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2007年4月27日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(10)

大型連休目前となりました。受験生の皆さまは一次試験勉強に余念のないことと思います。当方の予定ですが、暦通りになります。もっともこの時期に試験対策の記事が少なくなるのも考えものなので、その点に配慮して来週も試験関係記事を貼り付けるかも知れません。いまのところ未定なのですが。

▽ さて、前回は商標法の一部の審判について要件を列挙してきました。どうして要件を列挙するようなことをしたかと言いますと…

■要件事実を見つけだす
 例えば平成17年の弁理士試験2次の商標法の問題をご覧下さい。くどいようですが、試験問題は特許庁のウェブページからダウンロードできます。
 この問題を簡単に分析しますと(日にちの出てきている問題については念のため時系列に図化するのがオススメです)…

 Jan 01 …
     丙、甲の総代理店として「OCEANS」 on 「シャツ」を輸入販売
 Feb 01 ...
     乙、「オーシャン2」≒「OCEANS」 on 「シャツ」を出願
 Mar 01 …
    丙、「OCEANS」 on 「シャツ」を出願(甲許諾あり)
 Dec 01 …
    「OCEANS」は、甲の商品を表示するものとして国内周知
 Jun 02 …
    乙の「オーシャン2」≒「OCEANS」 on 「シャツ」が登録
 Jan 03 …
    乙、「OCEANS」 on 「シャツ」を丁から輸入販売
  丁:甲とのライセンス契約に違反して、真正品を乙へ卸している
 (なお、判断基準日は 03.Jul 05)

 さて、設問(1)は、丙が乙の商標権消滅のためにできる手続を問うものです。上の題意からして、4条1項19号を理由とする無効審判は見やすい話かと思います。しかしながら、こういうときに、無効審判を書いたことで安心し、他の要件を無視して、例えば除斥期間の適用がないことなどを滔々と書いたところで点数にはなりません。それは設問が、「どのような手続をとることができるか」と聞いているからで、取り得る手続を記載するのが前提だからです。

 他人の商標権を消滅させる手続としては、あとはかなり限られているわけですが、事実として記載されている文章から法律上の要件に合致する文言を拾い出すには、当然のことながら法律上に規定された要件を知らないと難しくなります。ここでいきなり法令集を開いて確認しているようでは覚束ないです。
 こうした要件に相当する事実の拾い出しのために、法律上の要件を十分に整理しておくことをお勧めしているわけです。これにプラス、要件に相当する事実に注目するためのコツを掴んでおくと、より素早く問われている規定が何かを発見できるかと思います。
 例えば商標の問題の場合、使われている商標と登録されている商標とが「社会通念上同一」の範囲にあるかどうかに注意する必要します。使用・不使用がそこで分かれるからです。本問の場合、「オーシャン2」と「OCEANS」とは(称呼上)似ているといっても、社会通念上同一とまではいえません。
 そこで題意に戻り、時系列を検討します。するとそもそも乙は商標「オーシャン2」については一度も使用していないことがわかります。どうやら不使用取消の要件にはまっているので、50条が使えそうな感じです。現時点が05年の7月ですから、これから遡ること3年前というと、02年の7月。要するに登録の翌月です。
 題意からして、使用しているかどうかがわからないというときには、一定の留保をつけて記載してもいいでしょう。

 「乙が、登録商標「オーシャン2」またはそれと社会通念上同一の商標を指定商品「シャツ」に使用していたことを、審判請求の登録前3年以内に、日本国内で使用していたことを立証しない限り…」

 というような感じです。ただ、こちらも書きすぎに注意した方がいいでしょう。それより、この出題では、使えるものは列挙して欲しい感じです。

 さらに他にあるかどうか。どうでしょうか。51条を見てみましょう。
■不正使用

□51条1項
商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

 こちらの要件には、商標権者であること、故意であること、などの要件が並んでいます。平成17年の事案には、これらの要件にからむ事実が含まれているでしょうか。含まれています。例えば、「乙は、丙による販売が好調であることを認識し、」丁から不正に輸入した商品の販売をしているとあります。商標権者である乙により、事情を知った上で行われている行為であり、出題者は、故意に混同が引き起こされていると言いたいのだとわかります。

 …いかがでしょうか。事例問題に対して、そこから要件に相当する事実を見出すためにも、各審判を請求が成立する要件に知悉している必要があることをお分かり頂けたでしょうか。

 今回は51条以下の要件に入りたかったのですが、大分長くなってしまったので、また次回に回しましょう。その代りに、といっては何ですが一次試験的な問題を一つ。

□正誤どちらでしょうか:
 専用使用権者が指定商品について、登録商標に類似する商標の使用をして、他人の業務に係る商品と混同を生じさせたときは、それが故意に行われたものであれば、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

 答えは「誤り」です。簡単ですね。こういう問題を間違えないでください。53条には「故意」の要件がありません。なぜでしょう。青本に答えが書いてあるかと思います。

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