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2007年4月20日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(9)

ぐっと遅くなってしまいました。

先日、事務所の翻訳を手伝ってくれている外注先の方と飲んだのです。彼は日英、一応両方できるのですが、ネイティブは英語なので、ちょっと慣れてくるとそっちが出ます。私も久々の英語で、ちょっと疲れました。未だに頭が多少英語モードです。こういうのはしょっちゅう使わないとダメですな。

▽ さて、使わないと失われるものには色々なものがありますが、商標権も失われます。今日はそんな、審判のはなし。

■いっぱいある審判
 特許での審判は、昔から比べますと、いろいろ整理されまして、4つだけです。しかし商標法には、補正却下などの手続が残っておりますし、商標らしい審判もあり、全部で8つとなっています。一覧してみましょう。

・特許にもあるもの/あったもの

  • 拒絶査定不服(44)
  • 補正却下不服(45)
  • 無効(46)

・商標独特なもの

  • 不使用取消(50)
  • 商標権者不正使用(51)
  • 移転不正使用(52−2)
  • 使用権者不正使用(53)
  • 代理人不正登録(53−2)

 名称は内容の見当がつきやすいように適当につけました。せっかく表にしましたので、一事不再理の規定の適用があるもの(特許法167条を準用しているもの)と、除斥の適用があるものとを挙げてみて下さい。前者は56条で読み替えて準用していますから、見つけやすいでしょうね。

□56条(一部)
 …第167条中「特許無効審判又は延長登録無効審判」とあり、並びに同法第145条第1項及び第169条第1項中「特許無効審判及び延長登録無効審判」とあるのは「商標法第46条第1項、第50条第1項、第 51条第1項、第52条の2第1項、第53条第1項又は第53条の2の審判」と…

■補正却下不服
 拒査不服については、あまりお話することはありません。拒絶査定を受けたときに不服があれば請求できます。
 補正却下についても補正却下決定がされたことについて不服があれば請求できるというものですが、一応念のため、これを商標(+意匠)に残した趣旨については整理しておきたいところです。
 これは2点あり、商標では補正が要旨変更である場合に却下されるわけですが、

  1. 要旨変更か否かの判断に解釈が入る余地が少ない→客観的判断が可能
  2. 争いがあったとしても審理に時間はかからない→迅速審査担保可能

ということです。

■無効
 次は無効審判。一事不再理の適用があり、一部は除斥期間(47条)まで設けられています。
 この規定はなかなか曲者です。まず無効理由。拒絶理由と比較してみますと、まず8条1項が無効理由に挙げられています。これは審査査定時には、4条1項11号に該当するので、拒絶の理由として8条1項は要らないのですね。青本ネタだったと思います。拒絶理由のうち、形式的過誤にかかる理由がないのは特許などと同じ。また後発的な無効理由の一種ですが、

 5.商標登録がされた後において、その登録商標が第4条第1項第1号から第3号まで、第5号、第7号又は第16号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。

というのがあります。ここでは「なっているとき」という語尾についての青本の語釈に注意が必要でしょう。すなわち該当する時期について、過去に該当するだけでなく審判請求時においても継続して該当することを求めたものだとされています。

 除斥の規定(47条)については、理由が限定的ですから要注意です。特に4条1項10号、17号は不正競争目的で登録を受けた場合には除斥期間規定の適用がありません。また、4条1項15号については、不正の目的で登録を受けた場合に除斥期間規定の適用がありません。

 このように目的を絞って除斥期間を認める例もありますので、よく整理しておきましょう。

 さて、さらに1次ネタが多いのは、次の「取消審判」以降です。
 不使用取消審判というのは、個別的に不使用商標の整理の機会を与えるという点で、一括整理を図ろうとする更新の制度に対するものとも言われます。もっとも最近では更新のほうでは使用チェックはしていませんから、不使用商標整理の最有力手段と言えるでしょう。

 この取消審判、趣旨としては、登録主義の弊害除去という趣旨になります。要は法目的からいって、法は商標に化体した信用を保護するものであるところ、使われていない商標には信用が化体することはないのであり、一方で第三者の商標選択の幅を狭めることとなる。そこで---というところでしょうか。
 要件としては、「継続して3年以上」ということで、使用期間が途中にありますと、そこでこの3年の期間はリセットされてしまいます。「日本国内」での使用が求められていますから、外国でだけ使っていてもダメです。商標権者自身が使っていなくても、使用権者が使っていればOK(審判請求が成立しない)です。指定商品や指定役務について使用していなければ取り消され得ます。類似商品・類似役務に使っていたというのではダメなんです。
 社会通念上同視されるマークが使われていればOKです。請求は指定商品・指定役務ごとにできますが、取下げは一括して行われないといけません。これは2項で、請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての使用を証明すれば取消を逃れられるということとの裏返しです。仮に一括取下げでないとなると、権利者がある指定商品、指定役務について使用を証明→それを取下げ→また他のを証明…となって被請求人の負担が激増するからです。
 なお、いわゆる「かけこみ使用」について手当てがあります(3項)。ただし書きが1次向きで、正当理由があることを被請求人が明らかにすると、「かけこみ使用」だとは判断されなくなります。この辺りの規定はよく要件を落とさずに読んでください。各規定がどんな経緯でできたかなども併せて解説している書籍も多いので、理解に役立ててください。

 さて、少々長くなりましたので、商標権者による不正使用以下については次週にでも。

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