴う出願であっても出願公開にかかっていない。従って、甲は特許庁に対して補償金請求権を早期に発生させる手続を採ることができる。
 また、特許出願人でない乙が業として実施していることから、甲は特許庁に対して特許権を早期に発生させる優先審査手続を採り得る(48条の6)。
 以下、補償金請求権と特許権とをそれぞれ早期に発生させるために甲が採り得る手続きについて述べる。

程度の書き方でどうだろうか。これでも少々厚めであると思うが。

■規定趣旨の記述
 こうした事案分析の内容に比べると、手続の要件事項の記載はラクである。
 この問題では、まず公開請求の手続が考えられるところだ。このとき、公開請求についての趣旨を書くべきか。
 この問題の記載項目は、

(1)(イ)において、
 a.補償金請求権の早期発生=公開請求
 ・要件(64の2)の充足 − 題意及び分析の通り
 ・手続(64の3) − 甲がすること
 ・警告(65)
 b.特許権の早期発生=審査請求
  +優先審査(48条の6)
  +早期審査
 (ロ)において、
 a.補償金請求権
 ・警告 − その後補正がされていないか
 b.特許権
 ・損害賠償請求 (短期消滅時効?)
 ・補償金請求権との関係
 c.共通
 ・有効性の確認など

というように、項目を並べるだけでも相当行に亘るのであるから、趣旨などは記載している余裕はない。むしろ、問題文は「手続」と「留意事項」とに絞って問うているのだから、そこへ集中するのが題意に沿った解答だろう。

 一方でこの問題が出願公開の請求に絞った問題であれば記載するべき場合もあるし、「公開請求の制度を設けた趣旨に触れて」のような問題文であれば、記載を落とすことはできない。

■なお
、この問題については、早期権利化の観点から、出願変更→実用新案権行使という流れもありえる(実用新案ならかなり早期に登録はされる)。この流れまで記述するとなると、実は手続を列挙するだけでイッパイイッパイな問題なのである。そしてこの場合は、特許権行使と補償金請求権行使との関係などは瑣末な事項として省略していくことになるだろう。書くべき項目の軽重を題意から図るというのも必要な能力の一つなのである。

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